欧州連合(EU)加盟国からなる閣僚理事会と欧州議会は3月4日、包装および包装廃棄物に関する規制案について暫定的な政治合意に達した(*1)。EU域内の包装廃棄物の増加に取り組み、サーキュラーエコノミー(循環経済)を促進する。
包装の製造と包装廃棄物管理は、経済的に複雑かつ重要なセクターであり、EUにおける総売上高は3,700億ユーロ(約60兆円)に達する。そのため、同セクターは重要な役割を担っており、EUの成長戦略である欧州グリーン・ディールに沿って、欧州をクリーンで持続可能な循環型経済へ転換させる可能性を秘めている。
同案は包装の全ライフサイクルを念頭に置く。全ての包装がリサイクル可能であり、懸念物質の存在を最小限に抑えることを要求することで、包装が安全でサステナブルであることを保証するための要件を定めている。消費者情報を改善するため、ラベル表示の要件も定めた。ただし零細事業者には適用しない。
新規制案は、青果物、食品・飲料、調味料、ソース、宿泊施設の小型化粧品・トイレタリー製品で使用される使い捨てプラスチック包装、超軽量プラスチック袋を含む、特定の包装形態に対する制限を導入する。
永遠の化学物質とも呼ばれる、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFASs)を一定基準値以上含む食品接触包装材も市場に出回るのを制限することで、包装材中の物質に関する要件を強化する。
また、2030年までの拘束力のある新たな再利用目標を定め、事業者に再利用か詰め替え可能な容器を用いるよう義務付ける。ただし、目標は事業者が使用する包装の種類によって異なり、ワイン、蒸留酒、日本酒、牛乳、危険物や大型機器に使用される包装、段ボール包装などは規制対象から外れた。
テイクアウト品の容器に関しては、ワインと牛乳を除き、30年までに10%を再利用に適した包装形態で提供しなければならない。
新規制案では、集合包装、輸送用包装、電子商取引用包装の最大空スペース比率を50%に設定した。製造業者と輸入業者に対し、包装の重量と体積を最小化することを保証するよう義務付ける。
加盟国は29年までに、使い捨てペットボトルと金属製飲料容器の90%以上を分別回収する必要がある。この目標を達成するために、使い捨てボトルで飲み物を買う際にデポジットを支払う制度であるデポジット・リターン・スキーム(DRS)の導入も求めている。
同規制案は理事会および議会の最終承認を経て、2030年から規制を適用する。
【参照記事】*1 欧州理事会「Packaging: Council and Parliament strike a deal to make packaging more sustainable and reduce packaging waste in the EU」

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