EU(欧州連合)がFATF(金融活動作業部会)によるトラベルルールへの対応を強化するための法案を、7月20日に公開した。EU圏内で暗号資産取引事業を行うには、より一層の体制強化が必要となる。
トラベルルールは、国際的な規制団体であるFATFが定めるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)のためのルールだ。各国の暗号資産関連事業者(VASP)を対象に発布され、暗号資産の送金時に送り手と受け取り手の個人情報をそれぞれ記録するよう求めている。
EUにおける行政実務の実行機関であるEC(欧州委員会)から公開された今回の法案では、VASP間の1,000ユーロを超える暗号資産送金時に、送り手と受け取り手の個人情報を記録しておく必要があるとされた。
具体的な個人情報としては、氏名や住所、生年月日、口座IDなどが該当する。また、暗号資産取引所だけでなくウォレットも対象範囲になるようだ。
FATFは、トラベルルールを含むガイダンスを2月末に修正している。その際には、ステーブルコインに対する内容が加えられたほか、資金力の不足する中規模企業がトラベルルールに対応するための具体的な方法が提案されていた。
トラベルルールの対応には膨大なコストが発生することから、特に中小の交換業者を中心に対応が遅れており、世界的にも思うように適用が進んでいないのが現状だ。6月末に公開されたトラベルルールの適用状況調査では、世界128ヶ国のうち、遵守できていると評価されたのは半分以下の58ヶ国にとどまっている。
日本では、2022年4月を目処に対応を行うようFATFから要請を受けており、金融庁の認定自主規制団体である一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)がこれを発表していた。
今回のEUによる発表と同じタイミングで、EUからの脱退したばかりのイギリスからも、財務省がトラベルルールへの対応方針を記した協議書を公開している。本文書をもとに10月14日まで協議が行われ、2022年春の立法化を目指しているという。
【参照記事】Beating Financial Crime
株式会社techtec リサーチチーム
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