原油相場の影響、株式市場との相関性をビットコインの投資判断にどのように取り入れるか

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証券会社を経て、仮想通貨取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔のコラムを公開します。

目次

  1. ビットコインと原油価格の関連性
  2. ビットコインと株式市場の関連性
    1、株式市場と仮想通貨市場の投資家数(母集団)が大きく違うこと
    2、ビットコインの最大発行数量は2100万枚と決まっていること
  3. ファンダメンタルズに基づいた今後のビットコインの見通しは?

コロナショック以来、これまで予想もされていなかったようなことが次々と起こっています。

2020年2月末頃に始まった世界的な株価大暴落を受けて、3月にビットコインも急落する動きを見せ、4月には原油の先物価格が史上初めてマイナスをつけました。混乱の最中に、デリバティブ市場では多額の証拠金を失う投資家が続出しています。

このような時期に、どのような考え方でビットコイン投資に向き合っていくべきでしょうか。今後の投資戦略に活かせるように、ポイントを整理しておきましょう。

①原油価格と仮想通貨の関連性

最初に直近で起こった原油価格のマイナス圏突入と、当日のビットコインの動きについてコメントしたいと思います。原油価格の急落はビットコインのプライスアクションに少し影響を与えました。

下図は4月21日の値動きです。原油価格が急落した時、ビットコインも急落しているのがわかります。
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原油価格(左軸:赤)とビットコイン(右軸:青)の価格チャートが、同じタイミングで動いていることがわかります。しかし、2つの資産の下落率は大きく異なり、ビットコインの4%超の下落に対して、原油価格は−100%と異常な数字になっています。原油価格はこの時点で1バレル20ドル付近から0ドル以下に急落しました。なお、絶対値が小さいので原油のパーセンテージは大きく振れやすい事を留意しておきましょう。

このようにして見ると、原油価格とビットコインに関連性があるように見えます。確かに、原油の生産工程で発生する余剰ガス(フレアガス)でビットコインのマイニングをしている事業者も存在します。原油価格がマイナスとなれば、一部の原油の採掘業者は倒産に陥り、余剰ガスを使うマイナーも作業できなくなるかもしれません。そのため、オペレーターが人件費を払うために、備蓄したビットコインを売りに出すことで、市場の「売却圧力が強まる」という見方もできます。

一見すると、チャートと整合性が取れるため、市場アナリストはこのような説明をする場合があります。しかし、実際にこうした企業がマイニング全体に占める割合は圧倒的に低く、影響は限定的と言えます。ビットコインをトレードする際に、あまり原油価格を見る必要はないと考えて良いでしょう。

②ビットコインと原油価格の関連性

次に、ビットコインと株式市場の関連性について整理したいと思います。ビットコインと株式市場は足元では順相関となってきています。

以前はビットコインを「リスク回避資産」とみる声も多くありましたが、現在は株式市場と順相関となっているため「リスクアセット」と見るべきかもしれません。

下図はビットコイン(右軸:青)とNYダウ(左軸:赤)のチャートです。
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2018年のビットコイン・バブルの崩壊以降、株式市場とビットコインのトレンドが同じ方向を向いていることが見て取れます。それでは、2つの市場の相関性を考える上で考慮すべきポイントを説明します。

1、株式市場と仮想通貨市場の投資家数(母集団)が大きく違うこと

株式は最も多くの市場参加者が取引しており、それに比べればビットコインの市場参加者はわずかといって良い状況です。「株式市場の上昇」が「ビットコイン価格の上昇」に影響を及ぼす可能性はあっても、「ビットコインの上昇が株式市場の上昇に影響すること」はほぼ無いと考えてください。

最大発行枚数が決まっているため、年月が経過するに連れてビットコインの希少性が高まる。この性質は、ビットコインを「リスク回避資産」とする根拠の一つです。マイニング報酬の半減期を4年毎に繰り返しながら需給バランスが引き締まり、価格が上がりやすくなると考えられています。

2、ビットコインの最大発行数量は2100万枚と決まっていること

よくゴールドの価格について話す時に「プール●杯分しか地球上に存在しない」などと表現されますが、これと同様のロジックです。よくメディアで「株価が下落したことでリスク回避姿勢が強まり、ビットコインが上昇した」という論理が多用されますが、あまり信用する必要はないと私は考えています。

③ファンダメンタルズに基づいた今後のビットコインの見通しは?

今後のビットコインの動向を考える上で、原油価格は見る必要はないと考えています。石油採掘業者の倒産は一部のマイナーに売り圧力を加えるかもしれませんが、トレンドを左右するようなものではないと考えています。原油価格は別物として見ておいて良いでしょう。

一方、株価市場は重要です。「コロナショック(2020年2月末頃に始まった世界的な株価大暴落)」に対処する史上最大規模の景気刺激策により、リーマンショック以上の資金が市場に流れることが決定しています。2008年のリーマンショック時にもアメリカと中国は大規模な景気刺激策を行い、株価を上昇させました。今回の経済対策も株式市場に相当な影響を与えるでしょう。

下図は2008年リーマンショック以降の米国株(NYダウ、S&P株価指数)と中国上海総合指数のチャートです。
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2008年以降、非伝統的金融政策によって大量の資金が米国株式市場に淡々と流入したことが見て取れます。中国株の上海総合指数(右軸2つ目:オレンジ)はリーマンショック直後の景気刺激策で急反発をするも失速、その後2014年に新たな景気刺激策によって急上昇しています。このように、政府が行う大規模な景気刺激策はリスクアセットを押し上げる効果があることが理解できます。

現在、米国株とビットコインの相関係数は+0.5(相関あり)を超えており、ある程度同じように動くと想定されます。今後、大規模な景気刺激策を行っていく市場環境を考えると、景気が悪くても株価は上昇する可能性が高いと判断することは賢明と言えるでしょう。

「米国やヨーロッパ、そして日本で今後行う現金支給」も重要なポイントです。これは過去の景気刺激策にはないものです。米国では一人当たり1200ドル配布された時期に、仮想通貨取引所で同額の入金が増加したというデータが出ています。つまり、生活支援策として付与される現金支給を、仮想通貨に投資して増やそうと考える個人が多いということです。個人投資家の使い方が正しいか否かは置いといて、相場を予測する上で現金給付は少なくとも短期的に下落圧力を弱める材料と成り得るでしょう。

これらの要因を踏まえると、ビットコインが「ここから大きく下落する」とは考えにくく、下落した場合は淡々と拾っていく姿勢で、ロングポジションを作成していく事が良いのではないかと考えます。

今回はファンダメンタルズに基づいた投資判断の考え方について、ポイントをまとめてみました。この内容を理解しておくだけでも、経済ニュースの見方が変わってくると思います。

重要なのは景気自体ではなく、景気に対応する各国の政策が株式市場にどのような影響を与えるか?そして、株式市場の動きが仮想通貨市場にどのように影響を与えるかという順序で、相場を考えてもらえればOKです。景気刺激策に影響を受けるとなれば、ビットコインに違った興味が湧いてくると思います。歴史的な景気刺激策を迎えるタイミングに、資産運用に仮想通貨を取り入れてみてはいかがでしょうか?

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12