【元トレーダーが解説】イーサリアムクラシック(ETC)のトラブルと投資家としての捉え方

証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. イーサリアムクラシック(ETC)とは
  2. ETCが直面している課題
  3. 今後のETCの投資機会

イーサリアムクラシック(単位:ETC)は2020年8月だけで3回もの51%攻撃を受けています。その結果、主要な暗号資産取引所はETCの取り扱いについて慎重に対応している状況です。海外では、「ETCのブロックチェーンのセキュリティが改善されない限り、上場廃止を検討する」と表明した取引所もあります。

ここではETCが直面している問題と対応状況、暗号資産取引所の対応方針について整理します。そして、ETCについて今後のトレーディング機会を窺ってみたいと思います。

①イーサリアムクラシック(ETC)とは

ETCはイーサリアム(単位:ETH)からフォークして誕生した、分散型アプリケーションやスマートコントラクトのプラットフォームです。ビットコインやイーサリアムと同様に合意形成アルゴリズムに「Proof of Work (PoW)」を採用しています。

ETHからのハードフォークが決定したのは2016年7月のこと、そのきっかけとなったのが「The Dao事件」です。The Daoはイーサリアム(ETH)のスマートコントラクト上でベンチャーキャピタルを運営するプロジェクトでした。ファンド資金をスマートコントラクト上で自律管理する画期的なプロジェクトで、投資家から2億ドル近くのETHが集まりました。

しかし、スマートコントラクトの脆弱性が悪用されて、調達したETHの3分の1がハッキングにより盗まれたのです。ETHコミュニティは議論の末に、盗まれた資産を回収するためにイーサリアムのハードフォークを実行しました。被害者にETHを返却し、盗難されたETHを利用できないようにしたのです。

「取引記録の不変性」を重視してハードフォークに反対し、イーサリアム(ETH)から分岐して誕生したのが、イーサリアムクラシック(ETC)です。

②ETCが直面している課題

最近、ETCのハッシュレートは低下しており、この点を突く格好で51%攻撃が繰り返されています。51%攻撃は、ネットワークのハッシュレートの半数以上を単一エンティティが支配することにより、資産の二重支出を可能にする行為です。

1回目の攻撃は8月1日に起こりました。計3,693ブロックを操作(リオルグ)して計560万米ドル相当の二重支出を行いました。その5日後には2回目の攻撃が行われ、約4.000ブロックを操作して168万米ドルを二重支出しました。2回目の攻撃により、ETCの脆弱性がより強調されました。

ETCのネットワークを管理するETCラボ(ETC Labs)は、「ディフェンシブ・マイニング」というハッシュレートを増加させるための対抗策を講じると発表しました。しかし、発表直後の8月29日に3回目の攻撃を受けており、過去2回を上回る7000以上のブロックがリオルグされています。
ETC2
今回、攻撃者はナイスハッシュ(NiceHash)でハッシュレートをレンタルし、51%攻撃を実施したとされています。今後このような被害を回避するため、ETCラボはハッシュパワーレンタルビジネスに対して、本人確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)を導入するような規制強化を求めています。

③今後のETCの投資機会

このような出来事の結果、ETCの価格は8月に最初に51%攻撃が発覚して以来30%近く下落しました。現在のところ、ETCは比較的安定していますが、油断は禁物です。
ETC3
前提として、ネットワークの脆弱性が露呈しているETCへの投資はおすすめできるものではありません。取引所の動向が急変する可能性があります。主要な取引所が上場廃止を判断すれば、たちまち流動性が欠落し、価格に大きな影響を及ぼしかねません。

海外の取引所であるOKExは既にETCの上場廃止を示唆しています。その背景として、OKExは2回目の攻撃後に被害を受けたユーザーに560万米ドルの損失を肩代わりすることになりました。仮に、追加の51%攻撃が発生した場合、OKExを含む取引所が上場廃止の決断を下すことになり、ETC価格に悪影響を及ぼす可能性があります。

その上で、ETCの投資機会を検討していきます。これは筆者の私見なので一つの考え方としてご一読ください。

ETCは現在、ネットワークセキュリティの脆弱性を露呈して以来、前述の通りなかなか価格が上昇せず、投資家が敬遠している状況です。この課題を解決することは並大抵のことではありません。裏を返せば、課題を払拭できた場合のリバウンドも強力です。それこそが投資家の目の付け所となります。
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上記はETCUSDの日足チャートです。直近は緩やかな下落トレンドに入っていますが、今後、取引所がETCの取り扱い廃止となれば更なる下落が考えられます。

ここで、投資家として考えるべきことは「弱気な投資家が売り切った後のこと」です。これはよく「ポジションの傾き」として説明されます。

相場というのは売り手と買う手がいて成り立つものです。悪材料が出たとしても売る人がいない、売り切っている状態だと、それ以上価格は下落しません。そして、わずかな良いニュースが出ただけでも買い圧力が強まって、反発することがあります。

先ほどのチャートで急落が起きた場合、ターゲットとなるのは前回安値となる4.00ドル付近です。

日本でETCを取り扱っている取引所にはコインチェックやDMM bitcoin等があります。ETC5(※Coincheckは現在上記のように取引制限を行っております。)
ETC6
急な下落が生じた時は、(内容をチェックした上で)あえて購入を検討してみることも、選択肢に入れておくことは有用です。相場は他人と同じ方向に投資しても、勝てる訳ではありません。敢えて誰も想定していない場面で仕込むことも重要です。

今後のETCの動向を見守りながら、自分ならどうするかシミュレーションしてみてください。その後、予想に対して実際に市場がどのように動くかという視点で、相場を見ていただくと良いでしょう。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12