トレード初心者にとって最初にぶつかる壁の一つが「取引手法」だと思います。本を開けば様々な取引手法が記載されており、一体どれを選ぶべきかわからなくなることもあると思います。まずは「どの取引手法が自分に合っているのか?」という視点から、一つずつ試してみると良いでしょう。
筆者は、前職で3メガ系証券会社で外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行っており、世界経済の分析をしながら日々マーケットと対峙していました。
こうした経験を踏まえ、ここでは仮想通貨投資に使いやすく、シンプルな「ボリンジャーバンド」を使った取引手法を実際のチャートを利用して紹介したいと思います。
目次
ボリンジャーバンドとは?
最初にボリンジャーバンドについて簡単に説明したいと思います。ボリンジャーバンドは1980年ころにファンドマネージャーのジョン・ボリンジャー(John Bollinger)氏が考案したインジケーターです。統計学で利用される「標準偏差」をバンド(帯)で示しており、移動平均線とその上下に置かれた価格変動幅を示す線をワンセットとしています。
「価格の大半がバンドの中で推移する」という確率論がわかりやすく、視覚的に判断しやすいことからトレーダーの中でもメジャーなテクニカル指標の一つとなっています。
ボリンジャーバンドの中心となっているラインが移動平均線です。チャートは価格が上昇と下降を繰り返しながら形成されますが、基本的には移動平均線に価格が収縮したり、バンド内で価格が推移することが多くなっています。そのため、バンドから大幅に乖離した場合は、いずれ移動平均線付近まで戻ってくると考えることができます。
こうしたボリンジャーバンドの特性に基づいてトレードする場合、上下バンドから大幅に乖離したタイミングで逆張りを仕掛けるケースも多いのですが、実はボリンジャーバンドは順張りでも利用できます。
まずは、ボリンジャーバンドで重要な標準偏差の見方について解説したいと思います。
ボリンジャーバンドの中央には移動平均線があります。その移動平均線の上下に移動平均線を基準とした標準偏差である±1σの線や±2σの線が引かれます。標準偏差自体は統計学の数字であり、トレード用に作られたわけでないため覚えておきましょう。次に、標準偏差の見方を表にしたので下記の内容は必ず覚えるようにしてください。
下図はボリンジャーバンドをチャート上に示したものです。
この図では、1α以上に価格がオーバーシュートすると移動平均線に戻ってきているのが視覚的に理解できるでしょう。
②ボリンジャーバンドのトレード手法:逆張り
それでは、ボリンジャーバンドを利用したトレード手法をご紹介したいと思います。一般的にボリンジャーバンドは標準偏差から大幅に乖離した際に、収斂を利用してトレードするものです。そのため逆張りで利用するトレーダーが多いことで知られています。まずはこの取引手法をご紹介したいと思います。
下記はBTCJPYの日足チャートです。
青色の丸印がエントリーポイントで、紫の丸印が利益確定のポイントとしています。このように見ると2αを突破して上昇した後、必ずバンド内に戻ってきています。利益確定の位置を1αに設定すれば、無理のないトレードができます。
価格が高騰し続けた場合、1αがエントリー時と同じラインまで上昇してしまうことがあります。しかし、1αにタッチしたら利益が出ていなくても損が出ていたとしても必ずポジションは清算するようにしましょう。
注意しないといけないのは「逆張りの時こそルールを徹底する」ということです。ルールを逸脱すると、いつ決済すればいいか判断できなくなります。そのまま上昇し続けて損失が膨めば、元金がほとんどなくなってしまうリスクがあります。逆張りとはそれだけ危険な手法です。損切りのラインも利益確定のラインも「1α」と設定することで無理のないトレードができます。必ずここは意識しておきましょう。
もう一点注意しないといけないのは、「4時間足以上のチャートで利用すること」です。これは経験則ですが、5分足等の短い時間軸のチャートになると、大きく乖離しても反発してもそのままトレンドが続くことが多いため、勝ちにくくなります。あくまでも日足チャートで大幅に乖離したらエントリーするくらいの気持ちで、余裕を持ってトレードするとことをおすすめします。
③ボリンジャーバンドのトレード手法:順張り
次にボリンジャーバンドのトレード手法の一つ、「順張り」のパターンを解説します。これはトレンドが出た時には利益を大きく伸ばすことができるため、大きなリターンを得る可能性もある手法です。
先ほど逆張りは価格が移動平均線に収斂することを利用してトレードすると説明しました。つまり、価格は「移動平均線に乖離したり、収斂したりを繰り返しながら動いている」と考えることができます。もしもトレンドが出ているのであれば、そのトレンドの方向にポジションを取る方が安全と言えます。
それでは、トレンドの見分け方と、トレードへの活かし方を解説したいと思います。
まず最初にチェックするのは青色の丸印の位置です。ボリンジャーバンドは値幅が拡大した時にバンド幅が両サイドに拡大する特徴があります。こうしたバンドが収斂した後に大きく拡大する動きが、トレンド発生時の目安となります。
上図では、丸印からバンドが拡大している点と−2αを突破して下ヒゲをつけている点の2つを確認してからトレンドが出たと判断できます。しかし、ここではポジションをとらずに、−1αまでタッチするのを待つことにします。
次に、価格が−1αにタッチした黄色の最初の丸印でショートポジションでエントリーします。その後は基本的に「−1αと−2αの間で価格が推移する」というセオリーに基づいてトレードします。下落と回復を繰り返す中で、−1αにタッチする毎にポジションを増やしつつ、下落トレンドが終わるのを待つことになります。
「下落トレンドが終わる」タイミングをどのように判断するかという問題は、「中心線を逆方向に突破したらポジションをクローズする」というルールを設けることで解決できます。もちろん−1αを終値ベースで突破したらポジションをクローズという方法もありますが、これだとトレンドに乗り切れないまま“ブレ”の要因でクローズすることも多いのでおすすめしません。2つ目の黄色の丸印をご覧いただくと、陽線が連続で出ながら中心線を上方向に突破しているため、このタイミングでポジションをクローズすることになります。
以上のように取引ルールはとてもシンプルですが、これだけでも相当な値幅を取れることがチャートからご理解頂けると思います。
④まとめ
最後に、改めてボリンジャーバンドを利用する時の注意点をまとめてみたいと思います。
まず、ボリンジャーバンドに限りませんが「ルールは必ず遵守すること」を守るようにしてください。特に逆張りでエントリーする場合はトレンドに逆らうことになります、相場が勢いづくと、どんどん損失が拡大することになります。先述の通り、損失が出ていても定めた位置まで来たらしっかりとロスカットするようにしましょう。
次に大事なことは、「ボリンジャーバンドの拡大を確認すること」です。バンドが狭い範囲で推移している時はまだトレンドが出ていません。ありがちなミスはイベント等で相場が動き、バンドが拡大していないのにエントリーしてしまうことです。相場が動いているように見えても、あくまでバンドが拡大することをじっくり待ちましょう。その後でトレードしても遅くはありません。早めに仕掛けるとブレが生じるのでしっかりと覚えておくようにしましょう。
3つ目は、「中心線に対してローソク足が上下にどちらに位置しているのか把握すること」です。これは順張りトレードの時に重要となります。上方向で推移している場合は中心線から2αの間、下方向で推移している場合は中心線から−2αの間で推移することになります。この基本はしっかりとおさえてください。
最後に「トレードは設定したローソク足の終値ベース」で実行してください。ルールを決めてどのタイミングで取引を行うのかを定めておく必要があります。急反発してボリンジャーバンドから大きく乖離し、エントリーポイントにしてしまうケースがあります。しかし、裁量で行ってしまうとミスにつながり、取引結果にも悪影響を及ぼしますので注意しましょう。
ここではボリンジャーバンドを利用した基本的な取引手法についてご紹介しました。これは基本的な手法ですが、しっかりとルールを守れば大きく負けることは少なくなるでしょう。しかし、「取引手法」よりもトレードで重要なのは「ルールを守ること」です。この点をしっかりと認識して、気持ちに余裕を持ったトレードを心がけてください。
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中島 翔
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