ウォルマート、プラから紙製包装材へ切り替え。トタルは再生プラ拡大。国際ルールは24年末に策定へ

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米小売り大手ウォルマート(ティッカーシンボル:WMT)は6月1日、オンライン注文に伴うプラスチック製梱包材を紙製へ切り替えるなど、一連のサステナブルな取り組みを発表した(*1)。プラ汚染を巡り2024年末までに国際ルールが策定される見通しとなる中、仏エネルギー大手トタル・エナジーズ(TTE)は買収を通じて再生プラの供給拡大を図る。

ウォルマートは、リアル(店舗)とネットを融合させるオムニチャネル企業を目指しており、よりサステナブルな手法で事業および物流・配送ネットワークの拡大を推進している状況だ。

直近の2023年2~4月期オンライン注文による売上高が前年同期比27%増加するなど、ネット分野が好調を維持する。一方で、配送に伴う廃棄物や温室効果ガス(GHG)の抑制といった環境との両立が課題となっている。

そこで今回、オンライン注文品の包装材をほぼ全量プラスチック製からリサイクル可能な紙製に切り替える。これにより、本会計年度末(2024年1月期末)までに、プラスチック袋6,500枚、およびプラスチック2,000トン超を削減できる見込みだ。

オンライン注文後の店舗ピックアップに関しては、使い捨てプラスチック袋の使用を拒否することを選択できるサステナブルチョイス(持続可能な選択様式)の取り組みも推進する。今年末までに全米で導入する計画である。

フルフィルメントセンター(物流・配送拠点)の半数ほどでは、段ボール箱のサイズ調整が可能な設備を導入する。この設備は、個別の商品に応じたカスタムパッケージを作成でき、緩衝材を60%、オーバーサイズに伴う紙梱包材の廃棄量を26%削減する。

ラストワンマイルについては、人工知能(AI)を活用することで配送ルートを効率化し、走行距離と梱包箱数の削減を図る。遠方のフルフィルメントセンターではなく、最寄りの店舗から顧客宅へ商品を届けるほか、複数の注文を取りまとめて一度に配送する。

ウォルマートによると、米国人の9割が、同社の合計5,300超の店舗およびサムズ・クラブから10マイル(約16キロメートル)圏内に住んでいるという。これらの店舗をフルフィルメントセンターとして活用することで、店舗機能を高め、競合他社と差別化されたソリューションを提供していく方針だ。

さらに、配送車には電気自動車(EV)のバンを使用し、排出量を抑えることで、40年の排出ゼロの達成を目指す。

ウォルマート株は年初来で約8%高と堅調な値動きとなっている(23年6月13日時点)(*2)。高インフレ下において、エブリデイ・ロープライス(EDLP)およびエブリデイ・ローコスト(EDLC)のビジネスモデルが評価されている模様だ。

プラスチックは様々な用途に利用される利便性を有する一方、石油からの生産および大量廃棄によって地球温暖化や海洋汚染を引き起こしている。環境や自然だけでなく、有害物質を吸着したマイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチック類)による人体への影響も懸念されている。

プラスチック問題が世界的な課題の一つとなる中、各国が規制を強化する流れにある。国連環境計画(UNEP)は国際ルールの策定に着手しており、24年末までに条約をまとめる計画だ。

各産業プレーヤーもプラ対策を進める。トタル・エナジーズは23年5月上旬、廃プラ再生を手掛けるスペインのイベール・レジナスを買収した(*3)。買収を通じて欧州で再生プラの生産・販売拡大を進め、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に貢献する。

トタルは再生エネルギー分野で世界トップ5入りを目指す。プラスチック分野では、30年までにプラスチック生産に占める循環型ポリマーの比率を30%まで引き上げる計画だ。仏子会社のシノバは、22年末時点で4万5千トンの再生ポリプロピレン(プラスチックの一種)の年産能力を誇る。

トタルは廃棄プラを無くす国際アライアンス「 Alliance to End Plastic Waste(AEPW)」の創立メンバーでもある。同アライアンスは、90社超の企業やプロジェクトパートナーなどが共同し、環境からプラスチック廃棄物を撲滅する活動に取り組む。

プラスチック規制を巡っては、これまで国によって対応が異なってきた。国際ルールが策定され、企業が統一基準の下で廃プラ対策を積極的にアピールすることで、環境意識の高い顧客からより一層選好されそうだ。

【参照記事】*1 ウォルマート「Walmart Doubles Down on Reducing Waste To Create More Sustainable Omnichannel Fulfillment Network
【参照記事】*2 Yahoo Finance「Walmart Inc.
【参照記事】*3 トタル「Plastic Recycling: TotalEnergies Expands Activities in Europe by Acquiring Iber Resinas

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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