英国のキア・スターマー首相は11月12日、温室効果ガス(GHG)排出量を2035年までに1990年比で81%削減することを約束した新たな気候目標を発表した(*1)。21年にボリス・ジョンソン政権時が策定した78%削減目標からさらにペースを加速させる計画だ。
新たな脱炭素化目標は、アゼルバイジャンで開催中の第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)で発表された。地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定に基づく英国の新たな排出削減目標(NDC)となる。
NDCは、各国がパリ協定に基づいて提出する国別の気候行動計画であり、5年ごとに更新し、より高い目標を掲げていくことが求められている。英国の現在のNDCは、30年までに排出量を68%削減する計画である。
新たな目標は、英国政府の気候変動諮問機関である気候変動委員会(CCC)の提言とも一致している。CCCは、気温上昇を1.5℃に抑えるという世界的な目標に貢献するために、35年までに排出量を81%削減するという目標を採択するよう政府に勧告していた。
スターマー首相は「未来のクリーンエネルギーの仕事は競争の真っ只中にある。私は中堅でいるつもりはない。先手を取りたいのだ」と述べた(*1)。
同首相は24年7月の選挙以来、英国が世界的な気候変動対策のリーダーとしての役割を回復するために、政府が実施した一連の取り組みも強調した。具体的には、陸上風力発電の禁止を撤回し 、北海での新規の石油・ガス採掘ライセンスの発行を停止している。
英国最後の石炭火力発電所を閉鎖するとともに、エネルギー安全保障の実現に向けて新たな公営クリーンエネルギー企業グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)も発足した。
さらに、グリーン産業に投資し、良質な雇用を創出すべく、73億ポンド(約1兆4,000億円)規模の新たな基金ナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)を立ち上げている。10月には、イングランド北西部と北東部の2か所の炭素回収・貯留(CCS)クラスターに、25年間で最大217億ポンドを拠出すると発表した。
【参照記事】*1 GOV.UK「PM remarks at COP29: 12 November 2024」
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