米アップル(ティッカーシンボル:AAPL)が、モバイル決済サービス「アップルペイ」に追加する後払い機能「アップル・ペイ・レイター」の提供に向けて、融資や与信管理などを行う子会社を立ち上げることが明らかになった(*1)。フィンテック分野への攻勢を強めており、BNPL(#1)市場の競争激化は必至となりそうだ。
アップルは6日、年次開発者会議「WWDC」の基調講演で、スマートフォン向け基本ソフト「iOS 16」に後払い機能を追加すると発表した(*2)。今秋に同ソフトがリリースされたのちには、アップルペイに対応する店舗やオンラインストアであれば、決済した代金を4回に分け、6週間にわたり金利や手数料を負担せずに支払うことができるようになる。
アップルはマスターカード(MA)と提携し、BNPLのホワイトラベル「Instrallments」を提供するという。「アップルカード」の発行で手を組むゴールドマン・サックス(GS)は、融資に関する技術指導を行うほか、BINスポンサー(#2)を務める。ただし、アップルはBNPLサービスの提供に際し、自社で融資や与信を行う。
アップルによる事前審査は厳格なものでなく、融資上限は約10万ドルとする見込み。仮に融資の返済が滞ったとしても、信用情報機関に報告しないとのことだ。
アップル・ペイ・レイター向けの融資は、短期的にアップルの財務状況に大きな影響を及ぼさないとみられる。むしろ、強固なバランスシートを活用して金融サービスを拡充する可能性もある。2021年の売上高は3,785.5億ドル(約51兆5,000億円)だった。
近年、BLPL市場は急成長を遂げているが、アップルの参入により、スウェーデンのBNPLサービス大手クラーナや米アファーム(AFRM)、米ペイパル(PYPL)といったフィンテック企業との競争激化は必至となりそうだ。また、足元では世界各国で利上げが相次いでいる。BLPLは事業者が立て替え払いし、金利も負担するため、金利上昇は企業経営を圧迫しかねない。世界中で高いシェアを誇るiPhoneでBLPLサービスを容易に利用でき、財務基盤が強固なアップルの優位性が高まる可能性がある。
若年層を中心に借りすぎへの懸念から、BNPLを規制する機運も高まっていることにも注意したい。
(#1)BLPL…後払い決済。手数料なしに代金を分割できるサービス。
(#2)BINスポンサー…銀行識別番号であるBINをスポンサードする。
【参照記事】*1 CNBC「Apple will handle lending for its Pay Later service」
【参照記事】*1 アップル「Apple unveils new ways to share and communicate in iOS 16」

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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