ビットバンクがLightning Networkの実用化に向けて公開した「NLoop」とは?

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今回は、ビットバンクがリリースしたNloopについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. ライトニングネットワークとは?
    1-1.ライトニングネットワークの概要
    1-2.ライトニングネットワークの仕組み
    1-3.ライトニングネットワークの課題
  2. ビットバンク独自の開発アプリNloopとは?
    2-1.Nloopの概要
    2-2.bitbankがライトニングネットワークを検討
  3. まとめ

ビットバンク株式会社は2022年2月16日にライトニングネットワーク(Lightning Network)の実用化に向けて、独自開発アプリケーションである「NLoop」を公開しました。ライトニングネットワークはビットコインの送金環境を改善するレイヤー2ソリューションです。ビットバンクはNLoopによりライトニングネットワークを活用した入出金の実装について検討を進めていると言います。そこで今回は、ライトニングネットワークの開発アプリ「Nloop」についての概要や特徴を解説します。

①ライトニングネットワークとは?

まずは、ライトニングネットワークとは何かについて、その基本的な事項を解説します。

1-1. ライトニングネットワークの概要

ライトニングネットワーク(Lightning Network)とは、ビットコインのブロックチェーンが抱えるスケーラビリティ(拡張性)や処理速度、送金に係る手数料などの課題を解決するために考案された、レイヤー2ソリューションです。ブロックチェーンの外(オフチェーン)で取引を実行することで、送金速度の大幅な向上や少額決済に対応した安価な送金手数料を実現します。

ビットコイン・ブロックチェーンはブロック生成に10分かかり、トランザクションが増加すると手数料が高騰するといったスケーラビリティ問題を抱えています。ライトニングネットワークが普及することになれば、そうした問題が解決され、ビットコインの送金環境が改善し、マイクロペイメント(少額決済)も可能になります。

1-2. ライトニングネットワークの仕組み

①ペイメントチャネル

lightning-channel

「What is the Lightning Network」River Financial より引用

ライトニングネットワークでは、Lightningノード間でオフチェーン取引を行う「ペイメントチャネル」という仕組みが利用されています。ペイメントチャネル内の複数の取引はブロックチェーン上に記録されないため、その分送金時間と手数料を節約することができます。

ペイメントチャネルとは、オフチェーン取引をするために2者間で作る台帳のことです。この台帳は2者間でしか共有されず、送金ごとの内容はブロックチェーンへ書き込まれることはありません。 具体的には、当事者間で2-of-2マルチシグアドレスを作り、そのアドレスへビットコインをロック(預託)します。

このロックした金額内であれば、当事者間のビットコイン送受信を何度でも無料で行うことができ、10分のブロック承認を待たずして実行可能です。そして最終的な残高をブロックチェーンへ書き込むという仕組みです。

②マルチホップペイメント

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さらに、ライトニングネットワークは、複数のペイメントチャネルをネットワークのようにつなぐことで、直接チャネルを設けていないユーザー同士でも、それぞれのチャネルを経由して高速に取引を行うことが可能となっています。ペイメントチャネルでは2者間の送金でしたが、マルチホップペイメントは、すでに開設されているペイメントチャネルを経由することで、第三者へビットコインを送金可能にします。

しかし、チャネルを経由して送金をする場合に懸念されるのが、「中継者への信頼」です。第三者を経由して取引を行うのであれば、より高いセキュリティが求められます。

そこで、チャネル内部では「HTLC」という、タイムロックを使った条件分岐によりトラストレスな通信が機能します。タイムロックは条件が満たされて初めてトランザクションがブロードキャストされ、ビットコインを送ることができるようにするスクリプトです。HTLCで定めた期間だけペイメントチャネルは開いており、何回でも状態を更新することができます。

1-3. ライトニングネットワークの課題

ライトニングネットワークを普及させていく上で、流動性不足が課題となっています。前述したように、ライトニングネットワークで資金のやり取りをする時、ユーザーは最初にLightningノードに資金をデポジットし、取引相手とペイメントチャネルを開設する必要があります。ペイメントチャネルを開設した時にデポジットした額が、オフチェーンで決済を行うことが出来る上限となります。

現在のところ、ライトニングネットワークにロックされたビットコインの合計量は3,400BTC(約150億円)に留まっています。ストレスなくライトニングネットワークを利用するには、より多くのLightningノードが参加し、ビットコインをロックする必要があります。

②ビットバンク独自の開発アプリNloopとは?

次に、ビットバンク独自の開発アプリNloopとは何かについて、解説します。

2-1. Nloopの概要


NLoopとは、仮想通貨取引所ビットバンクが独自開発した、Lightningノードの流動性を管理するためのソフトウェアです。NLoopはSubmarine Swap(サブマリンスワップ)という技術を利用して、ペイメントチャネル の状態を管理します。ビットコインをスムーズにLNチャネルへオンチェーン転送することで、自動的にペイメントチャネルを補充できるようにします。

ビットバンクの開発者である宮本丈氏によると、同様のソリューションに「Lightning Loop」や「boltz-backend」があります。NLoopは既存のプロダクトの欠点を補い、より手数料の小さいライトコインに対応していること、オープンソースであること、監査が容易である、といった特徴があります。

宮本氏は、将来的に多くの暗号資産取引所が、ライトニングネットワークにペイメントチャネルの接続を担保する Lightning Service Provider (LSP) の役割を担うと予想しています。NLoopはLSPにとってペイメントチャネルを常に使用可能な状態に保つのに役立ちます。

2-2. bitbankがライトニングネットワークを検討

bitbank nloop
ビットバンクは、暗号資産取引所 bitbank において、ライトニングネットワークを活用した入出金の実装の検討を進めていると言います。

暗号資産取引所がライトニングネットワークを実装すると、ユーザーにとって、よりスムーズな入出金が可能になり、裁定取引(アービトラージ)の機会や少額決済など、様々なビットコインの送金需要に対応できるようになるでしょう。

③まとめ

ビットバンクは「ビットコインの技術で、世界中にあらゆる価値を流通させる」をミッションに、ビットコインの最先端技術に関する研究開発に積極的に取り組んでいます。Nloopのリリースも、ライトニングネットワークの普及を目標に研究開発を続けてきた賜物です。ライトニングネットワークは機能性が非常に高いシステムである一方で、ネットワーク参加者及び流動性容量の伸び悩みがネックとなり、サービス普及を妨げています。今後、Nloopが仮想通貨業界にどのような影響を与えるのか、そしてbitbankでライトニングネットワークの入出金が可能になるのか、引き続き注目していきましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12