今回は、リップル社の裁判の状況とリップル(XRP)の相場について、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- リップル(XRP)とは?
1-1. SWIFTの代替として期待されるリップル社のソリューション
1-2. リップル(XRP)の特徴
1-3. ビットコイン、イーサリアムに次ぐ第三の通貨 - リップル社の裁判の状況
2-1. 裁判の焦点
2-2. 裁判の経緯
2-3. 今後の裁判スケジュール - リップル(XRP)相場への影響
3-1. どのような影響がでるか
3-2. 相場を押し上げる要因 - まとめ
2020年12月23日、アメリカにおいて米証券取引委員会(SEC)が米リップル社が取り組むXRPの販売に関して、違法な未登録有価証券の販売に当たるとして提訴するという出来事がありました。今回は、リップル社に対する裁判の最新進捗と今後のリップル相場がどのような要因で動く可能性があるのかという点について解説していきます。
リップル(XRP)とは?
リップル(XRP)は暗号資産の中でもビットコイン、イーサリアムに並ぶメジャーな通貨として知られていますが、裁判の論点を理解し、今後のリップル相場を予想するためにも、ここでリップルの特徴について整理していきましょう。
SWIFTの代替として期待されるリップル社のソリューション
リップル(XRP)はリップル社が取り組む送金ネットワーク「RippleNet」に使用されるネイティブトークンです。同社が取り組む分散型台帳システムは、現在の国際送金に使用されているSWIFTで多大なコストと時間がかかっているという問題を解決できるソリューションとして注目を集めています。金融機関や国際送金サービス業者などがリップル社の「XRP Ledger」の導入をすることで、国際送金コストを格段に安く、しかも、早くできるようになるというメリットの一方、リップル社は必ずしもSWIFTと競合するとは限らないことも明言しています。
リップル社のソリューションは米国内外の200を超える金融機関や送金業者によって使われてきましたが、今回の提訴に伴って、一部の送金業者が距離を置く報道も見られています。
リップル(XRP)の特徴
国際送金での利用が考慮されていることもあり、リップル(XRP)の特徴としては他の仮想通貨よりも送金速度が速いことが特徴です。仮想通貨で最も知られるビットコインに比べても圧倒的な速さを誇り、その点が将来性を期待される理由にもなています。
リップル(XRP)が主要な仮想通貨であるビットコインやイーサリアムとの大きく違う点は、現在発行されているリップル(XRP)の大半をリップル社が保有していることにあります。この点こそがSECがリップル(XRP)を有価証券として主張する根拠となっています。
ビットコイン、イーサリアムに次ぐ第三の通貨
一時はリップル(XRP)の時価総額はビットコイン、イーサリアムに次ぐ第三の通貨でした。今回のSECによる提訴をきっかけに一時的には大きく値を下げたリップルですが、4月6日執筆時点でもその規模は世界第6位(CoinMarketCap時価総額ランキングより)となっています。
リップル社の裁判の状況
さて、このリップル社を相手に起こされた裁判ですが、何が焦点になっていて、どういう経緯をたどり、今後どんなことが予定されているのでしょうか?こうしたことを理解しておくことがリップル(XRP)の将来性を判断する上で非常に重要になります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
裁判の焦点
SECの主張は、リップル社は2013年から約7年間に渡って有価証券登録を行っていない仮想通貨リップル(XRP)を販売し、1,300億円を超える資金を調達したとの内容で、つまりはこの裁判における論点は「リップル(XRP)が有価證券に当たるか」ということになります。
訴状内容を簡単にまとめると、以下の内容となっています。
- リップル(XRP)の販売方法において投資家に対して重要な情報開示をしていない。
- リップル社と役員はリップル(XRP)の販売で720億円以上の利益を得ていた。
- リップル(XRP)の上場のために、2017〜2018年の間、10社以上の取引所に上場手数料を支払っていた。
- 創業者であるクリス・ラーセン氏と同氏の妻はリップル(XRP)の販売で約470億円の利益を手に入れた。
訴状に挙げられている項目で注目すべきは、最大約800億円分のリップル(XRP)を市場流通価格の15%〜30%安く購入できる契約を結んでいたというものです。リップル社は定期的に提携パートナーの情報について発信を行っていたものの、その点も論点としてあがっています。
SECはビットコインとイーサリアムに対して「十分な分散化」などを理由に有価証券に該当しない結論を出していますが、リップル(XRP)はリップル社によってコントロールされている点とその販売方法から有価証券に該当するとしています。
一方でリップル社側の主張は以下のようになります。
- XRPは、SECがビットコインとイーサリアムを認定したように、通貨であり、投資契約(有価証券)ではない。
- すでに、司法省と財務省を含む米主要政府省庁がXRPを通貨とみなしているため、XRPのトランザクションは連邦証券法の管轄外にある。今回、SECが管轄を超えて取り締まる初の事例ではなく、裁判所は以前、別の論争でもSEC側が不適切だと判断していた。
裁判の経緯
2020年12月23日のSECによる提訴以降、XRPの売買・トランザクションサービスを中止したりするサービスも出てきています。
今後の裁判スケジュール
今後の裁判関係のスケジュールに関しては、下記のようになっています。
期限 | 内容 |
2021年4月12日 | リップル社CEOと共同創設者が見解趣旨書を提出 |
2021年4月16日頃 | 双方が見解書を提出 |
2021年5月14日 | 証券取引委員会が二人の見解出生に反論する余地書を提出 |
2021年5月16日頃 | 異議申立期限 |
2021年6月1日頃 | 反論期間 |
2021年6月4日 | CEOと共同創設者がSECの反論に対する応答文書を提出 |
現時点でここまでがスケジュールとして決定していますが、これで収束するとは考えづらく、6月4日以降も似たようなやり取りが続くことも予想されます。
リップル(XRP)相場への影響
すでにこの裁判など何事もなかったように上昇相場となっているリップル(XRP)相場ですが、この裁判の行方がリップル相場にどのような影響を与えていくのでしょうか?
どのような影響がでるか
SECに提訴されてから向こう1ヶ月はリップル相場はこの裁判の行方に影響され、下落をしていましたが、3月下旬以降では暗号資産全体の過熱感に押し上げられ元の水準まで戻っています。
しかし、裁判が落ち着くまでは、やはりリップルの動向は不透明だと言わざるを得ません。今後、リップル(XRP)相場を予測する上で、どんな要因で価格が上がり、どんな要因で価格が下がるのかという点について解説します。
価格を押し上げる要因
リップル(XRP)の相場を押し上げる最大の要因は、SECによる提訴の取り下げや和解による罰金などが考えられるでしょう。こうした状況になればリップル社も大きな影響を受けず、今回の件は何事もなかったように扱われるでしょう。
また、SWIFTに変わる国際送金システムとしての地位を築きつつあるという点もリップル(XRP)の価格を押し上げる要因になります。今後どれだけの取引所がどれぐらいの速さで戻ってくるのか、どれだけ多くの流動性プロバイダーを巻き込みながら国際送金システムとして利用されていくのか、それらがリップル(XRP)相場を押し上げる重要な要素です。
リップル社はビル&メリンダ・ゲイツ財団との提携など、世界の名だたる企業とのパートナーシップを結ぶ企業としても知られています。さらに大きな影響力を持つ企業・機関がリップル社を支援する発表をするなどした場合には、相場の相当な後押しになるでしょう。
価格を押し下げる要因
反対に相場を押し下げる要因は何でしょうか?答えは簡単で、押し上げる要因の逆という回答になります。今回の裁判結果がリップル社にとって多も大なダメージを受けるような結果となった際には、かなりの暴落が予想されます。
その際には、リップル(XRP)を活用した国際送金システムを導入予定だった大企業などが、どう動くかという点もかなり重要な要素になります。これらの企業によるリップル社離れが加速するのであれば、リップル(XRP)相場も下落は免れないでしょう。
まとめ
一つの民間企業がトークン発行数量の大部分を保有するというリップル(XRP)ですが、リップル(XRP)が有価証券にあたるかどうかという判断は今後の暗号資産業界においても非常に重要な内容です。リップル(XRP)をトレードするしないに関わらず、今回の裁判は暗号資産業界の今後を占う上でも重要なものであるため、今後も注目していくべきものです。今回の解説記事が理解の一助になれば幸いです。
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中島 翔
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