フランスの電力大手エンジー(ティッカーシンボル:ENGI)は3日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビを拠点とする再生可能エネルギー関連企業マスダールと戦略的提携を締結した(*1)。約50億ドル(約5,650億円、1ドル=113円換算)を投じ、次世代エネルギーとして期待される「グリーン水素」関連プロジェクトを推進する。
両社は2030年までに、2ギガワット(GW)級の製造能力を誇る、グリーン水素を生成するための電解槽(電気分解を行う装置)を建設する計画だ。まずは既存設備を活用してUAEに供給し、その後サウジアラビアやバーレーンなどで構成される湾岸協力理事会(GCC)加盟国への輸出も目指しているという。エンジーのキャサリン・マグレガー最高経営責任者(CEO)は「再生可能エネルギー由来の水素はエネルギートランジション(#1)を実現するために必須のツールである」と述べた。
UAEは石油輸出国機構(OPEC)に加盟しており、石油やガスを大量に生産している。また、太陽光発電に不可欠な日射量も豊富であり、再生可能エネルギーを活用するうえで地の利を生かせる。足元では、脱石油依存による産業の多角化を進めており、特に「グリーン成長(#2)」に向けた取り組みを積極化している。たとえば2021年5月、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム・ソーラーパーク(2030年までに5GW規模の発電量となる予定の大規模な太陽光発電施設)では、太陽光発電の電力を活用したグリーン水素製造施設が、中東・北アフリカ地域で初めて工業的規模で稼働を始めた(*2)。なお、水から水素を生成する水電解槽で世界大手の独シーメンス・エナジー(ティッカーシンボル:ENR)が同プラントを受注している。
再生可能エネルギーからつくるグリーン水素は、製造工程で二酸化炭素(CO2)を発生しないことから、次世代のエネルギーとして高い注目を集めている。直近では、スペインの電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)が1日、スウェーデンの新興鉄鋼メーカーH2グリーンスチールと提携し、23億ユーロ(約2,950億円、1ユーロ=128円換算)を投じてグリーン水素製造施設を建設することに合意した。
大きな可能性を秘める水素関連ビジネスは盛り上がりをみせているが、少なくとも短期的には同市場の先行きに慎重な姿勢をみせるビジネスリーダーもいる。たとえば、イタリア電力大手エネル(ティッカーシンボル:ENEI)のフランチェスコ・スタレイスCEOは「現在、水素はニッチな市場であり、規格を策定・標準化し、産業が大きくなるとともに、価格面での競争力が求められており、そのようになるまでにおそらく10年はかかるだろう」とCNBCの取材で指摘している(*3)。
エンジーは欧州を代表する株価指数である「ユーロ・ストックス50」の構成銘柄だ。欧州がESG(環境・社会・ガバナンス)投資で世界をリードするなか、同社の脱炭素実現に向けた取り組みに期待される。
(#1)エネルギートランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#2)グリーン成長…自然資産と自然環境の恵みを受け続けながら、経済成長および開発を促進していくこと。
【参照記事】*1 エンジー「ENGIE and Masdar form US$5 billion strategic alliance to drive UAE’s green hydrogen economy」
【参照記事】*2 シーメンス・エナジー「Siemens Energy and partners inaugurate first industrial scale Green Hydrogen Project in the Middle East and North Africa」
【参照記事】*3 cnbc「Green hydrogen hub backed by $5 billion of investment planned for the UAE」
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