中国人民銀行(PBoC)はデジタル人民元の技術面の開発を終え、発行に向けて着実に歩を進めているようだ。しかし、まだ発行日は定められておらず法整備を含む運用枠組みの策定が残されており、さらに期間を要するという見方も出ている。3月24日付けで中国共産党の機関紙「人民日報」系列の英字紙Global Timesが伝えている。
関係筋がGlobal Timesに語ったところによれば、アリババグループのモバイル決済サービス「Alipay(アリペイ)」は1月21日から3月17日にかけてPBoCのデジタル人民元に関連した特許を5つ申請しており、取引記録やデジタルウォレット、発行、匿名取引のサポート、監視や違法アカウントの対処など様々な領域を網羅している。関係筋は「こうした特許から判断すれば、技術開発の第一段階は基本的に完了している」と述べた。この人物はまた、デジタル人民元の法整備、銀行・保険や規制枠組みの確立には開発自体よりもさらに長いプロセスが必要だと指摘している。そのため、デジタル人民元の正確なローンチ時期は掴めない。
デジタル金融顧問機関デジタル・ルネサンス財団の創設パートナーであるCao Yin(曹寅)氏は、PBoCがブロックチェーン技術と決済分野に精通している民間企業をパートナーとしたのは合理的な選択だと語った。PBoCは、アリババ、テンセント、ファーウェイ、招商銀行など、深センを拠点とする民間企業がデジタル人民元の開発に参加していると伝えられている。
コロナウイルスの感染拡大に影響を受けた金融危機に対処するため、各国の中央銀行はゼロ金利やマイナス金利政策を導入し始めている。財政政策に最も便利なツールとなるため、PBoCはデジタル人民元の発行を急ピッチで進めるというのがCao氏の見立てだ。
【参照記事】China’s central bank moves closer to issuing digital currency: insiders
高橋奈夕
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