欧州連合(EU)の金融監督当局である欧州証券市場監督局(ESMA)は5月31日、EU加盟国の金融監督当局に対し、サステナビリティを謳う投資ファンドの監督とグリーンウォッシュ(#1)への対応方針を示したブリーフィングを公表した(*1)。
同ブリーフィングは、各国規制当局(NCAs)がサステナビリティを特徴とするファンドを効果的に監督するために、統一した監督基準を設けてグリーンウォッシュへの対応を図ることに寄与するという。
また、ファンドのドキュメンテーションやマーケティング資料に関するガイダンス、ファンド名称にサステナビリティ関連の用語を使用する際の監督指針が示されている。くわえて、オルタナティブ投資ファンドマネージャー(AIFM)および譲渡可能証券の集団投資事業(UCITS)に携わるマネージャーによるサステナビリティ・リスク統合に対する監督ガイダンスが含まれる。
今回の発表はESMAが公表した「サステナブルファイナンスロードマップ」の各種アクションの実施に向けた一環だ。同ロードマップではESMAの優先課題として、グリーンウォッシュへの取り組みやESG(環境・社会・ガバナンス)市場リスクのモニタリング・評価・分析などを挙げている。
近年、ESG投資の拡大と相まって、世界各国の金融当局にとってはグリーンウォッシュへの対応を強化している。最近では、米証券取引委員会(SEC)がESGファンドの情報開示を適切に行うための規制案を公表した(*2)。
5月には米銀大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン、ティッカーシンボル:BK)の運用子会社に対し、ESG関連の情報開示が不十分だとして制裁金を科した。つづく6月には米ゴールドマン・サックス(GS)が運用するESGファンドを巡り調査を進めていることが報じられている(*3)。欧州では、ドイツ銀行(DBK)と傘下の資産運用大手DWSが、ESG投資を巡って当局より家宅捜索を受けたことが明らかになった(*4)。
ESMAは各国規制当局と緊密に連携し、サステナビリティを謳う投資ファンドのモニタリングに際して監督上のコンバージェンス(統一)を促進してグリーンウォッシュへの対応を進める。EUの金融機関を対象としたサステナビリティ関連の開示規則(SFDR)の細則にあたる規制技術基準(RTS)が23年1月1日より適用開始される予定となるなか、必要に応じてガイダンスを改訂する方針だ。
(#1)グリーンウォッシュ…アセットマネジメント業界においては、サステナビリティやESGに関して特に具体的な取り組みなどをしていないにも関わらず、自社が組成したファンドに「サステナビリティ」や「ESG」というキーワードを入れることで、あたかも環境に配慮したファンドであるかのように見せかけること。
【参照記事】*1 ESMA「ESMA provides supervisors with guidance on the integration of sustainability risks and disclosures in the area of asset management」
【関連記事】*2 米SEC、ESGファンド関連の新たな規制案公表。80%を資産クラスに配分しグリーンウォッシュ防止へ
【参照記事】*3 ロイター「U.S. SEC investigating Goldman Sachs over ESG funds」
【参照記事】*4 CNBC「German police raid Deutsche Bank’s DWS unit」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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