クリーン燃料スタートアップの英WASEは3月27日、850万ポンド(約16億円)を調達したと発表した(*1)。同社は調達した資金を元手に、数百ポンド規模のプロジェクトを実施し、廃棄物からのエネルギー回収(Waste to Energy)事業の拡大を図る。
今回の投資ラウンドは、独ベンチャーキャピタルのエクスタンティア・キャピタルが主導した。その他、日立製作所のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である日立ベンチャーズ、フランス電力大手エンジーのCVCであるエンジー・ニュー・ベンチャーズなども参加した。
この投資は、WASEのスケールアップ戦略を次の段階へと推し進め、同社独自の電気メタン生成リアクター(EMR)技術を顧客に提供する上で極めて重要である。
WASEは2017年に英国ブリストルで設立され、廃棄物を再生可能エネルギーに変える技術を有するクリーン燃料スタートアップだ。同社のEMR技術は、嫌気性消化(AD、#1)プラント内のバイオマスや廃水中の有機物から生成されるバイオガスの量を最大化する。
投資家はWASEの独自技術の多用途性に注目している。廃水中の有機物からバイオガスを最大限まで回収することから、ADプラントで最高の消化効率を得られるようにすることまで、様々な方法がある。
WASEの装置は、従来のADプラントと比較して、バイオガス発生量を最大10倍の速さで30%増加させる。また、同技術を活用することで、バイオガスのメタン含有量を80%以上に増加させる。従来のADではメタン含有量は50~60%が一般的であった。
WASEのプラグアンドプレイ(繋げばすぐ使える)システムは、既存のインフラに適合し、現在利用可能なものより50〜70%小型化されている。モジュラーシステムはカスタマイズが可能なため、企業の現場での導入が非常に容易になり、その結果、長期的にはエネルギー生産量が増える一方、コストを削減できる。
WASEの創業者兼最高経営責任者(CEO)を務めるトーマス・ファッジ氏は「我々は、関係するあらゆるプレーヤーにとって経済的・環境的なベネフィットを最大化する廃棄物からのエネルギー回収の未来を見ている。バイオガス市場のリーダーとなることで、脱炭素社会への移行において主要な役割を果たすことを目指す」と述べた(*1)。
(#1)AD…バイオマスが分解され、微生物によってバイオガス(メタン、二酸化炭素、および微量の他のガスの混合物)に変換される再生可能エネルギー生産のための確立されたプロセス。
【参照記事】*1 WASE「WASE secures over £8.5M to scale waste-to-energy technology」

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