証券会社を経て、仮想通貨(暗号資産)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
投資をする中で押さえておくべきことは数多くありますが、その中でも「リスクリワード」は大切です。仮想通貨FXにおいてもリスクリワードの考え方は重要になるため、これを理解してからトレーディングに臨めると理想的です。
トレーディングのような「投機」ではなく、「投資」をしたい方にとってもリスクリワードは重要です。コツコツとリターンを積み上げていきたいという方こそ、この考え方を押さえておく必要があります。
それでは「リスクリワードとは何か?」について、仮想通貨のチャート例を交えてご紹介したいと思います。
①リスクリワードとは?
まず、リスクリワードは「利益と損失の割合」のことを指しています。簡単に言えば「1度のトレードに関して、利益がどれくらい期待できるか、そして損失がどれくらい生じる可能性があるのか」を意味します。リスクリワードのバランスについて、よくFXや投資の世界では「リスクリワードレシオ」という言葉で説明されています。
筆者はこれまでの記事で、トレードで一番守るべきこととして「リスク管理の徹底」を伝えてきました。リスクリワードは「リスク管理を徹底」する上で重要な要素の一つです。
リスクリワードレシオの設定が上手くできない限り、仮想通貨FXや株、外国為替のFX等トレード等全ての投資商品において、安定して勝ち続けることは難しいとさえ言えます。筆者自身も仮想通貨FXでのトレードでエントリーする前には必ずこのリスクリワードを設定して行うことにしています。
みなさんは、トレーディングの本などで「1勝9敗でも利益が出るようにしましょう」という言葉を聞かれたことはないでしょうか?
流石に9敗は少し無理があると感じますが、たしかに1勝3敗や1勝2敗くらいでも利益が残るようなトレードを行う必要があります。リスクリワードのレンジは人によって、また商品によっても異なります。自分のトレードに合わせて設定しましょう。
②リスクリワードの心理的な難しさ
「負けが多くても、1度の勝ちで利益を大きく出せばいいだけの話ではないか?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、リスク管理を困難にする背景には「負けたくない」という人間の心理があります。
例えば1度のトレードで1万円の損失を出した投資家が、次のトレードで「3万円の利益が期待できる」と見積もっているとします。エントリーした後、含み益が1万円出る状態となったとすると、この投資家はどう感じるでしょうか。
ここから下げた場合、前回負けた1万円すら取り返せなくなります。しかし、ここで利益確定すればとりあえず1万円を取り返すことができます。この場合、トータルで見ると「1勝1敗」で損益は0になり、投資家は安心して次のトレードに臨めそうです。多くの人はこのように考えがちです。
このトレードは一見問題ないようにも見えますが、このようなトレードを続けているとトータルでは損失を被ることになるでしょう。実際、このトレードには問題点が2つあります。
- リスクリワードを無視して、感情に支配されたこと(心理的な不安に負けて、損失を取り戻すことを優先した)
- 最初のエントリー時に定めたルールを破り、途中で利益確定したこと
この2点です。
まず①について、心理的な不安に負けてしまうことは、人間であれば珍しいことではありません。特に金額が大きくなれば大きくなるほど不安が大きくなります。損失を怖がる心理を常に冷静に分析して対処するのは、ベテランの機関投資家でも困難な作業です。
しかし、自分自身に負け続ける限り、どこかで損失を被り続けるでしょう。
次に②の「最初のエントリー時に定めたルールを破り、途中で利益確定したこと」も負ける投資家が陥りがちな典型的な行動パターンです。投資家はルールを守り、感情を排除してトレードすることが大切です。
先ほどの例で、利益確定した後に相場が下落したら「判断は合っていた」と感じるかもしれません。しかし、それは勘違いです。もちろん、そのようなトレードで的中し続ける天才トレーダーもいるかもしれません。しかし、ほとんどの投資家にとって、価格動向を当て続けることは不可能と言えます。感情に支配されて、途中でトレードを手仕舞いするのは絶対にやめましょう。
天才的なトレーディングに頼らずとも、損小利大のトレードを積み重ねる上で役立つのが「リスクリワード」の考え方です。
③リスクリワードを実際のチャートで理解する
それでは次に、リスクリワードの考え方を実際のビットコインのチャートに基づいて説明していきたいと思います。
上図はBTCJPYの日足チャートです。2つの赤の○印は、ゴールデンクロスの位置とレジスタンスラインを突破した位置を示しています。
「25日移動平均線が50日移動平均線をゴールデンクロスし、レジスタンスラインを突破したため」、2つ目の赤の○印(797,477円)でロング(買い)でエントリーしたとします(※理解しやすいように単純な戦略で説明しています)。
ここで1つ目のシナリオです。レジスタンスラインを再度下抜けした場合を想定して、損切りラインを780,000円に設定するとしましょう。このトレードのリスクは以下のようになります。
この時、利益確定ポイントはどのように定めるべきでしょう。
仮に「1勝2敗でも利益が出るトレード」をする場合、上図の「利益確定候補ライン(860,000円付近)」が一つの目処となります。この位置は、リスク(損失)である20,000円の3倍のリターン(利益)を得られるポイントです。
つまり上図の例は「20,000円の損失のリスクを取って、60,000円の利益をだすためのトレード」となっています。この時のリスクリワードレシオは「1:3」であり、「リスクリワードの良いトレード」になっています。
仮想通貨FXの場合に特に注意が必要なことは、損切りラインをあまりにも近い位置に設定すると、ちょっとしたブレで損切りラインに到達してしまう可能性があることです。損切りの幅の設定はとても重要になります。
2つ目のシナリオは「損切りラインを25日移動平均線の下に設定した場合」とします。
エントリーポイントは先ほどのシナリオと同じ位置です。今度は25日移動平均線を下抜けした場合を想定して、損切りラインを750,000円に設定するとしましょう。このトレードのリスクは以下のようになります。
この時、先ほどと同様にリスクリワードレシオ「1:3」で考えると、利益確定ポイントは「利益確定候補ライン」の950,000円辺りとなります。この場合のリターン(利益)は150,000円です。つまり、1勝3敗でも利益が5万円出るシナリオになっています。
これがリスクリワードの考え方です。安定して利益を上げている投資家の多くは、このようなルールを自分で設定して実行しています。
④リスクリワードは慎重なトレードの積み重ねで身につける
ここまでの説明で「リスクリワードの設定は、単なる勝ち負けの比率を当てはめれば良いだけで簡単ではないか?」と感じた方も多いと思います。
今回は理解しやすいように簡単なシナリオをご説明しました。しかし、実際のトレードの場面では、損切りラインやターゲットの前にサポートやレジスタンスがあったりと、リスクリワードレシオが良くない場面が多々あります。あるいは、損切りラインが遠くなり過ぎてしまい、ターゲットまでの距離も相当離れてしまうケースも発生します。
そのため、まずはシンプルな戦略で、リスクリワードの仕組みを身に着けることが大切です。経験が一番の学びであり、実践を通して必死で考えることがトレーディングスキルを培う上で最良の方法と言えます。
勝っても負けてもフィードバックは欠かさず行う必要があります。一つ一つのトレードでフィードバックすることは面倒に感じるかもしれませんが、そうした積み重ねがとても大事です。
特に仮想通貨FXはリスク管理がとても難しい商品です。この商品で、リスクリワードを含めたリスク管理ができるようになれば、他の商品でも難なくこなせることでしょう。
値動きの幅が大きい商品はリスク管理が非常に困難です。仮想通貨FXはリスク管理を学ぶ上で難易度が高いことを認識しておいてください。その上で必死で勉強しましょう。リスクリワードも含めて一つ一つのトレーディングを検証しながら、技術を磨くようにしましょう。
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中島 翔
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