米証券取引委員会(SEC)は5月25日、ESG(環境・社会・ガバナンス)ファンドの情報開示を適切に行うための規制案を公表した(*1)。グリーンウォッシュ(#1)を防ぐ狙い。ESGの投資基準にくわえ、ポートフォリオに組み込んだ投資先企業の温室効果ガス(GHG)排出量の開示も求める方針だ。今後、パブリックコメント(外部からの意見募集)を実施したのちに最終規制をまとめる。
SECはESGファンドに対して統一した開示基準を設けることで、投資家保護を強化する。同案ではファンド名称規制(Name Rule)の見直しを図る。現状の規制下においては、ファンド名称を「国債」などの特定の資産クラスにフォーカスしたものにする場合、運用資金の80%をその資産クラスに振り向けなければならない。それを特定のテーマにフォーカスして投資するファンドのすべてに適用させる。ルールを改正することで、ファンド名称に「ESG」をつけた場合、運用資産の80%を自社が明確に定義したESG分野に投資しなければならなくなる。
投資先企業のESGに関連した議決権行使の状況や、E(環境)にフォーカスしたファンドに対しては温暖化ガス排出量の開示も求める。
ゲーリー・ゲンスラー委員長は、ESG投資戦略は広範なものであるが、同案により投資家は効率的に資金を配分できるようになると述べた(*1)。
近年、ESG投資が拡大している。世界のESGファンドへの投資金額は、2021年11月までに6,490億ドルと過去最高を記録(*2)。19年は2,850億ドル、20年は5,420億ドルと年々拡大しており、世界全体のファンドの約10%を占めている。
一方で、グリーンウォッシュによって投資家をあざむくファンドが散見されており、SECはその問題への対応を図っている。今年3月には、上場企業に気候変動リスクの開示を求める新ルール案を提案。5月には米銀大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン、ティッカーシンボル:BK)の運用子会社に対し、ESG関連の情報開示が不十分だとして制裁金を科した。同委員会がESG関連で大手金融機関を処分するのは初めてのことだという。
グリーンウォッシュを防ぐべく、世界各国で同様の動きが広がる可能性がある。
(#1)グリーンウォッシュ…アセットマネジメント業界においては、自社が組成したファンドに「サステナビリティ」や「ESG」というキーワードを入れることで、あたかも環境に配慮したファンドであるかのように見せかけること。
【参照記事】*1 米証券取引委員会「SEC.gov」
【参照記事】*2 CNBC「SEC unveils rules to prevent misleading claims by ESG funds」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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