ビットコインの匿名性の高さから、つい私たちはそれが違法な取引に濫用されていると思いがちだ。しかし違法な取引は従来の現金でも数多く行われている。仮想通貨だけが特別問題のある通貨なのだろうか。Cointelegraphの記事では、ビットコインが違法な取引に使われる割合は、違法取引の全体数から見ると非常に小さいと説明している。
同記事によると、University of Sydney Business Schoolが今年1月に発表した論文「セックス、ドラッグ、そしてビットコイン-どれほど多くの違法行為が仮想通貨でまかなわれているか」では、全てのビットコインユーザーの25%、そして全てのビットコイン取引の44%が違法行為と結びついていると算出されている。さらに、「全ユーザーが1年間に行う取引は約3,600万回、その総額は720億ドルあまりに及ぶ」となっている。
このデータをより詳しく見ていこう。まずBitcoin Market Journalの記事によると、ビットコインのユーザーは全世界で約2,000万人と推定されている。このうち25%、つまり500万人がビットコインで違法な品物を購入したことになる。そして年間の取引総額720億ドルのうち44%、つまり316億ドルあまりが違法取引と関係していることになる。
確かにこれはとても大きな数値だ。だが現金で行われる違法取引に比べれば、実は大した規模ではない。Cointelegraphの記事では、ダークウェブで取引される違法品は圧倒的に薬物が多いことから、上記の316億ドルを違法薬物の年間取引額としている。これを現金での取引額と比較するとどうだろうか。アメリカのシンクタンクRAND Corporationが発表した調査結果によると、2010年にはアメリカだけで1,000億ドルが違法薬物に使われている。
全世界で316億ドルのビットコインと、アメリカだけで1,000億ドルの現金。その市場規模の違いは明白だ。そもそもダークウェブで行われる違法薬物の取引自体、それほど規模が大きいわけではない。イギリスのシンクタンクGlobal Drug Surveyが発表した2017年の調査結果によると、国ごとに見たダークウェブを利用する薬物使用者の中央値は10.1%となっている。
シルクロード事件が有名になり、ダークウェブで用いられやすいビットコインにはダーティな印象がつきまとうようになった。しかしそれだけでビットコインそのものを罪とみなすのは強引ではないだろうか。今でも薬物使用者の大半は昔ながらの現金で薬物を入手している。だからといって現金を廃止しようとはならない。所詮はツールに過ぎないからだ。
【参照サイト】Crypto vs. Cash – How the Numbers Stack Up on Drugs, Guns, Murders
【参照サイト】Sex, Drugs, and Bitcoin: How Much Illegal Activity Is Financed Through Cryptocurrencies?
【参照サイト】How Many People Use Bitcoin? Updated for 2018
【参照サイト】What America’s Users Spend on Illegal Drugs
【参照サイト】Global Drug Survey (GDS) runs the worlds biggest drug survey
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木村つぐみ
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