今回は、EnjinプロジェクトのSDGsに関する取り組みについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- Enjinプロジェクトの概要
1-1.Enjinプロジェクトとは?
1-2.Enjinプロジェクトのプロダクト - SDGs達成を目指すEnjin
2-1.SDGsとは?
2-2.EnjinのSDGsに対する取り組み - NFT関連企業初、国連グローバル・コンパクト(UNGC)に参加
- まとめ
仮想通貨業界がますます注目を集める一方で、マイニングによる膨大な電力消費や二酸化炭素排出といった環境への影響を懸念する声も高まりました。そんな中で、環境への積極的な取り組みで注目されているのが「Enjinプロジェクト」です。EnjinはNFTの発行・管理・取引向けのブロックチェーンとして市場で中心的なポジションを確立しつつあるプロジェクトです。また、Enjinブロックチェーンの仮想通貨ENJはコインチェックやGMOコインに上場していることもあって注目している国内の投資家も多いでしょう。そこで今回は、EnjinプロジェクトとそのSDGsに対する取り組みについて解説します。
目次
- Enjinプロジェクトの概要
1-1.Enjinプロジェクトとは?
1-2.Enjinプロジェクトのプロダクト - SDGs達成を目指すEnjin
2-1.SDGsとは?
2-2.EnjinのSDGsに対する取り組み - まとめ
①Enjinプロジェクトの概要
まずは、Enjinプロジェクトの基本概要について解説します。
1-1. Enjinプロジェクトとは?
Enjinプロジェクトを主導するEnjin社は2009年にシンガポールで設立されました。元々ゲームコミュニティ企業として誕生し、「Enjin Network」というゲームコミュニティ・プラットフォームの運営からスタート。今では2000万ユーザーを抱えるブロックチェーンプラットフォームに成長しています。
Enjin社はブロックチェーンの技術力が非常に高く、イーサリアムの二つのNFT規格のうち上位に位置するERC-1155規格は2018年に現CTOのラドンスキー氏によって考案されました。
Enjinプロジェクトは、ゲームコミュニティプラットフォーム運営で培った知見をもとにゲーム開発・運営企業に対して、ブロックチェーン技術の導入を支援し、ガス代のかからないブロックチェーンプラットフォームを構築することでNFTをはじめとするブロックチェーン技術の実用化に貢献しています。
また、EnjinのCEOであるブラゴフ氏は、技術革新を行う際にまず地球のことを考えることを重要視しており、「新しい技術創造は環境破壊と引き換えに行われるべきではない」という考えを示しています。
1-2. Enjinプロジェクトのプロダクト
現在、Enjinプロジェクトで推進されている内容の内、自社プロダクトは以下の5種類です。
- ブロックチェーンプラットフォーム(Enjin Platform)
- ウォレット(Enjin Wallet)
- NFTマーケットプレイス(Enjin Market place)
- JumpNet(イーサリアムのガス代が無料でNFTを発行できる高速ブロックチェーン)
- Beam(QRコードを使用した次世代型マーケティングツール)
他にも自社プロダクト以外に外部へ提供している基盤やソフトウェアとして以下の3種類があります。
- ブロックチェーンゲームの基盤
- 独自ブランドのブロックチェーンエクスプローラーやマーケットプレイスの基盤
- NFTが利用できるソフトウェア
これらの基盤やSDKなどのソフトウェアを利用することで、ブロックチェーンのコーディング技術を一切せずに分散型ブロックチェーンのシステム開発ができる仕組みを提供しています。
②SDGs達成を目指すEnjin
次に、SDGsの概要とEnjinのSDGsに対する取り組みについて紹介します。
2-1. SDGsとは?
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいる目標です。
2-2. EnjinのSDGsに対する取り組み
Enjinが行っているSDGsに対する取り組みは、下記の通りです。
①イーサリアムのガス代削減を目的とした「JumpNet」の開発
Enjinは2021年4月に、イーサリアムガス代削減を目的としたスケーリングソリューション「JumpNet」をローンチしました。JumpNetは、イーサリアムネットワークで問題視されている「ネットワークの混雑」と「ガス代高騰」への対処を目的として、Enjinが開発しているスケーリングソリューションです。
JumpNetは主に、Enjin技術を活用して無料でアプリを提供している開発者の負担削減を目指して開発されています。イーサリアムのガス代高騰にかかわらず、無料でトランザクションを発行でき、即座にトランザクションが完了する設計になっています。
JumpNetでは、イーサリアムと比較して電力使用量を99.99%の削減することに成功しています。また、排出する二酸化炭素などの温室効果ガスの量よりも、吸収する温室効果ガスの量の方が多い状態である「カーボンネガティブ」を達成しています。なお、これは当初2030年での達成を目標としていましたが、大幅な前倒しでの達成となっています。
②脱炭素化に向けたイニシアチブ「Crypto Climate Accord(CCA)」への参加
「Crypto Climate Accord(CCA)」とは、2021年4月に発足した、仮想通貨業界の脱炭素化を目指すイニシアチブです。Energy Web、ロッキーマウンテン研究所、Alliance for Innovative Regulation(AIR)によって設立されたCCAは、2025年までにブロックチェーンを100%再生可能エネルギーで運用することなどを目標としています。
Enjinは2021年6月にCCAに参加したことを発表しました。EnjinはJumpNetにて99.99%の削減を達成しました。さらに、Beyond Neutralを通じてカーボンオフセット・クレジットを取得することで、カーボンネガティブを達成し、生成する炭素量よりも多くの炭素を相殺することができています。
これ以外にも、EnjinはPolkadotのパラチェーンで構築している別のプロダクト「Efinity」についても、今後持続可能な開発を進めていくとしています。
③NFT関連企業初、国連グローバル・コンパクト(UNGC)に参加
Enjinは2021年7月、NFT関連企業としては初めて国連グローバル・コンパクト(UNGC)に参加したことを発表しました。UNGCとは、1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)にて当時の国連事務総長コフィ・アナン氏が提唱した国連傘下の組織です。UNGCは持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに各企業・団体が参加する自発的な取り組みです。UNGCは、人権の保護、不当な労働の排除、環境への取り組み、腐敗防止の4つの分野、10の原則を掲げています。
Enjinは、UNGCへの参加について、ブロックチェーン技術によって人々の生活を向上させるというコミットメントを再確認するものだとしています。
③まとめ
今回ご紹介したように、Enjinプロジェクトは技術革新を推進するだけでなく、同時にSDGs達成のために様々な取り組みを行なっています。ブロックチェーン技術はデータ管理のトラストレスな仕組みに革新性が認められる一方で、マイニングやノード管理にかかる電力消費量や環境への影響面で批判の声が上がっていることも確かです。Enjinの環境に対する取り組みは、今後の仮想通貨業界の持続的な発展において重要な要素となってくるため、引き続き彼らの活動に注目していきたいと思います。
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中島 翔
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