今回は、テクニカル指標のオンバランスボリュームについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- オンバランスボリュームとは?
- オンバランスボリュームの基本的な考え方と捉え方
- オンバランスボリュームと他のオシレーターの違い
- オンバランスボリュームの逆行現象の重要性
- オンバランスボリュームと他のオシレーターの違い
暗号資産(仮想通貨)をトレードする上で、テクニカル分析はおさえておくと便利なツールです。暗号資産市場はFX(外国為替証拠金取引)とは異なり、商品(資産)の需給のみで相場が形成されているからです。
テクニカル分析を意識しているトレーダーは数多く存在しますが、実際にどの指標をどのように利用するか判断することは初心者にとって悩ましいものです。この記事では、インジケーターの一つである「オンバランスボリューム」ついて解説していきます。
①オンバランスボリュームとは?
オンバランスボリュームは、出来高の増減を視覚化してトレンドの堅調さを測るインジケーターです。オンバランスとは出来高を「差し引きをする」という意味で、2つのローソク足の終値の差を以下のようにグラフに反映します。
- 現在終値が前回終値より高い場合はOBVはプラス(買いの動き)
- 現在終値が前回終値より低い場合はOBVはマイナス(売りの動き)
そして終値の上昇超過分が加算され、終値の下落超過分が減算される形で、一筋のグラフが形成されます。それでは実際にオンバランスボリュームの見方を解説していきます。
②オンバランスボリュームの基本的な考え方と捉え方
下図はBTCUSDの日足チャートで、青線がオンバランスボリュームです。
オンバランスボリューム(OBV)は「出来高は価格に先行する」という考え方に基づいて見ることになります。OBVが上昇傾向のときは買い勢力が優位、OBVが下降傾向のときは売り勢力が優位と考え、トレンド転換を判断する指標とします。
レンジ相場はOBVに大きな動きは出ませんが、トレンドが発生する場面ではOBVが大きく変動することがあります。反対に、価格自体が大きく変動しているにもかかわらず、OBVが変化していない場合は、発生しかけたトレンドが「ダマシ」に終わる可能性を警戒する必要があります。
一言で言えば、オンバランスボリュームは「トレンドの方向感と、買い・売りの勢いを出来高で測るもの」と言えます。
③オンバランスボリュームの基本的な考え方と捉え方
オシレーター指標の代表例とも言われる「RSI」や「ストキャスティクス」は相場の強弱(買われ過ぎ・売られ過ぎ)を判断するためにパーセンテージを表示します。同じオシレーターでも、オンバランスボリューム(OBV)は出来高の変化を捉える指標なので、相場の強弱を図るパーセンテージはありません。
出来高が加算されるほどOBVは増加し、出来高が急激に減少した際にはOBVは0に向かって減少します。OBV横の数字は集計範囲での合計値を表しますが、値自体よりも「どれほど急激に値が変化しているか」がトレンド状況を捉える上で重要となります。
④オンバランスボリュームの逆行現象の重要性
特筆すべきことに、オンバランスボリューム(OBV)は「逆行現象」を示す場面があります。
逆行現象とは、価格が下落しているのに買い方の出来高が増加したり、価格が上昇しているのに売り方の出来高が増加している状況を指します。参考として下図のBTCUSDの4時間足チャートを使用して解説します。
黄色の○印を見ると、価格チャートは上昇傾向しているのに、オンバランスボリュームは横ばいとなっています。この状態は「価格の上昇トレンドは継続せず、下落トレンドに転換する」可能性を示唆しています。なぜ、その様な判断になるのか説明しましょう。
先ほどお伝えした様に、オンバランスボリュームが上昇傾向の時は買い勢力が強まると判断できます。しかし、今回は価格が上昇しているのにOBVは横ばい。価格上昇に十分な買い注文が伴っていない=買い勢力がさほど強くない、と見て「その後の上昇幅は限定的」と判断することができます。
反対に買い勢力が強い場合は、上昇トレンドが継続すると予測でき、同じ視点を持つトレーダーの買い注文を引き寄せます。
最初のように上昇が限定的と判断されれば、トレーダーは手控えることになります。逆行現象でのエントリーはリスクが高いものになるので注意しましょう。
⑤オンバランスボリュームと組み合わせて参照するテクニカル指標
最後に、オンバランスボリューム(OBV)と組み合わせて参照すべきオシレーターを紹介します。
OBVに限らず、オシレーターは単体で利用せずに他の指標と組み合わせて確認しましょう。単体では読み取れない新たな情報を組み合わせることで、情報の精度を高めようという考えです。
オンバランスボリュームはトレンドの強さを推測するために「出来高」にフォーカスしています。そこで、別の視点からトレンドや値動きの節目を探るテクニカル指標と組み合わせて見ましょう。代表的な3つの指標をご紹介します。
- DMI(ADX)
- MACD
- フィボナッチ
①DMI(ADX)
DMI(ADX)は1日の高値安値のみの比較で相場の強弱を見るトレンド分析手法です。
終値は考えずに当日の高値(または安値)が前日を更新しているかといった観点からトレンドの変化を見ます。
②MACD
MACDは2本の移動平均線を利用して短期・長期の値動きからトレンドの方向性を確認する分析手法です。2本の線が交差するポイントである「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」は代表的な投資機会となります。
③フィボナッチ
これはフィボナッチ数列によって導き出された黄金比率(1:1.618)を組み込んで、チャートの動きを予測する分析手法です。フィボナッチは多くの派生があるので詳細は割愛しますが、オンバランスボリュームと組み合わせることによって、押し目の位置が判断できるのでタイミングを測るために利用すると良いでしょう。
上記の3つ以外にもトレンド分析手法はたくさんあります。オンバランスボリュームは組み合わせて利用すると大きな力を発揮するテクニカル指標です。トレードのタイミングを考える上で何を組み合わせると良いか、自分なりに試行錯誤をしながら検証してみてください。
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中島 翔
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