今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の赤澤 直樹 氏(@akazawa_naoki)から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
NFTというワードが頻繁に登場するようになりました。この動きは日本やアメリカなどのように一つの国ではなく、世界中で同時多発的に生まれています。なぜこのように世界的なムーブメントとなりつつあるのでしょうか?
今回はNFTがグローバルなスケールで流行している理由を2つ紹介します。
1. 世界同時に進むNFTブーム
ブロックチェーンを利用したイノベーションは世界同時に進行しています。NFTも世界同時に事例がたくさん生まれており、代表的な事例をざっとあげるだけでも以下のような例があります。
アーティスト名 | 所属国 | NFT作品タイプ | 主要なNFT作品タイトル | NFT販売サイト |
Beeple | USA | 3D Art | The First 5000 DAYS | クリスティーズ |
3LAU | USA | NFT Album | Ultraviolet(Album) | Origin |
Grimes | Canada | Short Video | WarNymph Collection Vol 1 Open Editions By Grimes x Mac | Nifty Gateway |
Kings of Leon | USA | NFT Album | When You See Yourself(Album) | YellowHeart |
Stevi Aoki | USA | Short Video | hairy | Nifty Gateway |
Aphex Twin | UK | Short Video | /afx\/weirdcore\ |
Foundation |
せきぐちあいみ | Japan | VR Video Clip | Alternate dimension 幻想絢爛 | OpenSea |
Mike Shinoda | USA | Short Video | Happy Ending Debut | Zora |
表を見ると分かる通り、アメリカからカナダ、イギリス、日本と世界各国で同じような動きがあることが見て取れます。このような現象が起こっているのには、2つの理由があります。
- イーサリアムのような共通の基盤が使われている
- 標準化が進み、NFTが流通しやすくなっている
ここからはそれぞれの理由について見ていきましょう。
2. NFTブームの裏側にある2つの背景
2-1. イーサリアムのような共通の基盤が使われている
NFTはブロックチェーン上で発行され取引されるトークンの一種です。ブロックチェーンには、誰でも参加したり離脱したりできるパブリックチェーンと呼ばれるものと、決められた人々のみが使えるプライベートチェーンと呼ばれるものに大別されます。このいずれにしても、NFTを発行する人や取引する人が同じ基盤を利用するケースが多く、それが世界で同時に事例を生み出す基盤となっています。
現在使われているブロックチェーンにはいくつか選択肢があります。具体的には以下のようなブロックチェーンが挙げられます。もちろん、ここに挙げているもの以外にも利用できるブロックチェーンはたくさんあるのでその点はご留意ください。
- イーサリアム
- Polygon(Matic)
- xDai
- FLOW
それぞれのブロックチェーンには特徴があるため、どのブロックチェーンプラットフォームを利用するかは状況によって変わってきます。
歴史的にみて開発のためのツールや情報はイーサリアムが充実しているのですが、トークンを発行したり流通させるために必要な手数料は比較的高額になってしまう傾向があります。そのため、手数料を安く抑えられ、トークンの転送が高速といった特徴を持つLayer2(セカンドレイヤー)と呼ばれる技術が利用されるケースも増えています。上記ではPolygonやxDaiがそれにあたり、ユーザー体験の向上を目指してそちらを選ぶプレイヤーも増えています。
現在のNFTブームの火付け役となったNBA TopShotはFLOWと呼ばれるブロックチェーンが利用されています。これはDapperLabs社が開発したブロックチェーンで、自社のデジタルアセットの作成や流通に最適化した基盤を自分たち自身で保有しています。
このように、NFTの発行や流通が行われるのは同じブロックチェーン基盤を利用している者同士で行われることが多く、どの基盤を使うのかという点はケースバイケースでさまざまです。
2-2. 標準化が進み、NFTが流通しやすくなっている
ブロックチェーン領域では積極的な標準化が進められています。イーサリアムではEthereum Improvement Proposals(EIP)(※)と呼ばれ、標準が議論され整理されています。
※ 編集部注釈:イーサリアムの開発をより良い方向に進めるための改善提案。世界中の誰もがEIPを提出することができる。
標準化を進めることのメリットは、同じ規格で作ることで全く異なるアプリケーション同士でも同じ処理やトークンを同じレベルで利用できるようになることです。
もしトークンが別々の規格でそれぞれバラバラで作っていると、それぞれトークンを扱うためにいちいち対応しなくてはならず、とても大きなコストをかける必要がでてきます。その一方で、規格を揃えて標準化をしておくとその規格にだけ対応すればいいので低いコストでアプリケーションを跨いでも利用できるようになります。
NFTについてもこのような標準が整えられていて、代表的なものにはERC721やERC1155と呼ばれる規格として整備されています。世界的によく利用されている規格はERC721の方で、これまでにも数多くのNFTが作成され流通しています。さまざまなウォレットアプリやマーケットプレイスで同じようにNFTを扱えるのはこのような背景があるからです。
このような規格に準拠しつつ、オリジナルの機能を実装することでより高機能なNFTを発行することも可能です。例えば、2次流通や3次流通などでもクリエイター(創作者)に対してロイヤリティを還元する仕組みを搭載することも可能になります。
ただし、注意が必要な点として、実装する機能やその性質によっては、ERC721やERC1155をはじめとする規格を利用しているからといっても必ずしもNFTであるとは限らないことです。実際に流通させる際には、弁護士などの専門家に確認してもらうのがいいでしょう。
まとめ
現時点ではNFTといえば、イーサリアム上でERC721という規格を使って作成されているケースが多いですが、現在のNFTブームの火付け役となったNBA TopShotはFLOWと呼ばれるブロックチェーンが利用されているなど、さまざまなバリエーションが生まれています。利用するブロックチェーン基盤や規格間の競争も起こっています。
現在、異なるブロックチェーン間をNFTが行き来する技術も発展してきているので、より流動性が高まることも期待できます。このような流れも受けて、今後ともさらに世界同時進行形で発展が進んでいくと期待されています。
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