ビットコインの”クジラ”の動向をキャッチするのに役立つオンチェーン分析とは?

今回は、Whale(クジラ)の動向をキャッチする分析方法について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. クジラ(Whale)とは?
  2. クジラの種類
  3. クジラの動きをオンチェーン分析で掴む
  4. クジラがビットコインを蓄積している兆候
    4-1. Coinbase Premium Index
    4-2. All Exchanges Inflow Mean (7-day MA)
    4-3. Grayscale Holdings(GBTCプレミアム)
  5. クジラがビットコインを売却している兆候
    5-1. All Exchanges Inflow Mean (24h MA)
    5-2. All Exchange Whale Ratio (72h MA)
  6. まとめ

仮想通貨(暗号資産)市場に限らず、株式やFXでさえ、単一のプレイヤーが相場に大きな影響を与えることがあります。金融市場では資本の大きさがモノを言い、大規模プレイヤーの動きに相場が左右されることもあります。そのようなプレイヤーのことを、相場の世界では「Whale(クジラ)」と呼びます。

仮想通貨のファンダメンタルズ分析には、クジラの動きを捉える「オンチェーン分析」という手法があります。今回は、オンチェーン分析について解説します。

①クジラ(Whale)とは?

FXや先物市場では、ヘッジファンドや巨大な実需を取り扱う銀行などの機関投資家がいわゆるクジラに当たります。これらの機関投資家に加えて、株式市場では大株主、そして仮想通貨の大量保有者がクジラにあたります。

例えば、ビットコイン・ホルダーの上位20%が流通量全体の80%以上を持っています。BitInfoChartsによると2021年第1四半期の時点で、わずか3つのウォレットがビットコイン流通量全体の7.18%(当時約740億米ドル)を所有しています。そして上位100のウォレットがBTC流通量の約3分の1を所有している状況です。

こうしたクジラの動きは、しばしば市場に非常に大きな影響を与えてきました。大量保有者が長期保有を継続していると、市場の流動性が低下するのでボラティリティ(価格変動)が高まる可能性があります。反対に大量保有者が一斉に売り始めると暴落に繋がります。このようにクジラは市場の歪みを生み出す傾向があります。

②クジラ(Whale)の種類

仮想通貨市場にはどのようなクジラがいるのでしょうか?

開発者やマイナー

多くの場合において、プロジェクトの開発メンバーが最もその仮想通貨を保有しています。ビットコインの場合は、仮名のビットコイン発案者サトシ・ナカモトが100万BTCを保有していると考えられていますが、未だに該当アドレスから移動されていません。

個人投資家

仮想通貨プロジェクトのトークンセールに参加した投資家の中に、大量保有者が含まれる傾向があります。セール価格は比較的安価に設定されているからです。

また、2010年に米国でピザ2枚を1万BTCで購入したような初期購入者もいます。当時のビットコインのレートは1BTC=0.2円なので、1万BTCでも2,000円でした。これが10年後に600億円相当(最高値レート換算)になるとは誰も思わなかったでしょう。余談ですが、ビットコインが世に出回り始めた2009年の価格は1BTCあたり0.07円でした。

これは極端な例ですが、初期にトークンを購入したプロジェクトが成功すればクジラとして大金を手にすることになります。

金融機関・企業

こちらは、仮想通貨取引所やプロジェクトの資金調達に出資をしたファンドなどが含まれます。今後は、大手銀行や企業などが大量保有する仮想通貨も出てくるでしょう。テスラに代表されるようなビットコイン投資を表明する企業や、ペイパル社のように仮想通貨の投資・決済機能を提供する企業などが増えてくるでしょう。

③クジラの動きをオンチェーン分析で掴む

次にクジラの動きをオンチェーン分析で掴む方法について解説します。

大企業などの大口が仮想通貨を購入する際は、仮想通貨取引所やファンドを経由して購入することが多いです。個人の富裕層はOTC(相対取引)で購入する場合もありますが、実際には個人に対して大量に売却をするホルダーは少なく、富裕層は第三者を経由して仮想通貨取引所などで購入していることが多いです。

また、クジラが仮想通貨を売る際には、企業の場合は購入時と同じように大手の取引所やファンドなどを経由して売却し、個人の場合は一気に売るようなことはせず、長い時間をかけて売ることが多いようです。

④クジラがビットコインを蓄積している兆候

クジラがビットコインを蓄積しているシグナルとして、注目されている3つのポイントを解説します。

4-1. Coinbase Premium Index

Coinbase p
以前、別の記事でも取り上げたことがありますが、Coinbase プレミアムは米国の大手取引所Coinbaseと世界最大級の取引所Binanceとのビットコイン価格差です。

【関連記事】:ビットコインのプレミアム指標のトレードへの活かし方

Coinbaseプレミアムが高い時は、大口顧客(クジラ)が積極的にビットコインを購入していることを意味します。実際に2020年後半に米国の機関投資家と富裕層によるビットコイン購入により、Coinbaseプレミアムは最大50ドルを超えていました。

4-2. All Exchanges Inflow Mean (7-day MA)

AEIM 1
All Exchanges Inflow Mean (7-day MA)は、すべての取引所へのインフロー(流入量)を7日間の移動平均で表したグラフです。個人投資家が市場で活発に購入しているときに、クジラは保有しているBTCを売却する傾向があります。ただし、クジラが売却し始めたとしてもビットコイン価格はある程度上昇傾向を継続します。All Exchanges Inflow Meanが1.0を下回った時が、弱気相場に切り替わる目安とされています。

4-3. Grayscale Holdings(GBTCプレミアム)

GBTC p
Grayscale(グレイスケール)は米国の大手仮想通貨ファンドです。多くの機関投資家がGrayscaleのビットコインファンド「GBTC」への投資を通じて、ビットコインのエクスポージャーを得ています。GBTC Holdingsが上昇している際は、ビットコインが上昇トレンドに入っていることを示す、強気のシグナルとなります。

⑤クジラがビットコインを売却している兆候

次にクジラがビットコインを売却している兆候を示唆する、2つのオンチェーン指標について解説します。

5-1. All Exchanges Inflow Mean (24h MA)

AEIM2
All Exchanges Inflow Meanは、全ての仮想通貨取引所に預け入れられたビットコインの平均量をあらわします。このインジケーターは一般的に24時間移動平均で使用します。All Exchanges Inflow Meanが2BTCを超えると、ビットコイン・クジラの投げ売りの兆候を示し、その後2BTCを下回った場合にクジラの売却活動がおさまったことを示します。

5-2. All Exchange Whale Ratio (72h MA)

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Exchange Whale Ratioは測定時間の上位10のビットコイン流入トランザクションを、全体の取引所へのインフローの合計で割ったものです。強気相場では85%を下回り、弱気相場では通常85%を超えるとされています。

⑥まとめ

今回使用したデータは、CryptoQuant(https://cryptoquant.com/)で入手することができます。全てのデータを閲覧するにはサブスクリプション購入が必要ですが、無料で見られるデータも多く参考にしてみてはいかがでしょうか?

どのような市場においてもクジラの動きを捉えてついて行くことができれば、成功する可能性が高くなります。株やFXではなかなか掴むことの難しいクジラの動きですが、ビットコインのオンチェーン分析であればかなりの精度で推測することができます。トレーディング戦略の参考材料として研究してみると良いでしょう。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12