誰もが投資をするに当たって「何に、どのタイミングで投資をするか?」という問題にぶつかるのではないでしょうか?市場に投資商品は沢山溢れているので初心者であればなおさら悩まれる方も多いと思います。しかし、全ての投資商品に共通して重要な役割を担うものが一つあります。それは「テクニカル分析」です。
「テクニカル分析」というのは価格の値動きを表したチャート上で、多様な指標に基づいて行うものです。トレーダーにとって、テクニカル分析はエントリーするタイミングを図る上で重要な判断材料となっています。投資商品の値動きはあくまで投資家が売買を行った結果であるため、価格を表すと同時に、ある意味人間の心理的状況を投影したものとも言えます。テクニカル分析を覚えておくとあらゆる投資商品に対応できるため、勉強しておくことをおすすめします。
筆者は、前職で3メガ系証券会社で外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行っており、世界経済の分析をしながら日々マーケットと対峙していました。こうした経験を踏まえ、ここではトレード手法を実際のチャートを利用して紹介したいと思います。
目次
ブレイクアウトトレード手法
ここでご紹介するのは「ブレイクアウト」を利用したトレード手法です。ルールは非常にシンプルなのでトレード初心者にとっても取り組みやすいものと言えます。
最初にブレイクアウトについて説明したいと思います。相場には「節目」となる一定のラインを上下どちらかに抜けると、大きく相場が動く場面があります。節目のラインを超えた時、市場では多くの投資家の損切りが発生しています。こうした節目をチャートから読み解くことができると戦略を立てやすくなります。
それでは、いったいどのラインが節目で、ブレイクアウトが起きるとどのような動きになるのか、チェックしてみましょう。
上図はビットコインの4時間足チャートです。オレンジの水平線が節目となるラインです。このラインを上方向にブレイクすると、以前は抵抗線として機能していた水準が、支持線に切り替わっています。(こうしたレジスタンス;Ressistanceとサポート:Supportの転換は「レジサポ転換」と呼ばれ、多くのトレーダーが意識しています。)
節目の抵抗線を突破してしばらく横ばいに推移した後、上方に向かい始め、結果的にビットコインは50%上昇して1,500,000円に到達しました。このような動きからトレードにおいて節目がいかに重要かお分かり頂けると思います。当然ながら、常に節目が機能するわけではありませんし、自分が節目と思っていても実は市場は意識していないということもあります。相場には絶対に勝てる手法はないので、過信しないよう心がけてください。
ブレイクアウトのトレード手法(基本編)
それでは次に、ブレイクアウトを利用したトレード手法の説明に入りたいと思います。下記のチャートをご覧ください。
こちらもビットコインの4時間足チャートです。緑の丸印付近で「逆ヘッドアンドショルダー」を形成し、節目となる最初のオレンジの水平線を突破した時点で資産の一部で「買い」を入れ、トレードをスタートします。その後一時的に下落しますが、以前の抵抗線だったラインがサポート(レジサポ転換)となって反発しています。
上昇トレンドを継続させ次の節目となる中央の水平線に差し掛かります。ここを突破すると、1つ目と同様にサポートまで戻ってくると推測できます。実際に2つ目の水平線まで価格が下落したらポジションを積み増します。なお、このラインを明確に下回ったらこのポジションを撤退、つまり損切りします。
そして最後に、一番上の水平線を突破し、再びこのラインまで戻ったところでポジションをさらに積み増します。これで3回に分けて「買い」を入れたことになります。こうしたトレンドフォロー手法によって、トレンドが継続するほど利益を大きく伸ばすことができます。この場合、先に購入した分を売りたくても我慢することが大切です。「利食いは遅く、損切りは早く」は投資のセオリーです。
肝心の利確ポイントは、サポートラインを下抜けしている緑の丸印となります。今までは上方向にどんどんトレンドが継続していましたが、この位置で一旦上昇トレンドは終了したと考えられます。こうした判断は早めに行いましょう。このような明確なルールを持って利益確定(損失確定)を行うことは非常に重要です。ルール化とそれを遵守することで、感情に左右されずにトレードできるようになります。
トレード手法(応用編)
次にブレイクアウト手法にテクニカル指標を組み合わせて行うトレード手法をご紹介します。
上記はビットコインの4時間足チャートです。9月25日には直近安値である紫の水平線を下方にブレイクしています。重要なサポートのブレイクアウトとなり、下落方向へのトレンドが発生したと判断できるので、ここでショートポジションを取るのが基本的な考え方です。しかしここでは一旦見送り、テクニカルインジケーターと組み合わせることで、さらに勝率を上げるエントリー地点を検討してみましょう。
まず中央のテクニカル指標は「RSI」です。70%以上は「買われ過ぎ」を表し、20%を下回ると「売られ過ぎ」と判断できます。オレンジの丸印では、RSIが上昇して「買われ過ぎ」のラインに隣接しています。この時、下段の「ストキャスティクス」を見ると「デットクロス」となっています。RSIとストキャスティクスの状況から、ここでショートエントリーを取ることができます。この後ビットコインは緩やかな右肩下がりに推移しており、テクニカル指標が機能したと言えます。
このケースでは、ブレイクアウトしたからと言って慌ててポジションを取らなくとも、次のチャンスがあるということがわかります。一旦待って冷静になり、ゆっくりエントリーしても利益を上げられるということです。これは一例であり、別のテクニカル指標を組み合わせてトレードする方法もあるので、色々試してみるといいでしょう。
ブレイクアウトトレードの失敗例
ここでは、上手く行かなかった場合の損切りについて解説したいと思います。残念ながら、トレード戦略に勝利の方程式はありません。ブレイクアウトに関して特に注意すべきことは「騙し」です。「騙し」が起きたときには、「リスク管理」で対処することになります。まずは実際にどのようなパターンが「騙し」なのか見てみましょう。
オレンジの丸印をご覧ください。ここは直近安値を下回ってきており、次は1,000,000円付近までの下落は狙えるような動きに見えました。しかし結局は「全戻し」の展開となっています。この時ブレイクアウトの時点でショートポジションを保有していた場合、どこで損切りを行うべきでしょう?
ベターな方法は、「水平線上部の陽線付近」となります。元々はこのラインを割り、下方向のトレンドが続くというプランに基づいてショートポジションを保有しました。つまり、プランから逸脱するようなシナリオが発生した場合はすぐに損切りし、改めてプランを立てなおす姿勢が重要です。
次の失敗例をご紹介します。黄色のエリアでは、水平線をブレイクアウトした後にしばらく横ばいに推移しています。水平線がサポートとして機能しており、このまま上方向かと思いきや、結局失速したパターンです。
直近高値を超えて時間調整の様相を見せて横ばいとなり、何度か上方向を試そうとする「上髭」を見せています。しかし、水平線を下回ってしまい、再び抵抗線となって上値を抑え込み、だんだんと下落する流れになっています。
このように、ブレイクアウトしてもその動きが継続するとは限らないことを覚えておき、損切りなど冷静に対応するようにしましょう。
トレードで一番難しいこと
最後にトレードを行うに当たって一番難しいことをお伝えしたいと思います。トレードで一番難しいことは「自分自身を律すること」です。今回ご説明したテクニカル指標やオシレーターはとてもベーシックなもので投資家の大多数が知っているものです。しかし、市場では9割のトレーダーが負けていると言われており、損失の多くは、詰まるところ「メンタルコントロールが出来ていない事」に起因します。
負けることをゼロにはできないかもしれません。しかし、ルールをきちんと守って入れば一回の損失で退場することはないでしょう。損失が出ると誰でも「少しでも回復してからポジションを手放したい」という感情が生まれ、結局は大きな損失を抱えたまま「塩漬け」状態になってしまいます。損切りによる撤退は、次の機会をトライする最初のステップです。前向きに割り切りましょう。損切りができない投資家は、マーケットから容赦無くレッドカードが提示されることになります。
仮想通貨は値動きが他の商品と比較しても大きいため、厳格なルールとそれを遵守する強い心が必要です。例えシンプルなルールでも、大きな損失を防げるでしょう。まずは自分自身の性質を見つめ直し、トレード手法を活かしてもらえると幸いです。
今回の記事でご紹介したビットコイン・チャートはbitbankを使用しています。bitbankでは、数か月前に遡って時間足でチャート分析ができます。bitbankで口座開設して、「ブレイクアウト手法」を仮想通貨トレーディングに活かしてみてください。
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お詫びと訂正:ビットコインの価格に関する記述に誤りがございました。お詫びして訂正させていただきます。(最終更新日時:2020年5月18日14時18分)
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中島 翔
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