銀行融資においてESG要因を考慮するケースが増えていることが、格付会社フィッチ・レーティングの最新レポートで明らかになった。同社の2019年第3四半期ESG調査に参加した182の金融機関による融資額の約半分が、ESGリスクによるスクリーニング対象となっていた。ESG要因の考慮が企業格付けに与える影響はまだ限定的だが、大気汚染規制や炭素コストの上昇に影響を受ける業態は、長期的には銀行融資を受けにくくなる可能性がある。
鉄鋼、化学、娯楽業界などにESGリスク
調査対象となった金融機関が融資審査時にESGを考慮する理由としては、金融機関自身の方針と当局による規制がいずれも27%ずつで最も多く、評判・訴訟リスク(23%)、ステークホルダーからの要請(13%)などが続いた。
気候変動への緩和策を取りつつ低炭素化を進める企業にとっては、“低炭素化移行ファイナンス”が最も銀行融資を得られるルートになりつつある。また、ESGリスクの高い企業、とりわけ国家プロジェクトは引き続き国有銀行や地方銀行から支援を受けるか、ESG要因をあまり考慮しない金融機関から融資を受けることになる。あるいは、ESGリスクの高い借り手は、資本市場から資金調達することにもなる可能性がある。
鉄鋼、化学、娯楽業界にESGリスク
ESGリスクによるスクリーニング対象となる可能性が最も高かったのは鉄鋼業界で、次いで化学・肥料業界だった。ゲーム・娯楽業界は、評判リスクにつながりかねない依存症や犯罪、マネーロンダリングといった社会的リスクを指摘された。多くの金融機関、とりわけ西欧の金融機関には一般炭坑や石炭火力発電への新規のプロジェクトファイナンスを禁じているほか、複数の欧州の金融機関は兵器産業への融資を拒否している。
本調査に参加した49カ国の金融機関を見ると、総資産1000憶ドル以上の大手、中堅金融機関のほうがESG要因を考慮する傾向があることが分かる。また、アフリカと中南米、西欧の金融機関のほうが、北米やアジア太平洋地域の金融機関よりも概して融資時にESG要因を考慮していた。
【参考記事】Fitch Ratings: ESG Has Growing Influence on Bank Lending to Corporates
木村 麻紀
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