今回は、JR九州のNFTプロジェクトについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 「JR九州」とは
1-1.「JR九州」の概要 - 「株式会社ピー・アール・オー」とは
2-1.「株式会社ピー・アール・オー」の概要
2-2.「株式会社ピー・アール・オー」の事業内容 - 「JR九州のNFTプロジェクト」とは
3-1.「JR九州のNFTプロジェクト」の概要
3-2.「JR九州のNFTプロジェクト」が始まった背景
3-3.「アスターネットワーク(ASTR)」の採用
3-4. 第1弾 販売商品 :「“かもめ”シリーズ」 - 「JR九州のNFTプロジェクト」の特徴
- まとめ
2023年7月19日、「九州旅客鉄道株式会社(JR九州)と「株式会社ピー・アール・オー」は、「NFT(非代替性トークン)」を活用した鉄道業界初のNFT販売サイトを公開しました。
このプロジェクトでは、ブロックチェーン技術を基盤に、「アスターネットワーク(ASTR)」を活用すると発表されました。NFTコンテンツの提供には、独自の販売サイトを開設し運営する予定となってます。
この記事では、新たな一歩として踏み出された鉄道業界初のNFTプロジェクト、JR九州の取り組みを、その概要や特色について深堀して解説していきます。
1.「JR九州」とは
1-1.「JR九州」の概要
「JR九州」は、日本国内にて鉄道事業を展開する企業で、主に九州地方の鉄道の運営と管理を行っています。JR九州の歴史は1987年にさかのぼります。この年に日本国有鉄道(旧・国鉄)が民営化された際に設立され、以来、九州地域の鉄道輸送の発展を促進し、地域経済の活性化に大いに寄与してきました。
2.「株式会社ピー・アール・オー」とは
2-1.「株式会社ピー・アール・オー」の概要
「株式会社ピー・アール・オー」は、ユーザーの視点に立ち、「あったらいいな」を現実にすることで、人々をつなぎ、より便利な生活を実現することを目指しています。その実現に向け、所属するエンジニア一人ひとりが自らの技術力を磨き、チーム全体で課題に取り組んでいるというのが同社の特徴です。
同社の代表取締役社長である大高潤氏は、同社の強みをWebサイト構築、スマートデバイス向けアプリ・サービス・ソリューション提供、メディア事業など、BtoC向けフロントサービスの一貫したサービス提供にあると述べています。これまでに同社が手掛けてきた実績は多岐にわたり、スマートフォン向けの大規模ゲームプラットフォームや、大手飲食店、小売業、アミューズメント企業などのキャンペーンサイト、オウンドメディアサイト、ECサイトの開発を通じて、大量のアクセスに対応できるシステム構築、サイトの快適な動作保持、高いセキュリティシステム構築といったノウハウを蓄積しています。
これらの事業展開と実績により、ピー・アール・オーはその高い技術力を活かして、業務を幅広く展開しており、ますますその規模を拡大しています。
2-2.「株式会社ピー・アール・オー」の事業内容
「株式会社ピー・アール・オー」の主な事業内容は、下記の通りとなっています。
・システムインテグレーション事業
「株式会社ピー・アール・オー」は、ビジネスを展開する企業に対して、全面的なシステム開発のサポートを行っています。BtoBtoC、BtoCのWebサービスやプラットフォームに対して、スマホアプリの開発から、外部システムとの連携、バックエンド開発、そして基盤となるインフラ構築まで、ユーザーが快適に利用できるシステムアーキテクチャの設計と、安全に使用できるセキュリティ設計を含む一貫したサービスを提供しています。その結果、お客様企業のビジネスを強力に支える存在となっています。
・ソリューション事業
同社のソリューション事業部では、時代の最先端テクノロジーである「ブロックチェーン」に早くから注目し、開発力を強化してきました。他社に先駆けて独自の「個人認証システム」の開発など、イノベーションを追求する姿勢が見て取れます。また、企業のクラウドサービスの導入や運用に対する支援も行っています。
・デジタルコンテンツ事業
デジタルコンテンツ事業部では、「楽しみと笑顔をスマートフォンアプリを通して広げる」ことを目指して、「PRO.APP」と名付けられたオリジナルブランドを展開しています。PRO.APPでは、約40種類以上のアプリタイトルをリリースしており、その累計ダウンロード数は1300万回以上に上るなど、多くの人々から支持を受けています。
3.「JR九州のNFTプロジェクト」とは
3-1.「JR九州のNFTプロジェクト」の概要
「JR九州のNFTプロジェクト」は、JR九州と「株式会社ピー・アール・オー」が2023年5月9日に共同発表した、鉄道業界初の取り組みです。このプロジェクトは、「NFT(非代替性トークン)」を活用し、旅行者に対して新たな価値提供と九州での旅の楽しみ方を提案するというものです。「株式会社ピー・アール・オー」は、このプロジェクトにおける技術面の支援を担当しています。
このプロジェクトでは、「アスターネットワーク(ASTR)」を基盤としたブロックチェーンが採用されています。今後は独自の販売サイトを通じてNFTコンテンツを展開する予定で、業界からはその展開に大いに期待が寄せられています。具体的には、「訪れる」、「乗る」、「利用する」というユーザーの行動に対して、「記念」や「証明」の役割を果たすNFTを配布することで、ユーザーとの新たなつながりを築くとともに、九州の魅力を再発見する手助けをします。さらに、所持しているNFTの種類や数に応じて、新たなNFTのプレゼントや特別なサービスを提供するというユーザーへの特典も計画されています。
JR九州は、この「JR九州NFTプロジェクト」を通じて、これまでとは一線を画す新たなユーザー体験を提供し、ユーザーとの新たな関係性を築き上げることを目指しています。
3-2.「JR九州のNFTプロジェクト」が始まった背景
NFTコンテンツは広く認知され、利用が広まっているものの、これまで鉄道業界ではNFTを活用したプロジェクトが実施されてこなかったのが現状です。その中で、JR九州は早期からNFTの可能性に目を向け、その活用方法について積極的に探求してきました。そして、ブロックチェーン技術に長けた「株式会社ピー・アール・オー」との協力体制を築くことで、「JR九州NFTプロジェクト」が生まれ、新たな取り組みをスタートさせました。
このプロジェクトでは、NFTを単にコレクションや取引の対象とするだけでなく、駅や列車、バスといった交通手段、さらには宿泊施設や商業施設などの利用に対して、記念品や証明書としての役割を果たすNFTを提供するという、新しい試みを行っています。さらに、NFTの所持状況(種類や数)に応じて新たなNFTのプレゼントや特別なサービスを提供するという特典も計画されているとのことです。これにより、JR九州はNFTの技術を最大限に活用し、鉄道会社とユーザー間の新たなつながりを生み出し、サービスの可能性を拡大しようとしています。
3-3.「アスターネットワーク(ASTR)」の採用
このプロジェクトでは、ブロックチェーンの基盤技術として「アスターネットワーク(ASTR)」を採用しています。
アスターネットワークとは、「ポルカドット(DOT)」のネットワークを活用し、マルチチェーン(複数のブロックチェーン)を統合することで稼働する、日本初のパブリックブロックチェーンのことを指します。渡辺創太氏がCEOを務める「ステイクテクノロジーズ(Stake Technologies)」によって開発された「アスターネットワーク(ASTR)」は、当初「プラズムネットワーク(Plasm Network)」という名称で2020年5月にメインネットがローンチされ、その後の2021年6月にリブランディングを行い、現在のアスターネットワークへと進化しました。2021年12月には、アスターネットワークが世界で3番目にポルカドットの「パラチェーン」に接続するスロットを獲得し、同月にはポルカドットへの接続も完了しました。これにより、ポルカドットのネットワークを活用して、マルチチェーンを運用することが可能となり、イーサリアムなど他のブロックチェーンとポルカドットを接続するブリッジの役割も果たしています。
日本初のパブリックブロックチェーンであるアスターネットワークは、今回のJR九州のプロジェクトを始めとして、日本国内でのユースケースが急速に増加しています。また、「バイナンス(Binance)」や「コインベース(Coinbase)」など、海外の大手企業からも出資を受けており、その信頼性と利便性が評価されています。
3-4. 第1弾 販売商品 :「“かもめ”シリーズ」
JR九州は独自のNFT販売サイト「JR九州NFT」を2023年7月19日にローンチしました。このサイトは「Google Chrome」、「Apple Safari」、「Microsoft Edge」などの主要なブラウザに対応しており、ユーザーフレンドリーな環境でNFTの取引を楽しむことができます。
まず最初にリリースされるのは、以下の6種類のNFTです。
- 西九州新幹線を象徴するモデル
- 白を基調とした洗練された885系
- シルバーメタリックが印象的な787系
- 「KAMOME EXPRESS」の愛称で親しまれている赤色の485系
- JR九州発足後初となる新型特急783系
- 山陽新幹線岡山-博多間開業後、1976年にエル特急として復活した485系
これらは、それぞれ15〜25秒の動画形式のNFTで、各種類が100個限定となっています。価格は1個あたり3300円です。そして、さらなる特典として、これら6種類全てを購入すると、2022年8月7日に1日だけ運行された特別仕様の新幹線「かもめ」のNFT(16秒)がプレゼントされます。この特別な新幹線「かもめ」のNFTは、その日限定の運行だけでなく、特別なデザインも魅力となっています。
4.「JR九州のNFTプロジェクト」の特徴
日本円での決済が可能
JR九州NFTでは、仮想通貨だけでなく日本円での決済も可能です。これにより、仮想通貨になじみが少ない方でも、手軽にNFTコンテンツを購入することができます。
利用体験を通じたNFTの入手
JR九州NFTプロジェクトは、駅や列車、バスなどの交通手段の利用だけでなく、宿泊施設や商業施設の利用を通じてもNFTを入手できるとのことです。これらのNFTには「記念」や「証明」の意味が含まれており、従来のNFTとは異なる視点から楽しむことが可能となっています。
特典とサービスの享受
JR九州NFTプロジェクトでは、獲得したNFTの種類や数に応じて、新たなNFTのプレゼントや特別なサービスが提供される予定です。これにより、交通機関や宿泊施設などの利用が増えれば増えるほど、さらに魅力的な特典が得られる可能性が高まります。このシステムは、JR九州の利用活性化にも寄与することでしょう。
販売サイトと連携した「ウォレット」を活用
JR九州NFTプロジェクトでは、販売サイトと連動した「ウォレット」が利用できます。これにより、ユーザーは自身が所有するNFTアイテムを手軽に確認や管理が可能となります。
「ウォレット」とは仮想通貨やNFT、その他のデジタル資産を保管するシステムのことを指します。Web3.0の世界で欠かせない存在となっています。このウォレットは、JR九州NFTプロジェクトでは簡単に利用でき、通常のログインの他、スマホにウォレットカードをかざすだけでアクセス可能です。
多様なコラボレーション企画が進行中
JR九州NFTプロジェクトは、さまざまなコラボレーション企画を検討していると発表し、その取り組みは業界から高い注目を集めています。
実際、2023年5月10日から12日に開催された「ブロックチェーンEXPO春」の「CryptoLab/PROブース」では、NFTコンテンツ第1弾の試験配布が実施されました。
今後のNFTコンテンツの販売や配布、そのスケジュールについては、詳細が決まり次第、順次公表される予定です。
5.まとめ
2023年7月19日、JR九州とピー・アール・オーは、鉄道業界初のNFTを活用した販売サイト「JR九州NFT」を開始しました。
第1弾 販売商品 :「“かもめ”シリーズ」 は全て15~25秒の動画形式で、各種類につき100個限定で販売されます。1個の価格は3300円となっています。さらに、全6種類を購入すると、2022年8月7日に1日限り運行された特別仕様の新幹線「かもめ」の16秒動画のNFTが特典として付与されます。この1日限定運行の特別な新幹線「かもめ」のNFTは、その貴重さからコレクターズアイテムとしても価値があるでしょう。
今後は、駅や列車、バスなどの交通関連施設だけでなく、宿泊施設や商業施設の利用によってもNFTを取得できるとしています。そして、これらのNFTを保有することによって、日常生活におけるサービスや特典を享受することが可能になります。
中島 翔
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