不動産会社が「Sharing DAO」による不動産購入サービスを提供開始!ブロックチェーン活用で変わる不動産投資

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ブロックチェーン技術は、その多様な活用例を通じてさまざまな業界に革新をもたらしています。不動産業界もその例外ではありません。国内外でブロックチェーン技術を用いた新たなサービスが次々と登場し、その動向が注目を集めています。今回は、フィリピンの不動産販売に焦点を当てたフィリピンホームズ株式会社が2023年7月に導入した、ブロックチェーン技術と「DAO(分散型自律組織)」を活用した不動産購入サービスについて詳しく解説します。

目次

  1. DAOを活用した不動産購入サービスとは
    1-1. フィリピンホームズとは
    1-2. Sharing DAOとは
  2. ブロックチェーンを使った不動産セキュリティトークン
    2-1. セキュリティトークンとは
    2-2. ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」とは
  3. 不動産セキュリティトークン(ST)とJ-REITの違い
  4. 不動産分野とブロックチェーンの関係
    4-1. 不動産分野でブロックチェーンが活用できるとされているポイント
  5. まとめ

①DAOを活用した不動産購入サービスとは

フィリピンにおける不動産販売に特化したフィリピンホームズ株式会社は、2023年7月にブロックチェーン技術を用いた不動産取引の新たな仕組みとして、「DAOを活用した不動産購入サービス」を提供します。

本サービスは、Web3・メタバース領域の事業展開において、ソリューションを提供するGCT JAPAN株式会社が提供する、プロジェクト運営サービス「SharingDAO」を活用しています。また5月10日~12日に東京ビッグサイトで開催される「第4回ブロックチェーンEXPO[春]」のGCT出展ブースにて本サービスの情報提供を行いました。

フィリピンホームズはこれまで培ってきた不動産に関するノウハウと、最新の技術を融合させ、顧客により良い不動産取引体験を提供していくとしています。

1-1.フィリピンホームズとは

フィリピンホームズ株式会社は、フィリピンの不動産市場に特化した企業です。多種多様な高品質な不動産物件を提供し、その中には高い利回りを期待できる賃貸物件や、自身のセカンドハウスとして利用できる住宅などが含まれています。つまり、フィリピンホームズは、顧客のさまざまなニーズに対応できる幅広い物件を持っています。

1-2.Sharing DAOとは

「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」は、「自律分散型組織」と訳されるブロックチェーンに基づく組織形態のひとつです。中央管理者を必要とせず、各メンバーが自律的に運営を行うこの形態は、インターネットを根源とした新しい組織形式を表しています。

ビットコインの開発エコシステムはDAOの一例とされますが、その運営はブロックチェーンに依存しない、オフチェーンでの提案・議論により新技術の導入などが検討されています。

最近では「スマートコントラクト」というプログラムと、トークンを用いたガバナンスを取り入れるDAOが増えています。トークンホルダーの投票により、組織のルールや目的が定められ、参加者全員が自主的に協力して組織運営に関与できます。

フィリピンホームズの新サービスでは、参加者がDAOに参加することで、不動産の購入決定を透明かつ効率的に進めることが可能になります。不動産の所有権は、LLP(有限責任事業組合)を通じて取得されます。これにより取引がスムーズかつ安全に行われ、海外不動産購入に伴う不透明性の懸念が解消されます。

②ブロックチェーンを使った不動産セキュリティトークン

不動産セキュリティトークンとは、特定の不動産に対する投資の持分(信託受益権などの、ファンドの運用成果を享受する権利)をデジタル化した新型の金融商品です。これらのトークンの証券情報や取引情報は、ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」を通じて管理されています。「ibet for Fin」の基盤としては、エンタープライズ向けの「クオーラム(Quorum)」が使用されています。

このような形でデジタル化された不動産証券は、小口化された不動産持分を基にした商品となります。これにより、個人投資家でも資金的に難しかった立地条件の良い大型不動産への投資が可能になりました。この投資は、それぞれの小口化された不動産証券に投資する形で実現します。

証券の発行、譲渡、償還など、権利の移転はブロックチェーン上で随時行われ、取引内容はすべて記録されます。これにより、不正行為はほぼ不可能となり、ユーザーは安心して投資を行うことができます。

2-1.セキュリティトークンとは

セキュリティトークンは、ブロックチェーンなどの電子的技術を用いてデジタル化され、発行される有価証券の一種です。これはデジタル証券とも呼ばれ、セキュリティトークンを利用した資金調達手法は「セキュリティトークンオファリング(STO)」と称されます。

2020年5月に施行された改正金融商品取引法では、「電子記録移転権利」という規定が新設され、金融機関での取り扱いが可能になりました。「有価証券」とは、株式、国債、社債、ファンド持分、不動産投資信託(REIT)など、財産的な価値を持つ権利の証書のことを指します。

デジタル証券とも呼ばれるこのセキュリティトークンは、通常の有価証券だけでなく、サービスの利用券や著作権なども証券化することが可能です。これにより、従来証券化されなかったような資産も、証券としての機能を持つトークンとして発行できる可能性が広がります。

2-2.ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」とは

「ibet for Fin」は、証券トークンの発行と取引に特化したブロックチェーンプラットフォームです。ブロックチェーンとは、管理者の不在下でもデータの改ざんが不可能な取引履歴を維持することができる新たな取引方法を提供する技術です。その革新的な特性から、ブロックチェーンは多様な分野への応用が期待されています。

一般的にはビットコインのようなブロックチェーンは、全ての取引内容が誰でも閲覧可能な公開形式で展開されます。しかし金融業界においては、オープンなブロックチェーンの運用は適切ではありません。有価証券の取り扱いにおけるガバナンスや金融システムの安全性を確保するため、証券トークン(セキュリティトークン)の取引には、金融庁の登録を受けた金融商品取引業者や登録金融機関だけが参加可能です。

そして、「ibet for Fin」は、異なる金融グループ間でも共有財産として使用することができるプラットフォームです。これにより、各社は自社で開発した仕組みをプラットフォームに自由に追加し、利用することが可能となります。

③不動産セキュリティトークン(ST)とJ-REITの違い

不動産セキュリティトークン(ST)とJ-REITの違いについて、簡潔に解説します。

STは「個別不動産小口証券」という位置付けで、一般の個人投資家でも手が出しやすい投資商品です。株式や債券といった既存の有価証券同様に、金融商品取引法の規制の下で適切に設計され、運用されています。STの特長は、その形態により、個人投資家でも幅広い商品へ、少ない投資額から参入できることです。これまで個人による大型不動産への投資が難しいとされてきましたが、例えばマンションや物流施設、旅館などの大型不動産に対するセキュリティトークンは、比較的少額での投資が可能となり、すでに多くが開発・発行されています。

一方、J-REITは、専門家によって運用・管理される多数の不動産への投資を小口化した金融商品で、個人でも手軽に投資できます。ただし、これらは取引所に上場されており、金融市場の動向に左右されやすいという特性があります。したがって、運用成果が必ずしも予想通りになるとは限りません。

STはその性質上、少額からでも特定の不動産への投資が可能であり、専門家による運用管理があるため、日本経済全体の影響は受けるかもしれませんが、比較的高い運用利回りを目指すことが可能です。

◇現物不動産、不動産セキュリティートークン(ST)、J-REITそれぞれの比較

投資形態 現物不動産投資 ST(証券) J-REIT(証券)
投資対象物件 単一・少数物件 単一・少数物件 複数物件
投資額 大口投資 小口投資 小口投資
運用管理者 投資家自身 専門家 専門家

④不動産分野とブロックチェーンの関係

不動産というのは、物件や土地ごとに異なる特性を持ち、高価な価格設定と低い流動性が特徴の資産です。その取引には伝統的な慣習に基づいた多くの書類作成や人間による手続きが必要とされてきました。

その結果、取引が完了するまでに時間がかかり、間違いが生じたり、詐欺が発生する可能性もあるのです。不動産の取引というのは、その取引金額が大きいため、仲介者への手数料も非常に大きなものとなります。さらに、不動産取引の手続きや規制は国や地域により異なり、その複雑さが増す一方です。

そこで、ブロックチェーン技術とスマートコントラクトが登場し、金融分野だけでなく不動産業界でも注目されるようになりました。不動産取引の最重要部分、すなわち、代金と所有権の交換がスマートコントラクトにより効率的に行われるようになりました。つまり、代金をスマートコントラクトにロックすることで、所有権の移転と代金の受け渡しがスムーズに進行します。

これにより、代金をエスクローエージェントに預けたり、決済時に全ての関係者が集まる必要がなくなります。それによって、取引の手間とコストが大幅に削減されると考えられています。

4-1.不動産分野でブロックチェーンが活用できるとされているポイント

ブロックチェーンが不動産業界で活用されるためのポイントは以下の3つです。

  • 改ざん不能で一元的な情報の記録: 登記や物件情報の登録に利用可能
  • スマートコントラクトによる取引の自動化: 取引における各種コストが低減
  • 不動産のトークン化: トークン化により不動産の流動性が向上

特に、不動産のトークン化はP2Pを活用した新たな不動産投資形態の創出に寄与します。ブロックチェーンを利用して不動産をトークン化すると、自由に細分化して小口投資が可能になるとともに、柔軟かつ安全に所有権の移転が可能になるため、不動産の流動性が向上します。

⑤まとめ

現状では、不動産業界でブロックチェーンが活用されている例はまだ一部です。しかし、徐々にブロックチェーンを活用したサービスが登場してきています。伝統的な不動産売買取引には多くの手続きが必要ですが、ブロックチェーンによってこれらの契約内容をプログラム化することで、取引が簡素化・高速化されることが期待されています。

また、新たな投資手法として不動産のトークン化が注目されています。一般的には大きな投資資金が必要となる不動産投資ですが、不動産をトークン化することで、少ない資金でも投資が可能となります。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。