【仮想通貨取引所の元トレーダーが解説】インドに見る仮想通貨規制の見通し

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今回は、インドの仮想通貨規制の見通しについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 仮想通貨の規制とは
  2. インドに見る仮想通貨の規制
  3. 違憲とされたインド準備銀行の2018年の処置
  4. 今後予想される展開
  5. 各国の仮想通貨規制の現状
  6. まとめ

2021年3月に、インドで仮想通貨を全面的に禁止する法律が提案される可能性があると報じられました。内容は仮想通貨の取引だけではなく、同国で保有することも禁じるという厳しいもので、相場にも一時影響を及ぼしました。しかし、その後すぐに財務大臣がその報道を否定し、騒動は落ち着いています。

インドで仮想通貨の規制に関する動きは過去にも度々見られ、仮想通貨取引のファンダメンタルズとして注視されています。そこで今回は、インドの事例を中心に仮想通貨規制の可能性について解説します。

①仮想通貨の規制とは

仮想通貨の規制は、その国の仮想通貨業界にダイレクトに影響を与えるのみならず国際的に波及することが多々あります。当然、仮想通貨の保有者の多い国などで禁止措置が出れば市場はネガティブに反応します。

ただし、仮想通貨の規制と言ってもその内容は様々なので、都度内容を理解する必要があります。代表的な規制対象としては以下のような項目が挙げられます。

  • ICOなどの資金集めに関する規制
  • 販売所や取引所などに関する規制
  • マイニングに関する制限や規制
  • 保有そのものに対する規制
  • 仮想通貨を使用した決済に関する規制

これらの規制は国や州などの単位で規定されています。

②インドに見る仮想通貨の規制

今回のインドの仮想通貨規制は仮想通貨を保有することさえも禁止すると言う、厳しいものでした。とうして、2021年3月14日付にロイター通信は、匿名のインド政府高官のコメントに基づいて以下のように報じました。

「法案は、暗号資産の保有、発行、マイニング(採掘)、取引、送金を犯罪行為と見なす内容。暗号資産の保有者には6か月以内に売却する義務が生じ、従わなければ罰則が科せられる。法案が成立すれば、インドは主要経済国として初めて暗号資産の保有を禁止することになる」

これを受けて、すぐに財務大臣がその報道を否定しましたが、全く根拠のない情報ではないように感じます。その後、5月に入りインド政府が仮想通貨の規制を検討するために新たな委員会を設置し、それらをデジタル資産として監督する可能性があると禁止から規制へとトーンが変化しています。

③違憲とされたインド準備銀行の2018年の処置

インドでは、2018年に仮想通貨を規制する政策が執行されましたが、インド最高裁判所によって違憲判決が出された背景があります。

これは、インドの中央銀行であるインド準備銀行(RBI)が2018年、インドの銀行と金融機関に仮想通貨に関わる一切のサービスを禁止する通達を出した事に対して下した違憲判決で、仮想通貨取引所やスタートアップ、産業界の訴えをインド最高裁が認めたかたちです。

この判決を受けて、仮想通貨取引所バイナンス傘下のインドの取引所WazirXでは、判決後24時間で取引量が約75万ドルから533万ドルまで増加、別の大手取引所Zebpayでも24時間で取引高が2倍以上になっています。

④今後予想される展開

6月10日にThe New Indian Expressは、仮想通貨に対する全面禁止措置のような「敵対的な姿勢から脱却」し、近いうちにビットコイン(BTC)を資産クラスの一つとして分類する可能性が高いと報じています。現在のところ、インド政府内でも仮想通貨容認派と否定派に分かれている様で、今後の決着に関しては不透明と言わざるを得ません。

インドでは推定1,000万人の投資家が1,500億円規模の仮想通貨を保有していると言われています。また、インドはIT技術者を中心としてブロックチェーン技術に関わっている人々も多く、仮想通貨の規制は政府が考えるほど簡単にはいかないように思えます。

⑤各国の仮想通貨規制の現状

インド以外で注目すべき国の仮想通貨規制の現状について解説します。

日本の場合は2017年4月に「資金決済に関する法律」(以下、「資金決済法」)にて、ビットコインをはじめとする仮想通貨の法的位置づけが初めて記載されました。日本での規制の対象は主に、ICO、仮想通貨交換業、取引所取引のレバレッジ規制などとなります。以来、2度の法改正が実施されており、2020年5月の改正資金決済法では、いわゆる「カストディ規制」が定められ、顧客の暗号資産を預かるウォレットサービスを提供する場合にも、交換業の免許が必要になっています。

アメリカでは米証券取引委員会(SEC)が仮想通貨関連のICO実施業者などを厳しく取り締まっています。また、米内国歳入庁は、仮想通貨の値上がり益にかかる税金を厳格化すると発表し、米商品先物取引委員会もビットコインは同委員会の管轄内にあるとしています。

アメリカはこれまでも仮想通貨への規制の動きがなかったわけではないですが、本格的に規制を強化することもありませんでした。しかし、バイデン政権に移り、政権与党の民主党からも規制強化が求める声が出てきたことで、仮想通貨に対する規制強化の議論を始めているようです。FRB(米連邦準備制度理事会)、OCC(通貨監督庁)、FDIC(連邦預金保険公社)などが仮想通貨の規制を協議し始めています。

現在のところアメリカ市場の影響力は世界的に大きいため、同国の規制動向は今後も最も注目すべきファンダメンタルズの一つです。

中国での仮想通貨の規制はICO規制から始まり取引所の規制、そして2021年に入りマイニングが本格的に規制されています。Huobi、OKEx、BTCCは中国三大取引所と呼ばれていた仮想通貨取引所ですが、それぞれ2017年の取引所の規制によりHuobiはシンガポール、OKExはマルタ、BTCCはイギリスに取引所を移転して営業を続けています。

また、香港はつい数年前まではシンガポールと並ぶ仮想通貨先進地域でしたが、近年は中国の影響が強まり、2021年5月には中国人民銀行が香港の金融機関に対し暗号資産を決済に利用しないよう通知しています。香港政府も仮想通貨を扱う事業者を登録制とし、一般の個人投資家による取引を禁止する方針になっています。

⑥まとめ

仮想通貨は何らかの規制をされる対象ですが、政府通貨が安定しないエルサルバドルのようにビットコインを政府通貨として認める国も出てきています。

中国を筆頭に各国で中央銀行のデジタル通貨(CBDC)の発行準備を進められています。仮想通貨を禁止して、CBDCの普及に務める国もあれば、共存していく国もあるでしょう。

今後、CBDCが誕生していく中で、今の仮想通貨がどのように規制されていくか、仮想通貨投資家としてはアンテナを高くして情報収集したいところです。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12