昨今ブームを見せていたNFTを活用したゲームが抱える課題

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の宮林悠成 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 課題①:過剰投機
  2. 課題②:高い参入障壁
  3. 課題③:セキュリティ(システム自体の頑強さ)
  4. まとめ

一昨年から昨年にかけてAxie InfinityやSTEPNなどのNFTを活用したゲームが盛り上がりを見せていました。しかし、当時のその盛り上がりは低下してしまっているのが現状です。実際に、Dune AnalyticsのデータによるとSTEPNの月間アクティブユーザー数は2022年5月に約70万人を記録し、過去最高を記録しましたが、5ヶ月後の同年10月には5万人にまで減少しています。

では、これらのゲームは盛り上がりはなぜ一過的なものとなってしまったのでしょうか?それにはこれらのゲームが含んでいる潜在的、顕在的な課題があったと考えられます。今回は、Axie InfinityやSTEPNようなNFTを活用したゲームが抱える課題として考えられる要素についていくつか述べていきます。

なお、Axie InfinityやSTEPNの詳細に関してはこちらも記事を参照ください。

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課題①:過剰投機

まず、NFTを活用したゲームへの過剰投機が課題として挙げられます。

過剰投機の背景としては、ゲームをプレイして稼ぐことができるということから、ゲームそれ自体に関心を持っている人々ではなくて、ゲームを通してより多くの資産を形成したり、稼いだりすることを目的とした人々が参入したことがあります。そして、この過剰投機によりゲーム内のエコノミクスを維持することができなくなってしまうことが問題であると考えます。このゲームに関心の低いユーザーによって過剰に投資行われることでゲーム内のNFTやトークンの価格のバランスが乱れ、ゲーム内のエコノミクスが安定しない状況に陥ります。

実際に、Axie Infintyは元々初期費用として3万円必要だったところがピーク時には初期費用として30万円がないとゲームを始めなければならないという状況でした。このような状況下では、初期のゲームを始める際のコストが高くなってしまうため、金銭的にゆとりのあるユーザーしかプレイすることができません。これにより、NFTを活用したゲームそのものを純粋に娯楽として楽しみたいと思っている人々が楽しむことが難しくなることが想像できます。

課題②:高い参入障壁

ゲームを始める際の参入障壁が高いということが三つ目の課題として考えられます。これには主に二つの側面があると考えます。

一つ目は、ゲームをプレイする際にダウンロードするだけではなくNFTを購入しなければならないという側面があります。これらのゲームを始めるにあたり数千ドル相当のNFTを購入することが必要な場合があり、これはゲームを即時に始めることができない障壁となっています。一方で、現在リリースされている一般的なゲームであれば、相対的に安価であり、ダウンロードしてすぐに遊ぶことができます。

より多くのユーザーが参入しやすくするためにも、この障壁を低減させなければなりません。実際にこれを解決するために、GuildFiやYield Guild Games(YGG)などのギルドはゲームの初期費用を支払うことができないユーザーを支援するような取り組みをしています。ユーザーが他のプレイヤーのキャラクターを借りてゲームをしたり、スキルを向上させたりすることができるため、絶大な人気を博しています。

二つ目は、通常のゲームと異なり、投機的な側面があり、ある程度の金融の知識を必要とする点です。まず、NFTを活用したゲームをプレイすることで金銭的な利益を得ることもあれば、損失を被ることもあります。一般的なゲームでは、ゲーム内でのみ利用できる通貨やアイテムが存在しますが、市場の原理に基づいて価格がつけられておらず、基本的にはゲームの外側では価値を持つことはありません。

しかし、ブロックチェーンベースのゲームではゲーム内の通貨やNFTベースのアイテムはマーケットにより価格が決定され、ゲームの外側でも価値を持つとみなされます。このような側面があるため、ただゲームをプレイするだけではなく、経済や金融の知識がある程度必要であることが参入障壁をあげていると言えるでしょう。

課題③:セキュリティ(システム自体の頑強さ)

引用:Axie Infinity

ブロックチェーンで構築されたゲームに特化した課題として、ブロックチェーンにおけるセキュリティという問題があります。Ethereumなどブロックチェーンを活用して構築されたゲームをプレイするには、高額なガス代をユーザーが負担しなければならないことから、より安価でスケーラブルなブロックチェーンでゲームを作るという流れが活発になりました。

その一例として、Ronin Networkがあります。Ronin Networkは、Axie Infinity専用のブロックチェーンであり、Ethereumよりも処理速度は速く安価に利用ができるブロックチェーンとして広く利用されました。しかし、これらの恩恵とは引き換えにセキュリティ面では懸念がありました。そして、実際に2022年3月にRonin NetworkとEthereumをつなぐRoninブリッジで約750億円規模のハッキング被害が発生し、兼ねてよりの懸念点が現実のものとなってしまいました。

また、Axie Infinityだけではなく、セキュリティとして堅固なブロックチェーンよりも、ユーザーフレンドリーな側面を優先して安価で処理速度の速いブロックチェーンを採用することがしばしば見受けられます。例えば、STEPNで用いられているブロックチェーンはSolanaであり、Solanaは処理能力が速く、安価で利用できることに重点をおいているブロックチェーンになります。ただ、2021年9月にブロックの生成が停止したということがあり、システムの頑強さに課題が残っていると言えるでしょう。

このように、ブロックチェーンは処理速度とセキュリティはトレードオフの関係にあり、ゲームをより快適に利用できるようにするためにセキュリティよりも処理速度を重要視することが多く、昨今大きな盛り上がりを見せたNFTを用いたゲームではその基盤となっているブロックチェーンのセキュリティに課題がありました。

この処理速度とセキュリティという相反する二つの特徴を両立するソリューションとして「ロールアップ」という技術が注目されています。ロールアップとは、メインのブロックチェーンのセキュリティを活用しながら、トランザクションの一部をオフチェーン(ブロックチェーン外)で処理することにより、よりセキュアでスケーラブルなブロックチェーンを実現するソリューションです。

2022年は、特にゼロ知識証明という技術を活用したzk-Rollupsに関する発表がよく散見された一年であり、2023年ではよりこのロールアップという技術がより発展し、さらに注目を集めることが期待できるかもしれません。ロールアップに関する詳細の内容はこちらの記事を参照してください。

レイヤー2(L2)上で広がるNFTの世界

まとめ

今回は一昨年から昨年にかけて大きな盛り上がりを見せていたNFTを活用したゲームが抱える課題についてまとめました。これらのゲームが持つ問題は今回述べたような課題を解決することが、広く長期的に愛されるゲームへとなる契機となるでしょう。そのためにNFTを活用した際の特有の課題だけではなく、既存のゲームとの差異やブロックチェーンを使ったからこそ可能になる要素に真摯に目を向けて続けることが不可欠でしょう。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。