仮想通貨プロジェクトLibraを進めるFacebookの子会社Calibraの代表デービッド・マーカス氏(以下、マーカス氏)は7月16日、Libraのビジョンについて説明しました。
Libraは、銀行口座を持たない貧困層が経済参加できるようことを目的としています。Libraは、米ドル、英国ポンド、ユーロ、日本円などを準備金として振り込まれた法定通貨に1対1の価格となるように発行され、一定した価格を維持する決済通貨として利用されます。
こうしたビジョンの一方、Libraはトランプ大統領をはじめとして各国の規制サイドから存在を疑問視されています。しかし、マーカス氏は「Libraは政府の発行する法定通貨の補助的役割を果たすため、法定通貨と競合するものではない」と語っており、単一の組織がLibraを管理することを避けるためにLibra Associationを創設しているとしています。
Libra Associationのメンバー
- 決済分野:Mastercard、Mercado Pago、PayPal、PayU、Stripe、Visa
- テクノロジーとマーケットプレイス分野:Booking Holdings、eBay、Facebook / Calibra、Farfetch、Lyft、Spotify、Uber
- 電気通信分野:Iliad、Vodafone
- ブロックチェーン分野: Anchorage, Bison Trails, Coinbase, Xapo
- ベンチャーキャピタル分野: Andreessen Horowitz, Breakthrough Initiatives, Ribbit Capital, Thrive Capital, Union Square Ventures
- 非営利団体や多国間団体、学術機関:Creative Destruction Lab、Kiva、Mercy Corps、Women’s World Banking
今後は非営利団体や多国間団体、社会的影響力のあるパートナー、大学などがLibra Associationをに参加する予定だとされています。Facebookチームは、2019年までリーダーの役割を担いますが、新たに加盟した企業も創設メンバー同様の財政義務を負うとされています。
マネーロンダリング対策(AML)とテロ資金供与防止(CFT)への取り組み
Libra Associationは、米国財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)や連邦準備制度、連邦預金保険公社、国民信用組合協会と共に、AMLとCFT準拠する取り組みを進めるとしています。スイスのジュネーブに拠点を置くLibra Associationは、スイス金融市場監督局(FINMA)と規制の枠組みについて協議・予備審査を受けており、今後FinCENに通貨として登録する予定です。
また、消費者の保護とプライバシー確保はLibra Associationの最優先事項となっています。Libraのブロックチェーンでは、送信者と受信者のパブリックアドレス、取引金額、タイムスタンプが記録されますがLibra Associationでは個人情報を保持しません。データおよびプライバシー保護の目的で、スイス連邦データ保護情報コミッショナー(FDPIC)の管轄下に入るなど、ユーザーの情報を利用して収益化を行うことはないとマーカス氏は説明しています。
Libraに適用される規制
- AML / CFTプログラムに関するFinCENと外務省の規則
- 財政制裁に関する統制(OFAC)
- 州単位での金融監督機関の規制
- FinCENにおける米国の州の送金業者免許証取得
- マネーロンダリング防止、銀行秘密法、およびその他の執行機関と国家の規制
Libraのセキュリティ態勢
Calibraでは銀行秘密法を遵守し、顧客確認(KYC)とAML、CFTの推進、顧客のトランザクション監視を強化するために高度な機械学習などのテクノロジーを適用するとしています。これにより、Calibraの製品機能、顧客データ、サービス提供地域、取引などは、活動報告に基づくリスクプロファイルに見合ったものになるとしています。
Calibraの今後
Libra Blockchainはオープンソースですので、世界中の誰もがサービスを構築できます。その中で、CalibraはLibraを使った金融サービスを提供する予定で、まずはLibra用のデジタルウォレットをメッセージングアプリMessenger、WhatsApp上での提供するとしています。
Libraでは、スマートフォンでメッセージを送信するように、低コストで送金を可能にすることができます。世界中の人々はもちろん、多くの中小企業もLibraを採用することによって誰もが気軽に送金をできる世界をLibraは目指しています。

HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム

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