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Solarpunk DAOとは?
「Solarpunk DAO」は、気候変動に取り組むプロジェクトを支援するために作られた$Earthというトークンを発行するプロジェクトです。$Earthは現在の金融システムが気候/環境危機に対処し、2050年までにネットゼロを実現するためには、今後30年間で150兆ドルを動員する準備ができていないという現実から生まれました。
$Earthは環境への解決策、エコシステムサービス、ソーラーパンクの価値に基づくトークンとなっています。ソーラーパンクとは、ソーラーエネルギーや再生可能エネルギーなどのエコロジカルな技術が進歩した未来社会のビジョンのことです。
とはいえ、この説明だけだと理解が難しいと思うので、もう少し詳しく解説していきます。
まず全体像を簡単に説明すると、$Earthは環境問題に対処するプロジェクトへ資金を提供します。その資金の提供量に応じて$Earthがミントされ、提供したプロジェクトの収益による配当によっても追加ミントされていきます。よって、支援する環境問題に対処するプロジェクトの価値によって裏付けられたトークンとも言えます。
特に注力しているのは以下の5つの分野で、現在は5つのプロジェクトにそれぞれ支援をしています。
ではここからより細かい仕組みを説明していきます。
エコノミクス全体像
こちらがエコノミクスの全体像です。
まず注目すべきはNODEの存在です。BitcoinやEthereum等のブロックチェーンプロジェクトではその運営においてNODE(ノード)が存在しますが、それと同じ意味です。ただ、$EARTHはブロックチェーンを運営しているわけではないので、既存ノードと同じ作業をしているわけではなく、プロトコル運営における監視役や必要な役割という意味でノードという言葉を利用しています。
$EARTHのミントはノードにしかできません。ノードがステーブルコインの$DAIをプロトコルに預け入れることで、その価格に応じた$EARTHがミントされノードに転送されます。
預け入れられた$DAIはトレジャリーに転送され、80%が気候変動に対処するプロジェクトへの金銭的な支援に、20%が流動性確保のために利用(流動性プールへ転送)されます。基本的には貸付という形なので、気候変動に対処するプロジェクトへ貸し出された$DAIは元本と利息という形でトレジャリーに返却されていきます。返却された元本部分は別のプロジェクトへの貸付に利用され、利息部分はリワードプールに転送され、$EARTHホルダーに分配されます。
さらに、Harvest Tresuryが$EARTHの価値を毀損しない程度に新規の$EARTHを発行し、ステーキング報酬や流動性報酬に利用されます。
よって、$EARTHの価値は最低限は気候変動プロジェクトの活動に支えられながらも、そこに完全に紐づいているわけではなく、エコシステムの拡張と共に余剰価値が紐付けられているというわけです。
この辺りの新規トークン発行の計算ロジックは複雑でしたので、詳しく理解したい方はこちらをご覧ください。
全体像を見てもらえればわかる通り、このプロセスはノードから始まっています。ノードは$EARTHトケノミクスの中核であり、支援するプロジェクトの決定も行い、資金の使い道も管理します。
現在は316人のノードが存在し、トークンホルダーは1210名でした。ちなみにトークンが発行されたのは2024年の1月で、チェーンはPolygonを利用しています。
$EARTHエコシステムのノードになるには以下の3ステップが必要です。
- GoogleフォームとKYC認証
コンプライアンスと信頼性を確保するために、Google フォームに記入し、名前、ID、ライブ写真などの基本情報を提供して KYC プロセスを完了します。 - オンボーディングコール
既存の Solarpunk DAO メンバーとのオンボーディング コールに参加して、ノードの責任と $EARTH の仕組みを明確に理解します。 - ミントソウルバウンドトークン(SBT)
上記の手順を完了すると、ウォレットは Soul Bound Token を発行するためのホワイトリストに登録され、正式にノードとして指定されます。
展望と可能性は?
さて、ここまで$EARTHの概要について触れてきました。
将来的には、$EARTHの構築に継続的に価値を付加している人々に配分されるガバナンストークン $SLRPNK のローンチも予定されているそうで、より分散型での運営が想定されています。より大きな構想に関しては、英語にはなりますが、ReFi DAOのインタビューで語っていたのでぜひこちらもご覧ください。
筆者としても非常に興味深いプロジェクトだと感じました。
$EARTH発行理由に、現在世界的に環境問題に対して支援する動きが少ないのは国家は国境に縛られており、長期問題に対応するインセンティブが少ないからという説明がありました。また、気候変動対策を世界規模で拡大する上での最大の障害は資本だと考えているとのことでした。よって、ブロックチェーンを活用して国境を越え、世界中の共感した人から資金を集め、プロジェクトを支援することでリターンも得られる仕組みを構築しています。$EARTHは最低限の価値を保証しながら、そこに共感した人が集まり、$EARTHエコノミクスが構築されればされるほど実用性が高まり、$EARTHの価値が上がるという構想を掲げています。
これはRWAトークンとユーティリティトークンの良い所どりを目指しています。RWAトークンは現実世界の資産に価値が紐づいている分、価格は安定しますがアップサイドの上限が明確に決まっています。現実世界の資産の価値が上がれば高騰しますが、そこまで変化するわけではありません。一方のユーティリティトークンは実用性やトレンドに応じて価格が乱高下します。ミームトークンは代表的な事例ですが、コミュニティによって価格が高騰する場合があります。
$EARTHはRWAの最低限の価値に支えられながら、プロジェクト全体の思想や価値観を広め、ソーラーパンクエコシステムを構築していくことを目指しており、非常に挑戦的な取り組みだと感じます。例えば、支援していた気候変動プロジェクトが頓挫した際の対応など、対処すべき懸念はあるかと思いますが、ブロックチェーンを活用して本気で気候変動を止めるために取り組みには注目していきたいと思います。
mitsui
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