【米国株ESG】67年連続増配中のP&Gのサステナブルな取り組みは?組み入れファンドも紹介

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日本人に馴染みの深い海外の消費財ブランドの一つとして、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G、ティッカーシンボル:PG)が挙げられます。P&Gは人びとの生活をより快適なものにする画期的な商品を多数開発しており、サステナビリティの分野でも取り組みを積極化しています。

長期にわたり安定成長を続けており、2023年6月期まで67年連続増配中の「配当王(上場企業全てを対象にし、最低50年にわたり配当を増額している企業)」でもあります。

そこで今回は、P&Gの概要をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組み、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価、業績、株価動向、組み入れファンドを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年7月時点の情報をもとに執筆しています。最新情報はご自身でもご確認の上、ご判断下さい。

目次

  1. 日用消費財トップクラスのブランド力を誇るP&G
  2. P&Gのサステナブルな取り組み
    2-1 Ambition2030とは?
    2-2 環境サステナビリティ向上に向けた取り組み
  3. P&GのESG評価
  4. 66年連続増配中の配当王
  5. P&G株を組み入れるファンド2選
    5-1 モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン
    5-2 フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(年2回決算型)
  6. まとめ

1 日用消費財トップクラスのブランド力を誇るP&G

P&Gはおむつの「パンパース」、洗剤の「アリエール」、芳香剤の「ファブリーズ」、ひげ剃りの「ジレット」といった有力ブランドを多数抱える世界トップクラスの消費財メーカーです。

ロウソク製造業者のウィリアム・プロクター氏と、石鹸製造業者のジェームズ・ギャンブル氏が1837年に立ちあげました。

P&Gが180年超の歴史において築き上げてきた強みの一つが世界的なブランド力です。

世界最大のブランディング専門会社インターブランドが公表したグローバル・ブランド価値評価ランキング「ベスト・グローバル・ブランド2022」において、「パンパース」がFMCG(日用消費財)部門の中でトップの評価を獲得しました。「ジレット」もランキング入りしています。

ベスト・グローバル・ブランド・ランキング(FMCG関連企業のみ抜粋)

ランキング ブランド ブランド価値(百万ドル)
1 パンパース 13,832
2 ロレアルパリ 12,915
3 レゴ 11,846
4 ネスレ 10,921
5 ジレット 10,211
6 コルゲート 10,130
7 ダノン 95,280
8 ケロッグ 8,747
9 ジョンソン・エンド・ジョンソン 6,130

※参照:インターブランド「Best Global Brand Ranking 2022

P&Gは、あらゆる部署で「Consumer is Boss(消費者こそが私たちのボス)」という企業理念を浸透させ、各国特有の市場動向と消費行動を深く理解することで、世界的なブランドを生み出してきました。

以下のように各カテゴリーで有力ブランドを取り揃えています。

  • ベビーケア:パンパースなど
  • ファブリックケア:アリエール、ダウニー、タイドなど
  • フェミニンケア:ウィスパーなど
  • グルーミング:ブラウン、ジレットなど
  • ヘアケア:パンテーン、h&sなど
  • ホームケア:ファブリーズ、ジョイなど
  • オーラルケア:ブラウン オーラルB
  • スキンケア:ジレット、SK-Ⅱ

参照:P&G「Brands


※図はP&G「Company Strategy」より引用

2 P&Gのサステナブルな取り組み

ここからはP&Gのサステナブルな取り組みを見ていきましょう。

2-1 Ambition2030とは?

まず、2018年に環境サステナビリティ目標「Ambition 2030」を発表しました。Ambition2030は、圧倒的優位性を持つブランドの提供を通じ、オペレーション、サプライチェーン、そしてP&Gが事業展開するコミュニティの人びとの生活向上を目指します。

気候、廃棄物、水、自然の4つの注力分野において、家庭、コミュニティ、地球にポジティブインパクトをもたらす取り組みを推進しています。

次項で各分野の目標と進捗を確認します。

2-2 環境サステナビリティ向上に向けた目標と進捗

以下が、Ambition2030を通じた気候、廃棄物、水、自然の4つの分野における目標と進捗になります。

  • 2040年までに温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロに
  • 2030年までにリサイクルもしくは再利用可能なパッケージ100%使用
  • 2030年までに世界18の水ストレス地域で消費量を上回る水を還元
  • 森林破壊ゼロにコミット

以下が4分野の進捗状況です。

  • スコープ1・スコープ2(*)の排出量を2010年比57%削減(目標達成)
  • 消費者向けパッケージの79%をリサイクルもしくは再利用可能なものに
  • 2020年から2025年までに100万本の木を植林中

(*)スコープ1:事業者自らによるCO2の直接排出。スコープ2:他社から供給された電気や熱などを使用して発生する間接排出。

2030年までに世界18の水ストレス地域で消費量を上回る水を還元という目標については、2023年末に進捗を報告する計画です。(参考:P&G「ENVIRONMENT」)

P&Gは上記以外にも、世界的規模でサステナブルな取り組みを推進しています。

例えば、水の分野では「Children’s Safe Drinking Water (CSDW、安全な飲み水を世界中の子どもへ)」イニシアチブを通じ、世界中で安全な飲料水を提供しています。2004年以来、200億リットル超の安全な水を届けてきました。

僅か4グラムの粉末で汚水を飲み水へと浄化できる「P&G簡易浄化剤」も提供しています。10リットルの汚水を僅か30分で浄化できます。P&Gは、安全な飲み水を提供するだけで、病気や死亡するリスクが約50%低下するとしています。

「P&G簡易浄化剤」を使用することで、汚水を口にすることによる病気の感染リスクを抑えられます。それにより、子どもたちは学校に通え、就労機会を増やすことで、家族の生活向上を図れるというポジティブインパクトをもたらしています。

※図はP&G「Children’s Safe Drinking Water」より引用

また近年は、世界各地で自然災害が頻発、激甚化しています。そのような中、P&Gは人道支援の取り組みを積極化しています。

2022年に世界で災害が発生した30以上の地域で、毎日の生活に必要なP&G製の商品を届け、被災者の健康・衛星環境の向上をサポートしました。

生活必需品を提供するP&Gならではの社会課題解決に資するソリューションと言えます。

3 P&GのESG評価

ここからはP&GのESG評価を見ていきましょう。同社の環境サステナビリティの向上に向けた取り組みなどを通じ、様々な賞を受賞しています。

例えば、バロンズ誌の2020年の「最も持続可能な企業100社」に選出されました。フォーチュン誌の2022年版「世界で最も尊敬される企業」にも選定されました。

参照:P&G「RECOGNITIONS & AWARDS

4 P&Gの業績、株価動向

ここからはP&Gの業績や株価動向を見ていきましょう。

過去5年間(2018年と2022年)を比較した業績は、売上高、利益ともに安定して成長しました。生活に密着した商品を提供することで、業績が景気変動に左右されにくいディフェンシブ銘柄の代表格です。

  • 売上高は20%増(668億ドルから802億ドルへ)
  • 希薄化後一株当たり利益(EPS)は58%増(3.67ドルから5.81ドルへ)

収益性(5年平均)も良好な水準を維持しています。

  • 営業利益率は22%
  • 株主資本利益率(ROE)は24%
  • 投下資本利益率(ROIC)は14%

株主還元に積極的です。以下は5年平均の数値になります。

  • 総還元利回りは5.21%
  • 配当性向は87%

※参考:Morningstar「PG

安定した業績を背景に、2023年4月には四半期配当を引き上げています。P&Gは2023年6月期まで67年連続増配中の配当王で、米国の連続増配銘柄の代表格でもあります。

1株当たり配当金(ドル、株式分割に伴う修正済み)

※参考:P&G「NEWS RELEASES」「2022 Form 10-K

株価に目を転じると、5年間の累積トータルリターンは、S&P500およびS&P500金融株指数を上回りました。

5 P&G株を組み入れるファンド2選

ここからはP&Gが組み入れられているファンドを紹介します。

  1. モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)
  2. フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(年2回決算型)

「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」は、R&Iファンド大賞2023で投資信託10年/外国株式コア部門を、「フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(年2回決算型)」は、投資信託/北米株式高配当部門でそれぞれ最優秀ファンド賞を受賞しました。

また両ファンドは、2024年1月から始める新しい小額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」で購入できる投資信託です。

※参考:投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品

5-1 モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン

まずは、三菱UFJ国際投信の「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」です。同ファンドは、高いブランド力、有力な特許、強固な販売網といった、競争優位性を有するプレミアム企業へ厳選投資します。

P&Gに加え、大手たばこ会社フィリップス・モリス・インターナショナル、欧州の日用品大手レキットベンキーザー・グループ、世界的ソフトウェア会社SAP、世界最大級のコンサルティング会社アクセンチュアなどが組み入れ上位銘柄として挙げられます。

※参考:三菱UFJ国際投信「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)

10年間のトータルリターンは、同一カテゴリー(国際株式・グローバル・除く日本)を上回る運用成績を上げています(2023年6月30日時点)。設定来の運用パフォーマンスは+383.4%です。信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より高い水準になります。

販売会社はSBI証券、楽天証券、三菱UFJ銀行、イオン銀行などです。例えば、SBI証券は、同ファンドを「SBIプレミアムチョイス」銘柄に選定しています。「SBIプレミアムチョイス」は、SBI証券が約2,700本ある投資信託の中から優良ファンドを厳選した銘柄です。

「SBIプレミアムチョイス」銘柄のため、「投信マイレージサービス」におけるポイント付与率が、月間平均保有額に対して年率0.15%になります。

※参考:ウェルスアドバイザー「M・Sグローバル・プレミアム株式(H無)」、SBI証券「三菱UFJ-モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなし

5-2 フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(年2回決算型)

次は、フランクリン・テンプルトン・ジャパンの「フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(毎月決算)」です。

同ファンドは、米国の3つの高配当資産(株式等・REIT(不動産投資信託)・MLP(主にエネルギー事業を収益源とする共同投資事業形態))に投資する ファンドです。

P&Gに加え、世界最大級のテクノロジー企業アップル、IT大手オラクル、米最大級の石油パイプラインを有するマゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ、世界最大級の投資ファンド運用会社ブラックストーンなどが組み入れ上位銘柄に挙げられます。

※参考:フランクリン・テンプルトン「フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株ファンド(年2回決算型)

3、5年のトータルリターンは、同一カテゴリー(国際株式・北米)を上回る運用成績を上げていますが、10年間ではアンダーパフォームしています(2023年6月30日時点)。設定来の運用パフォーマンスは+165.23%です。信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より高い水準になります。

販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などです。

※参考:ウェルスアドバイザー「フランクリン・テンプルトン・アメリカ高配当株(年2)

まとめ

P&Gは高いブランド力を武器に安定成長を続けています。67年連続増配中であることから、中長期的にインカムゲインを狙える銘柄でもあります。「Ambition 2030」の下、家庭、コミュニティ、地球環境をより良くする取り組みを推進しています。

同社が経済、社会、環境面にポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
業務窓口
fortuna.rep2@gmail.com