TPGとGIC、1.1兆円で建物エネルギー管理Techem買収へ。建築分野の脱炭素化とデジタル化推進

気候変動対策に特化したファンドであるTPGライズ・クライメートとシンガポールの政府系ファンドGICは10月1日、独建物エネルギー管理Techemを買収することで合意したと発表した(*1)。同社の買収を通じて、建築分野の脱炭素化とデジタル化を推進する。

過半数株主である欧州の大手投資ファンドのパートナーズ・グループより取得する。同社は、顧客および共同投資家であるCDPQとオンタリオ州教職員年金基金の代理として事業を展開するプライベートマーケット業界最大手となる。

総額約67億ユーロ(約1兆1,000億円)で買収し、規制当局の承認などを踏まえ、2025年上半期に手続きが完了する予定である。

Techemは1952年に設立され、エネルギー管理や資源保全、健康的な生活、不動産のプロセス効率化などに関連したサービスを18か国1,300万戸以上に提供している。

家庭でのエネルギー消費の無線式遠隔検知における市場リーダーとして、業界最大規模のデジタルエネルギーサービスプラットフォーム「ワン・デジタル・プラットフォーム」を構築した。同プラットフォームは、Techemのサービスを完全にデジタル化し、建物のエネルギー効率を高め、顧客体験を向上させ、これまでに6,200万個以上のデジタル計測装置を設置している。

最新のマルチセンサー機器、遠隔検査機能付き無線式煙探知機、電気自動車(EV)用充電インフラ、不動産の飲料水の水質改善などに関連するサービスは、住宅および商業用不動産業界向けのソリューションを補完するものとなる。

Techemのサービスは、依然として世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約40%を占めている不動産業界の長期にわたる脱炭素化を促進するのに貢献する。過去数年にわたる力強い成長の結果、売上高10億ユーロを達成した。

同社はTPGとGICという新たなパートナーとともにワン・デジタル・プラットフォームをさらに拡大し、デジタル化の力を活用して、ビル業界におけるエネルギー効率を大幅に向上させていく方針だ。業務プロセスを最適化し、居住者の生活の快適性向上も図る。

さらに、Techemは自社の野心的なサステナビリティ目標を達成するために、TPGの効率的な脱炭素化に関する専門知識を活用する。8月には、モーニングスター・サステナリティクスによるESGリスク格付けで、9.6(リスクは極小)の評価を受けた。16,000社以上のグローバル企業を対象とした評価で上位3%に入ったことになる。

TPGライズ・クライメートのマネージングパートナーを務めるエド・ベックリー氏は「Techemの技術、透明性の高い統計、テナント、管理者、資産所有者のための合理化されたソリューションは、欧州全域の不動産資産のコスト削減と環境への影響改善に不可欠なソリューションだ。効率性を高め、全体的な需要をより適切に管理することで、建物環境におけるエネルギー消費を大幅に削減できる可能性がある」と述べた(*1)。

TPGライズ・クライメートは、世界最大級のプライベート・エクイティ・ファンドの1つであり、地球規模の気候変動対策に特化した投資を行っている。Techemは同ファンドにとって過去最大の取引となる。GICは少数株主として数多くの投資を手掛けている。

【参照記事】*1 Techem「Techem to be acquired for total consideration of €6.7 billion with investment from TPG and GIC

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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