今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の宮林悠成 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- Lens Protocolとは
- Lens Protocolの仕組み
2-1. Lenster
2-2. LensTube
2-3. Phaver
2-4. Buttrfly - まとめ
Lens Protocolとは
Lens Protocolは、DeFiレンディングプロトコルを開発しているAaveのチームが開発している分散型ソーシャルグラフのプロトコルだ。
ソーシャルグラフとは、SNSのアカウントなどで誰と誰が繋がっているかなどの関係を指す。既存のX(旧:Twitter)やInstagramなどのSNSアカウントのデータは、運営会社の管理するサーバーに保管されており、中央管理されています。そのため、アカウントが意図せずBanされてしまうと、これまでにアカウントで培ったソーシャルグラフにアクセスできなくなる。
このような中央的な管理から分散型の管理に移行し、ユーザーが自身のソーシャルグラフや、アカウントで培ったクレデンシャルを保有することができるのがLens Protocolである。
Lens Protocolの仕組み
ユーザーがLensのプロフィールを作成すると、Lens Protocol ProfilesがNFTとしてミントされる。なお2023年7月末日時点では、Lensのプロフィールは、一定の条件をクリアすか、招待コードで招待されるか、OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスの二次流通で購入するなどの方法で入手することが可能となっている。
このNFTには、Lens Protocol上のDappsでのアクティビティが保存される。例えばLensterの場合だと、投稿は分散型ストレージサービスのIPFSに保存され、誰かをフォローするとフォローNFTが付与される。これらのNFTはそれぞれ固有のトークンIDを持ち、ガバナンスの投票にも使用することが可能だ。
また、7月17日にはLens Protocol V2が発表され、Xなどと同様にユーザーがブロックする機能が追加された。ブロックされると、コメント、フォロー、引用コメント、「mirror」や「collect」といった機能を使用することができなくなる。そして今後の大きなアップデートとして、Lens Protocol Profilesが 一般的なNFTの標準規格であるERC-721からERC-6551にアップグレードされることが明かされている。これにより、Profile NFT自体にNFTなどを保管することが可能となり、一括で転送することが技術的に可能になることが期待される。つまり、アカウント自体をウォレットではなくProfile NFT単位で管理することになる。
下記ではLens Protocolを活用したアプリケーションを紹介していく。
Lenster
LensterはLens Protocol上で最も知名度のあるソーシャルメディアアプリ。LensterはXとほぼ同様の機能を持ち、個人を表現する情報はユーザー名(ユーザーが任意で選択可能)とウォレットアドレスのみである。つまり、生年月日やメールアドレスなどSNSアカウントを作成する際に一般的に必要な個人情報はいらずに、匿名でアカウントを作成することが可能だ。
さらに「Collect」と「Mirror」という独自の機能があり、Ccollectは投稿されているコンテンツをNFTとして集めて保存することが可能で、Mirrorはリツイート機能のようなものである。Clollectのユニークな点としては、Collectした投稿が収益を獲得した場合、Collectorsは収益を一部を受け取る。投稿自体はオンチェーン上に行われており、Collectがスマートコントラクトによって実行されているのである。これにより、分散化されたブロックチェーン上でソーシャルグラフを築き、将来的に収益化を目指すことも可能である。
また、 EthCCでLens ProtocolとSupermodularの新しい統合が発表され、試験的にQuadratic Lensterが開始された。Quadratic Lensteは、ニュースフィードにQuadratic Funding(QF)の仕組み(プロジェクトが受け取る資金は寄付された金額の平方根の総和の二乗に比例するという資金提供のメカニズム)が組み込まれた。QFについては、GreenPill Japanより公開されている解説記事に参照を推奨。
今回のQFラウンドは2023年7月17日から25日まで実施され、EthCCの週にLensterの全ユーザーが、自分が評価するクリエイターや団体に報酬を与えることに繋がった。GitcoinのAllo Protocol 2を活用することで、ユーザーは #ethcc に言及した投稿にチップを送ることができ、10,000ドルのマッチング・プールが利用可能であった。
LensTube
LenstubeはLens Protocol上に構築されたオープンソースの動画共有プラットフォームである。
動画共有サイトというと最大手YouTubeを思い浮かべるが、Youtubeでは実現していないWeb3の動画共有プラットフォームらしい機能が実装されていることを紹介する。その中でも、投稿ビデオのNFT化があげられる。投稿されたビデオはNFTとなり移転が可能となる。
また動画データも動画プラットフォーマー側のサーバーではなく分散型ストリーミングプロトコルであるLivepeerに保持される。これにより、ユーザビリティを高めつつも自己主権データの形を選択できるDapps及びツールとしてユーザー層を拡大している。
Phaver
PhaverはLens Protocol上で構築された「Share to earn」の分散型ソーシャルメディアアプリで、累計135,000件のインストール数を誇り、DAU35,000名を越え、14,000件以上のサードパーティNFTと接続されている。(2023年2月時点)
Phaverでは、コンテンツの作成だけでなく、他のユーザーの投稿をステークする機能があり、ステークした投稿が人気になり報酬を獲得すれば、報酬が還元される。これはLensterのCollectに似た機能であるが、Phaverでは誰でも毎日5ステークまでは無料で可能となっている。また提携しているNFTを保有したウォレットを紐づけることで、毎日ポイントを溜めることが可能になっており、ポイントが増えるとレベルを上げることができたり、プレミアムトピックに投稿することができ、より優れたソーシャルグラフを築くことに繋がる。なお、Lens Profileを持っていなくても、Paverアカウントを作成することができ、今後はデュアルトークンモデルを採用したトークンローンチを予定している。
Buttrfly
Buttrflyは、XやInstagramに似たソーシャルメディアアプリで、XのSpacesのようなボイスチャット機能を提供しているのが特徴である。
ボイスチャットの裏側としては、分散型ビデオ会議プラットフォーム「Huddle01」を統合し、DM機能はWeb3.0メッセージングプロトコル「XMTP」を統合しており、Web3ネイティブで分散化が裏側の仕組み自体にも分散化を追求している。また、参加可能人数は無制限であり、Lensのプロフィールを保有していなくても参加することが可能である。
まとめ
TwitterがXへと移行する混乱の中で、Meta社によるThreadsがローンチして話題になるなどSNSはホットスポットである。そして、Web分野だけでなく、もはや私たちの生活の一部となりつつある。今後SNSが私たちの生活にもっと溶け込むと仮定した場合、構築したソーシャルグラフやクレデンシャルは失われてはいけないはずだ。そのためにもLens Protocolのような分散型かつユーザー主権型のSNSの台頭が期待される。
【参照記事】【解説記事】初めてのQuadratic Funding
【参照記事】QuadraticLenster.xyz Launch Wrap-Up
【参照URL】@LensProtocol
【参照URL】@phaverapp
Fracton Ventures株式会社
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