アルトコインのトレードにテクニカルは考えない。ビットコインと異なる3つのポイント

Altcoins

仮想通貨で投資を始めた方の中には、マニュアル本などでテクニカルを学習する方は多いと思います。現物株や外国為替のFXでも同様に、最初にテクニカルの基本的な知識を身に着けるよう奨励されているケースが多々あります。

筆者は前職で3メガ系証券会社で外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行っており、世界経済の分析をしながら日々マーケットと対峙していました。

もちろん、投資を行う上で基本知識の学習は大切です。その上で日々のニュースをチェックし、各ニュースがどのように相場に影響するか、ファンダメンタルズ分析の勉強も並行して行うことが、勝率を上げる上で重要となってきます。

ビットコインの時価総額は日本のトヨタの規模感まで拡大しており、流動性も高まっていることから、マーケットとして着実に成長してきています。しかし、注意すべきはアルトコインの取引です。ここではアルトコイン市場の注意点について解説したいと思います。

アルトコインとビットコインの違いは?

1. 流動性に大きな差がある

最初にビットコインとアルトコインの違いについて見ていきたいと思います。
一つ目は「流動性」です。流動性とは取引量を示しており、流動性が低い場合はそれだけ取引されている量が少ないということから参加者が少ないとも言えます。流動性が厚い場合は価格の変動幅は小さくなり、流動性が低い場合は価格の変動幅は大きくなります。

流動性がどのくらい違うのか、説明するために以下の表をご覧ください。こちらはコインマーケットキャップの2020年4月2日時点のデータです。ボリューム(24時間)が流動性を表す数字になります。
CMC
ご覧頂くと分かる通り、1日のボリューム(取引量)が1兆円を超えているのはビットコインとイーサリアム、そしてUSDTと呼ばれるステーブルコインのみです。アルトコインは1桁違うことが理解できるでしょう。

下図はドミナンス(市場占有率)と呼ばれるものです。これは仮想通貨市場の時価総額の中で各通貨が占める割合を示しています。
Dominance
ドミナンスチャートにおいて、ビットコインが常に60%以上を維持しているのがわかります。このようにビットコインは仮想通貨全体におけるマーケットシェアをある程度占めており、それだけ大きい取引量が発生しています。

アルトコインで一番流動性が厚いのがイーサリアムです。時価総額3位のXRPでさえ、ビットコインの20分の1との出来高となっています。時々アルトコインが数十パーセント高騰することがありますが、ビットコインを取引している資金の一部が流れ込むだけでも相当の影響力を及ぼすことになるでしょう。

トレーダーが注意すべきはこうした流動性であり「取引量」です。トレード1回あたりのロットをアルトコインの流動性に合わせたサイズにしなければ、大きな価格変動リスクを負うことになります。

流動性が低い仮想通貨のチャートは、よくヒゲをつけることがあります。下図のようにちょっとした資金のインフローで大きく上昇し、すぐに元に戻るという動きです。
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この通貨は50%近く急騰しては、その度に全部戻しています。このように流動性が薄い通貨は価格が跳ね易くなります。

「流動性によって取引サイズを調整し、リスクを調整すること」

アルトコインをトレードする上で、これがとても重要となります。

2. テクニカル分析が機能しない

ここが一番お伝えしたいことであり、トレード初心者が最も陥りやすい失敗の要因です。トレード初心者は、マニュアル本で「RSIが70以上は買われ過ぎだから上昇しにくくなる」とか「ストキャスティクスが売られ過ぎの位置だからここからは下落しにくい」といった見方を読んだことがあるでしょう。

ではそれらテクニカルの常識をアルトコインにあてはめて考えてトレードすると本当に勝てるのか?

結論は「十中八九、勝てません。」

これは下記のチャートを見るとわかるでしょう。
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青色の丸印をご覧ください。インジケーターはRSIを利用しています。チャートが急に上昇し5%強の上昇でスタートしました。

このときRSIはすでに70の「買われ過ぎライン」を突破しており、マニュアルではここからロングポジションを取ることは難しいと指導されます。むしろ、70以下に落ち着くことを想定して「売り」のタイミングと見ることもできます。しかしそれは大間違いです。

実際に、その後20%以上の上昇を見せており、もしも青色の丸印でショートエントリーしていた場合、相当な損失を被っていたことでしょう。当然、より流動性が厚いビットコインでもこうした現象は起こるものです。しかし、時価総額の低いアルトコインは、1日で50%近く上下することもあります。流動性が薄い仮想通貨でテクニカルに頼ると危ないことが理解できると思います。

次の失敗例をご覧ください。
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こちらはストキャスティクスというインジケーターを表示しています。ストキャスティクスは知名度のあるインジケーターであるため、聞いたことのある方も多いでしょう。

上図チャートの黄色の丸印をご覧ください。価格が3%強上昇した段階で、ストキャスティクスでは「買われ過ぎ」の水準まで到達しています。しかし、価格はさらに3%以上の上昇を見せており、黄色の丸印の段階で「売り」を入れていたら、負けていたことは想像できると思います。

仮に2つのインジケーターを組み合わせて検討していたとしたら、損失を免れることが出来たでしょうか?見てみましょう。
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上図のチャートは先ほどの「ストキャスティクス」と「RSI」を組み合わせて表示しています。黄色の丸印が大きく上昇したタイミングです。既にRSIとストキャスティクス共に「買われ過ぎ」の位置まで到達しています。しかし、「買われ過ぎ」から「ニュートラル」付近まで下がると予想してショートポジションを取っても、かなり大きな損失を被ることは明らかです。

3. 投資家の種類が異なる

次に大事なポイントは、「ビットコインとアルトコインでは投資家の種類の割合が異なる」ということです。ビットコインは2018年以降、ヘッジファンドや機関投資家の参入によって大口サイズの取引が見受けられるようになりました。そのため、ビットコインは特にOTC取引という取引所外の相対取引が増加しており、機関投資家は手口を察知されないように業者間で取引する傾向があります。

一方でアルトコインは取引所で売買されることがほとんどです。そして、取引所を利する投資家は主に個人投資家です。

簡潔に言うと、機関投資家と個人投資家は「取引の手法」が異なります。

機関投資家はロングショート両方使い分けています。ショートというのは先物取引等で下落方向へポジションを取るために「売り」から入るトレード戦略のことです。ショートポジションを取ることで上昇圧力にブレーキがかかるため、一方向への過度な変動が起きにくいと言えます。

一方で個人投資家が取引所で取引しているアルトコインは「売り」が取れないことが多いのです。下落方向にポジションが取れない市場環境でコインが急上昇を始めると、個人投資家が連鎖的に「買い」を入れ、「ムーン(月へ)!」と叫んでは過度な暴投を作り出します。

仮想通貨は新興市場なので、アルトコインの先物取引や信用取引市場まで整備されていないのが現状です。

アルトコインを取引する時に大事なこと

最後にアルトコインを取引する場合において大切なことをお伝えしたいと思います。

まず、アルトコインはテクニカルが通用しないと考えて、「動き始めたらシンプルについていく」ことが得策でしょう。特に個人投資家が多いマーケットのため、どこで個人投資家が「買い」を入れているのか、チャートから見極めることが重要です。

個人投資家が「どこでギブアップするのか」、「損切りラインはどこか」、そして「どの水準を超えるとさらに上昇するのか」というポイントを抑えておくことが大切です。

市場参加者のポジショニング分析は必要ですが、インジケーターを利用したテクニカル分析は必要ないと言えます。テクニカル分析をきっちり行っても特に勝率が上がる訳ではないという点を意識してトレードすることが肝心です。

特に草コインと呼ばれる時価総額の低いアルトコインを売買する場合は、ポジショニング分析さえも機能しません。どちらかと言えばファンダメンタルズ、むしろ運による要素が大きいと言えます。

流動性がとても薄い場合は、早めにロングポジションを取って保有しておき、利益確定の指値注文を出して放置しておく方が効率的だと思います。

アルトコインは値動きが大きいため、一攫千金を狙う個人投資家も多いと思います。しかし、一言でアルトコインと言っても、リップルやイーサリアム、ライトコインなど、メジャーなアルトコインから草コインまで様々な種類があり、それぞれ流動性が全く異なります。

宝くじ感覚で保有すべきものなのか、きっちりとポジション分析をすべきものなのか、自分が取引しようとしている仮想通貨がどの種類なのか、しっかりと見極めてトレードするようにしましょう。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 【保有資格】証券アナリスト