ドローンで社会課題解決?活用事例や関連銘柄に投資できるファンドも紹介

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日本を含む世界中でドローン(小型無人機)を活用し、社会課題を解決するソリューションの提供や、日々の生活の利便性を高める取り組みが活発化しています。

今回はドローンの用途や市場を整理したうえで、世界の有力企業によるドローンを活用した社会課題の解決事例や関連銘柄が組み込まれたファンドなどを紹介します。

※本記事は2023年3月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ドローンとは?
    1-1.ドローンの歴史
    1-2.ドローンの用途
  2. ドローン市場
  3. 世界のプレーヤーによるドローン活用事例
  4. 関連銘柄が組み込まれているファンドは?
  5. まとめ

1.ドローンとは

まずはドローンの歴史や用途を見ていきましょう。

1-1.ドローンの歴史

ドローンが一般的になったのは、2013年12月に米アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)がドローンを活用した配送のデモンストレーション・ビデオを公表した時でした。

元々、ドローンは第二次世界大戦中に標的用無人航空機(ターゲット・ドローン)として開発されました。現在のような小型無人航空機がドローンとして認知されるようになったのは、2010年にフランスのパロット社が発売した「AR Drone」辺りからです。その後、中国のDJI社のドローンが空撮用小型無人航空機として世界中に普及しました。無人機の産業用途の始まりは、日本の農薬散布ヘリコプターです。

パロット社の「ANFI(アナフィ)Ai」は、4G/LTEに対応した産業用ドローンです。
アナフィ
※画像は「ANFI(アナフィ)Ai」より引用

1-2.ドローンの用途

現在では、軍事用から産業用、ホビー用までドローンの活用が進んでいます。技術進歩が大きく関係しており、GPS(全地球測位システム)を利用することで、無人機用の航空技術が確立しました。

また、電動無人機用の軽量なリチウムポリマーバッテリーが急速に普及し、WiFi技術を利用して遠隔操作も行えるようになりました。さらに、スマートフォンやタブレットを傾けることで容易に操縦ができることが、ホビー用として普及した一因となります。

ドローンは、空撮、測量、スマート農業、フードデリバリー・物流、中継基地、設備点検・警備など、社会課題の解決につながる利用が進められています。たとえば、離島や山間部への医薬品の配送や、災害時の情報収集・インフラ点検、気候変動対策としてのメタンの漏出監視などにドローンが活用できます。また、物流業界ではドライバー不足が深刻化するなか、ドローン配送による少人化に期待が高まっています。

日本でも2022年に有人地帯での目視外飛行(レベル4飛行)が解禁され、各業界プレーヤーによるドローン活用が活発化している状況です。ドローンは、様々な課題解決への貢献が期待されています。

2.ドローン市場

世界大手の調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、小型ドローン市場(軍用、商用)は2022年の38億ドルから2027年までに62億ドルに拡大する見込みです。年平均成長率は10.1%になります。

小型ドローン市場のプレーヤーとしては、DJI(中国)、パロット(仏)、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(イスラエル)、ロッキードマーチン(米)などです。

そして今回、数あるドローンメーカーのなかでも米ジップライン・インターナショナル(Zipline International、非上場)を紹介します。同社はケラー・リナウド氏が「人命に大きなインパクトを与えることに挑戦したい」との志しの下、2011年8月に創業しました。

物流網が未整備なアフリカ(ルワンダ、ガーナ)および米国で救援用救命ドローンを活用した重要医薬品、血液製剤、ワクチンを配送し、豊富な実績を誇ります。2016年にサービスを開始したルワンダは、山が多く、道路は整備されていないため、地域の病院まで車で往復6時間かかりました。

そこで、ドローンを活用することで、わずか6分で輸血用血液を届け、幼い女の子の命を救っています。またガーナでは、2022年3月までに100万回分の新型コロナワクチンをドローン配送しました。

このように、ルワンダの社会課題を解決するソリューションとしてドローンが活用されています。各国での取り組みは高く評価されており、2021年12月には米国国務長官より「Award for Corporate Excellence(ACE)」を授与されました。

ACEは1999年に立ちあげられた名誉ある賞で、一定の基準を満たした優れた企業を選出しています。ジップラインはヘルスセキュリティ部門で賞を受賞しました。米国ではウォルマート(ティッカーシンボル:WMT)と協働し、食料品や日用品、新型コロナの家庭用検査キットを宅配するパイロットプロジェクトを開始しています。

日本では豊田通商(銘柄コード:8015)と提携し、過疎地・離島における医薬品などのドローン物流を進めています。これにより、人手不足や物流、医療アクセスの格差といった社会課題の解決、および人々の生活向上に貢献することを目指しています。

ドローンの活用は環境面にもメリットがあり、自動車を用いた配送と比較して二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減できます。ジップラインの分析によると、ドローンを使った1ヵ月間の配送によるCO2排出量は、エンジンを使う普通乗用車より98%削減し、電気自動車(EV)と比較しても94%削減を期待できます。

ジップラインの企業価値は25億ドルです。CNBCが世界を変えるイノベーションを起こしている先進的かつ有望な株式非公開企業を選ぶ「Disruptor 50(ディスラプター50)」にも選出されました。

3.世界のプレーヤーによるドローン活用事例

ここからは海外有力企業によるドローン活用事例を見ていきましょう。

まずは世界最大の小売企業ウォルマートです。同社は既に一部の州でドローン配送サービスを提供しており、2022年5月には対象エリアを6州400万世帯に拡大すると発表しました。ジップライン、フライトレックス(Flytrex)のドローンを活用しています。

配送品はウォルマートが当初想定していた医薬品のような緊急を要するものではなく、ハンバーガーヘルパー(Hamburger Helper)、電池、ゴミ袋、合成洗剤、ウェルチ(Welch)のフルーツスナックといった、生活の利便性向上に資する商品の配送に利用されています。

興味のある方は、ウォルマート、ドローン宅配を400万世帯に拡大も参考にしてみてください。

ウォルマート
※画像はウォルマート「We’re Bringing the Convenience of Drone Delivery to 4 Million U.S. Households in Partnership with DroneUp」より引用

ウォルマートは、コンピューターやレジのバーコードなどの高度なテクノロジーを、他社に先駆けて導入してきた企業としても知られています。ドローン配送の注文は、ジップラインなどの提携先サイトを通じて行うものの、将来的にはウォルマートのウェブサイトとアプリに注文機能を追加する方針です。小売業界で世界一の規模を誇る同社が、生活の利便性向上に資するドローン配送を強化することによる経済社会に与えるインパクトは大きなものになると考えられます。

次に、ラストマイルサービスで競合するアマゾンです。同社は2022年11月、年内に独自開発したドローンを活用した宅配サービスを開始すると発表しました。今後10年以内に年間5億個の荷物をドローンで空輸する方針も示しています。

アマゾンのドローン宅配サービス「プライムエア」は、サブスクリプション型サービス「プライム」の会員であれば、追加負担なくサービスを利用できます。インフレ下において、アマゾンの米国の倉庫・配送部門で働く従業員の初任給は、役割や地域によって時給16ドル(約2,100円)~26ドル(約3,400円)になります。ドローンを活用してカスタマーエクスペリエンスが向上すると共に、労働環境の改善につながることに期待できるでしょう。

「再生可能エネルギー分野で世界トップ5」入りを目指す仏エネルギー大手トタルエナジーズ(TTEF)は、世界各国で操業する石油・ガス上流部門(#1)の事業で排出されるメタンの検知、定量化、削減に向けてドローンを活用します。メタンの温室効果は同じ量のCO2の25倍にも上ります。CO2に加えてメタンの排出を抑えることも、世界が2050年カーボンニュートラル達成を目指すうえで欠かせない取り組みになります。

(#1)上流部門…石油業界を原油の探鉱・開発・生産までにいたる開発段階。それ以降の精製・販売・輸送その他の段階は下流部門。

興味のある方は、仏トタルエナジーズ ドローンを活用したメタンの排出検知・定量化開始も参考にしてみてください。

通信業界もドローンの活用を積極化しています。たとえば、2021年2月には、スコットランドの国民保健サービス(NHS)病院から西スコットランドの辺境地まで新型コロナ検査キットなどを含む重要医薬品をドローン配送しました。

これは英国初の取り組みであり、英通信大手ボーダフォン(VOD)の4G対応ドローンが活用されました。ドローン配送によるコスト削減に加え、配送時間を36時間から15分ほどに大幅短縮しています。また同年5月には、高速・低遅延な5Gドローンを活用し、ドイツのデュセルドルフ大学病院内で医薬品をドローン配送する実証に成功しました。

ボーダフォンのドローン配送
※画像はボーダフォン5G「drones deliver baby nutrition solutions in successful hospital trial」より引用

ボーダフォンは11月、欧州とアフリカの農家が生産性とサステナビリティの向上を図り、ドローンを含むスマート農業技術の活用が求められているとの調査結果も公表しています。

再エネ関連事業を推進するスペイン電力大手イベルドローラ(IBE)は2021年8月、ドローンを活用した森林再生や播種を行うスタートアップ企業CO2 Revolution社の株式を取得しました。CO2 Revolution社と協働することで、これまでよりも最大100倍の速さで森林を再生すると共に、1日で最大10万個の郷土樹木の種子を播種することができるようになります。これにより、2030年までに2,000万本の植林を行うイベルドローラの「Tree Programme」を推進します。

農機世界大手ディア・アンド・カンパニー(DE)は2019年11月、ボロコプター(Volocopter)と提携し、ドローンを活用した農作物の状態(水不足や害虫など)に関するデータを取得する取り組みを始めました。集めたデータを基に、今後の作業や保護方法を検討することで、農業の効率化を図ります。

2023年1月5日に開幕したテクノロジー見本市「CES」において、世界の人口が2050年までに約100億人に増加するなか、農家も耕作可能な土地で生産性を60%から70%高める必要がある、とディアはスマート農業の必要性を訴えています。

その他にも、米グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)から独立した新興企業ウィングと豪小売コールズ(KSS)が、コールズ店舗から消費者宅までのドローン配送サービスで提携しました。

世界最大級の日用品メーカーである英ユニリーバ(ULVR)は、テラドローンヨーロッパと提携し、ユニリーバが販売する人気アイスクリーム「ベン&ジェリーズ」をドローンで自動配送する実証実験を行いました。ユニリーバは2017年にアイスクリームの配送サービス「Ice Cream Now」を開始し、既に世界的に事業を成長させています。

ユニリーバでは、ドローンを活用したアイスクリーム自動配送が実施されました。
アイスクリーム自動配送
※画像はテラドローン「Terra Drone Europe & Unilever collaborate to deliver ice cream in New York」より引用

4.関連銘柄が組み込まれているファンドは?

ここからは、今回これまでに紹介したドローンを活用して様々な取り組みを実践する企業が組み込まれた投資信託を見ていきます。

まず、イベルドローラが組み込まれたESG型ファンドとして、ピクテ・ジャパンの「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(愛称:エコディスカバリー)」が挙げられます。

「エコディスカバリー」は、「エネルギー効率化」、「省資源化」、「再エネ」といったテーマを基に世界の環境関連企業の株式に投資します。特定の国や通貨に集中せず分散投資を行い、原則、為替ヘッジを行いません。

3、5、10年間のトータルリターンは何れも、モーニングスターの同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を上回る運用成績を上げています。2009年11月の設定来では+259.83%のパフォーマンスです。

コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均並みとなります。エコディスカバリーには、その他に再エネで世界最大級の発電規模を誇る米ネクステラ・エナジー(NEE)、米テスラ(TSLA)、伊電力大手エネル(ENEL)などが組み込まれています。

同ファンドは、モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー 2021」のESG型部門で優秀ファンド賞に選定されました。販売会社はSBI証券、auカブコム証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などです。たとえば、SBI証券でエコディスカバリーを購入する場合、100円積立やNISAなどに対応しています。

また、ディアが組み込まれたESG型ファンドとしては、野村アセットマネジメントの「野村環境リーダーズ戦略ファンドBコース(為替ヘッジなし)」が挙げられます。「野村環境リーダーズ戦略ファンドBコース」は、「スマートビルディング」、「淡水化」、「スマート農業」といった環境問題の解決を牽引するテクノロジーやサービスを提供する企業に投資します。

設定から日が浅いため1年間のトータルリターンではあるものの、モーニングスターの同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を上回る運用成績を上げています。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均並みとなります。

同ファンドには、その他に米3次元(3D)設計ソフト大手オートデスク(ADSK)、米水道会社アメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)、オランドの半導体露光装置大手ASML(ASML)などが組み込まれています。

「野村環境リーダーズ戦略ファンドBコース(為替ヘッジなし)」も、モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー 2021」のESG型部門で優秀ファンド賞も獲得しています。販売会社は野村證券であり、「野村ではじめる!「ESG投資」応援キャンペーン」の対象銘柄です。同キャンペーンは、2025年12月30日までに対象銘柄を「投信積立」で購入した場合、毎月の購入金額合計50万円までの購入時手数料相当額をキャッシュバックするものです。

ディアはESG型投信の「アライアンス・バーンスタイン・グローバル・グロース・オポチュニティーズ(年2回決算型)愛称 GGO」にも組み入れられています。GGOは、環境や社会志向等の持続可能な成長が見込まれるサステナブル投資テーマに基づいてアクティブ運用を行います。

運用プロセスは、全世界の上場企業8,000以上の銘柄から、国連SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する銘柄群を特定し、2,500銘柄以上を調査対象ユニバースとします。そこから、個別銘柄の徹底調査により約400銘柄の組入候補銘柄群から、魅力的な銘柄として30~60銘柄でポートフォリオを構成します。

同ファンドには、その他に廃棄物処理最大手の米ウエイスト・マネジメント(WM)、医療診断機器大手の米ダナハー(DHR)、顔認証部品の米ルメンタム・ホールディングス(LITE)、デンマークに拠点を置く風力発電機大手のヴェスタス・ウィンド・システムズ(VWS)などが組入上位銘柄に挙げられます。

3、5、10年間のトータルリターンは何れも、モーニングスターの同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を上回る運用成績を上げています。1998年7月の当初設定来では+192%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より安い水準になります。

同ファンドも、モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー 2021」のESG型部門で優秀ファンド賞に選定されました。販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、三菱UFJ銀行などです。たとえば、楽天証券であれば、100円投資やNISAに対応しているほか、楽天キャッシュ決済の場合には0.5%ポイントが還元され、クレカ決済であれば1%ポイントが還元されます。

5.まとめ

世界中の有力企業が社会課題の解決や日々の生活の利便性向上に資するドローンの活用を積極化しており、ドローン自体の性能の向上も進められています。今後もドローンを活用した革新的なソリューションの提供を試みる企業の動向に注目してみてください。

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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