ビットコインは、いまだに正体が不明の「ナカモトサトシ」が論文で発表した世界最初の仮想通貨(暗号資産)です。2017年後半から2018年始めにかけて一時的に1BTC=200万円を超えるまで急騰し、投資家の中には1億円以上儲かった「億り人」と呼ばれる成功者が複数出現したことで大きな話題となりました。
その後、中国の仮想通貨取引禁止など世界中の当局の規制絡みで動きがあり、一時期は40万円台を割るという長い低迷期もありましたが、2020年5月8日現在は100万円程度まで回復するなど激しい値動きとなっています。
また、ビットコインはブロックチェーンと言われる技術を使って取引記録を管理していることから、取引の透明性が高く記録の改ざんもしにくいという特徴を持ち合わせています。このブロックチェーン技術を利用することで、従来の銀行決済に代わる新たな決済方法としての期待感も高まっています。
こういった投資と決済の二つの側面から可能性があるビットコインですが、ボラティリティ(値動き幅)の大きさから「ビットコイン投資は危険だ」と敬遠されてしまいがちです。今回は、ビットコイン投資のメリット・デメリットについて、一般的に馴染みのある方も多いFX(外国為替証拠金取引)などと比較しながら解説します。
目次
- ビットコイン運用の種類
1-1.現物取引
1-2.仮想通貨FX(証拠金取引)
1-3.裁定取引(アービトラージ)
1-4.先物取引 - ビットコイン投資のメリット
2-1.1,000円以下の少額から始めることができる
2-2.24時間365日取引が可能(土日祝日関係なし)
2-3.分散投資の対象となる
2-4.強固なネットワークを持つ
2-5.透明性が高い決済
2-6.特定の国の政治・経済状況や国際情勢などに左右されにくい
2-7.供給制限による需給バランスの調整 - ビットコイン投資のデメリット
3-1.ハッキングによる盗難リスクがある
3-2.取引所の倒産リスクがある
3-3.仮想通貨間での分散投資が効きにくい
3-4.伝統的資産に比べて流動性が低く値動きが激しい
3-5.ビットコイン決済はほとんど使われていない
3-6.FXと比較して税金面で不利 - まとめ
1.ビットコイン運用の種類
ビットコインには、為替取引や株取引のように複数の取引手段が存在します。
1-1.現物取引
ビットコインはデータのみの通貨なので厳密に言うと「現物」ではありませんが、通常の買いから取引することは「現物取引」と呼ばれています。買った時の値段より、売った時の値段の方が高ければ、その差額が利益になります。
1-2.仮想通貨FX(証拠金取引)
FX取引とは、ビットコイン現物の取引を行わず、買い/売りの宣言を繰り返すという投資です。売り買いの価格の差額を決済することで差し入れた証拠金が増減していくことになります。現物取引と違い売りからでも取引できることや、レバレッジを掛けられることが特徴です。これらをうまく使いこなせれば、大きな利益に繋がります。
1-3.裁定取引(アービトラージ)
取引所間で生じる価格差を利用して売買し利益を生み出す手法のことです。方法は単純で、安い取引所でビットコインを買い、高い取引所で売るだけです。ただし送金手数料と送金完了までの時間を考慮する必要があるため、必ずしも価格差分が儲かるわけではありません。
また、もう一つ高度な裁定取引として、現物と先物の価格差に着目した取引もあります。
1-4.先物取引
先物取引は、あらかじめ将来の決められた期日に決められた価格での売買を約束する契約のことを言います。つまり、例えば7日後に102万円で1BTCを購入する契約があったとして、その時点で市場価格が105万円になっていたら3万円ぶん安く購入でき、逆に100万円になっていたら2万円ぶん高く購入することになるのです。
この先物取引は売り買い両方から取引に入ることができるため、現物取引のリスクヘッジに使うことができたり、レバレッジを効かせることでより大きな利益を狙いに行くことも可能になったりします。
2.ビットコイン投資のメリット
以下では、ビットコイン投資のメリットについて見ていきましょう。
2-1.1,000円以下の少額から始めることができる
取引所により最低購入単位は異なるものの、ビットコインは1,000円以下からでも投資を行うことが可能です。ビットコインの最小単位は1億分の1BTCで、これは一般に1satoshiと呼ばれています。取引所を介さない相対取引であれば、現在価値で言うと約0.01円という非常に小さな単位から送金や売買が可能になります。
2-2.24時間365日取引が可能(土日祝日関係なし)
ビットコインはFXや株式などと異なり、24時間365日休みなく取引が可能です。これは世界中のユーザー(正確にはノード)がビットコインのシステムを共同で管理運営する仕組みを取っているために実現できるのです。
2-3.分散投資の対象となる
国が価値を担保する円などの通貨や、企業などの発行主体が存在する電子マネーなどとは全く異なり、国家や企業といった発行主体に依存しない新たな”通貨“として価値を持つことから、ビットコインは分散投資対象の一つとして考えることができます。為替と異なり、理論的には特定の国家の動向に従属することがないのが大きな特徴です。
2-4.強固なネットワークを持つ
ビットコインには銀行などのように中央管理者がおらず、世界中に存在するノードがそれぞれ管理するP2Pネットワークの仕組みが取られています。
それぞれのノードがブロックチェーン上のデータを共有しているため、誰かがデータを改ざんしようとしても簡単に発見することができます。また、どれか一つのノードがハッキングなどの攻撃を受けても、ネットワーク全体には影響が及ぶことはありません。こうした仕組みにより、ビットコインは通貨としての価値を担保しており、発行主体の破綻による価値喪失リスクはありません。
2-5.透明性が高い決済
ビットコインはP2Pネットワークをベースとしたブロックチェーンと呼ばれる技術で構築されています。ブロックチェーンでは、取引履歴が一定時間ごとに「ブロック」と呼ばれるデータに記録され、それらが鎖(チェーン)のように連結されていき、誰もが正しい取引履歴を確認することができます。
どのアドレスからどのアドレスに送金されたのか、いくら送金されたのかなど、資金の流れを誰でも追うことができる、いったんチェーンに追加されたブロックを改ざんしようとすれば不整合が生じる仕組みになっています。
また世界中のユーザーにいつでもどこでも送金可能なことから、両替の必要がない決済手段としても注目されています。一方で利便性の高さと匿名性の高さからマネーロンダリングを懸念する声もありますが、本人確認を徹底するなどさまざまな取り決めによって決済手段として普及することが期待されています。
2-6.特定の国の政治・経済状況や国際情勢などに左右されにくい
ビットコインは通貨の機能を持っていますが、法定通貨とは大きな違いがあります。例えば日本円は日本銀行によって発行され、その価値は日本政府によって保証されています。
実感がない方も多いかもしれませんが、日本国が破綻した場合、日本円の価値はほぼゼロになります。破綻とまではいかなくとも、情勢が不安定になることで価値が急落することがあります。外国に目を向ければ先例は複数存在します。
一方でビットコインは発行や保証を行う機関を持たず、特定の国に依存しません。したがって、法定通貨のように特定の国の経済指標と連動しづらく、テクニカルに素直に反応しやすいという特徴があり、チャート分析によるシステム投資に向いているといえます。
2-7.供給制限による需給バランスの調整
ビットコインは発行上限数量が約2,100万枚と決まっており、徐々に需要が増えていくのに対し供給が相対的に少なくなるため、希少性が保全され、価値がある程度維持されやすいと予想されています。発行上限があることを金(ゴールド)になぞらえ、ビットコインはデジタルゴールドと呼ばれることもあります。
3.ビットコイン投資のデメリット
対してビットコイン投資のデメリットについても解説していきます。
3-1.ハッキングによる盗難リスクがある
ビットコインのセキュリティは、ブロックチェーンなどの技術によって支えられているため、改ざんの危険性は一般的に想像されるよりもずっと低いのですが、仮想通貨取引所やその他ウォレットのセキュリティには弱い部分が存在するので注意しましょう。
多くの方が勘違いしているのですが、これまでのハッキング被害の殆どはブロックチェーンからではなく、取引所の仮想通貨の保管体制を狙われています。そのため、盗難リスクを減らすには、コールドウォレットと言われる、外部環境とは繋がっていないオフラインで秘密鍵を管理する対策を厳重に取っている取引所を選ぶことはもちろん、自身でコールドウォレットを利用することも検討する必要があります。
3-2.取引所の倒産リスクがある
世界的にも仮想通貨取引所に対する法整備が進みつつあり、日本では仮想通貨交換業の開始にあたり金融庁の認可が不可欠となりましたが、既存の銀行や証券会社のような金融機関と比べると歴史が浅いぶん、まだ世間の信頼獲得に劣る部分は認められます。
取引所が経営悪化などにより倒産し、事業の引き受け手が現れなければ、預けていたビットコインを失う可能性もあります。
3-3.仮想通貨間での分散投資が効きにくい
FXなどによる為替取引の場合は、各通貨間の値動き相関の違いに着目して、米ドルを売ってユーロを買うなどで分散投資が可能です。しかし現状では、仮想通貨が対法定通貨で下がるときは、ビットコイン(BTC)以外の通貨(アルトコイン)も一斉に下がってしまう傾向が顕著なため、複数の仮想通貨を所持していても分散投資効果は期待できないと言えます。
3-4.伝統的資産に比べて流動性が低く値動きが激しい
為替取引や株式といった主な投資対象に比べると、ビットコインの時価総額はかなり小さいため、大口の投資家が売買に参加すると一気に価格が変動してしまいます。また価格変動幅が一定以上になった場合に取引を強制ストップするサーキットブレイカー制度もないため、ボラティリティは非常に激しいことがネックとなります。
3-5.ビットコイン決済はほとんど使われていない
ビットコインなどの仮想通貨は「お金」としてそのまま使うこともできるのですが、現状ではビットコインを決済に利用できる機会はほとんどなく、現実にはほぼ使えない状態となっています。
これはビットコインの値動きが激しいこと、送金から着金までに時間を要することなど、現状のシステムにおける問題点により採用が進まないことが大きな理由のため、現段階においては実需での買い注文はほぼ期待できないのが実情です。
3-6.FXと比較して税金面で不利
FX取引の場合、利益に対する税金は一律20.315%で、損失が出たとしても3年間繰り越すことができます。株式投資などであっても同様に3年間の繰り越し控除が可能となっています。
一方で仮想通貨の場合は、税金は雑所得として「総合課税」になるので、給与所得や事業所得などと合算して稼げば稼ぐほど税率が上がっていきます。 累進課税の所得税の最高税率は45%で、住民税10%を合わせれば55%と非常に高くなりますし、損失を翌年に繰り越すこともできません。
4.まとめ
ビットコイン市場は為替市場と比較すると圧倒的に小さく、世界全体で見ても保有している方はまだまだ少ないのが現状です。しかし最近では大企業がブロックチェーン技術を使ったシステム構築へ参入を始めており、また大口投資家でも特定の国に依存しない資産として、分散投資にビットコインへと資金を投じている方もいます。
ビットコインをはじめ仮想通貨は今、世界中で議論されるさまざまな規制をクリアする必要に迫られています。その結果として金融商品として地位を確立することができれば、多くの投資家の投資先となることで資産価値が上昇するため、今後の流れが注目されています。
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