ESGデータ管理スタートアップのAtlas Metricsは9月30日、シリーズA(資金調達ラウンド)で1,220万ユーロ(約19億5,000万円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、欧州全域でESG(環境・社会・ガバナンス)コンプライスの簡素化に向けたソリューションの拡大を図る。
今回の投資ラウンドは英MMCベンチャーズが主導し、既存投資家のチェリーベンチャーズやb2ベンチャーズ、レッドストーンなども参加した。Atlasは、チームへの投資、新規市場への進出、ESGコンプライアンスおよびパフォーマンス管理サービスの開発を継続していく方針だ。
AtlasはESGコンプライアンスと持続可能性のパフォーマンス管理のためのオールインワンプラットフォームを提供している。自動化、人工知能(AI)、安全なデータ共有、高度な分析機能により、同社のB2Bプラットフォームはあらゆる組織が自らの影響力を測定し、発信することを容易にする。
Atlasが参入している包括的なパフォーマンス管理市場は880億ユーロ規模となる。同社は中規模企業や金融機関が規制要件を満たすことができるようサポートする。企業持続可能性報告指令(CSRD)および関連する全ての規制上の義務を自動化および合理化することで、コストと法的リスクの両方を削減することに重点的に取り組んでいる。
さらに、組織内および組織間のデータ転送と集約、モジュール式ソフトウェアアーキテクチャ、洗練されたエンドツーエンドのユーザーフローを中心に革新を続けてきた。
Atlasの創設者兼CEOであるウラジミール・ニコラック氏は「あらゆる業界のあらゆる企業にとって、ESG報告とコンプライアンスは業務上必要不可欠な要素となっている。しかし、管理にはコストがかかり、リスクも伴う。今回の資金調達により、弊社の製品提供を強化することで、ESGコンプライアンスを簡素化するだけでなく、持続可能性データを競争優位性へと転換することが可能になるだろう」と述べた(*1)。
非財務的情報へのアクセスは、ますます厳しくなる規制への対応、主要なビジネス価値を向上させるドバイバーとなり、全てのステークホルダーと環境に対する透明性の確保という観点から極めて重要である。
EUでは規制圧力が急速に高まっている。2025年までに62,500社超が、ダブル・マテリアリティ(#1)評価、二酸化炭素(CO2)排出量の算出、監査に対応可能なCSRD報告書の作成など、厳格な年次要件を満たさなければならない。
ドイツの企業で年間収益が1億ユーロの企業の場合、手作業によるコンプライアンス対応に年間25万ユーロのコストがかかり、コンプライアンス違反の場合は500万ユーロ(売上高の5%)の罰金が科せられると推定される。
競争の激しい市場でAtlas頭角を現している状況だ。欧州最大級の投資会社であるKfWキャピタルは、100以上のファンドと1,300社以上のポートフォリオ企業を追跡するプラットフォームとしてAtlasを選んだ。
ドイツの協同組合ネットワークにおけるデジタルソリューションの主要プロバイダーであるDG Nexolutionとの提携により、最大700の銀行とその取引先企業がAtlasのプラットフォームを利用できることになる。
PwCベルギーやTKムーアなどの有力コンサルティング会社も、持続可能性サービスと並行してAtlasへのアクセスを提供し、顧客が手作業で行っている作業の自動化を支援している。
(#1)ダブル・マテリアリティ…環境・社会が企業に与える財務的な影響(財務的マテリアリティ)と、企業活動が環境・社会に与える影響(環境・社会マテリアリティ)という2つの側面から重要性を検討すべきとする考え方。
【参照記事】*1 Atlas Metrics「Atlas Metrics raises €12.2M Series A funding to make ESG compliance effortless across Europe」
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