米ドルとペッグする仮想通貨Tether(以下、テザー)が10月15日、基準となっていた1米ドルから乖離し下落した。テザー価格下落に伴い、ビットコインの価格は約75万円程度まで一時急騰したが、執筆時点では反落している。
テザーは、米ドルを資産の裏付けとする、法定通貨担保型の「ステーブルコイン」と呼ばれる仮想通貨だ。テザーは、Tether社に米ドルが入金されることで同価値のテザーが発行される仕組みとなっている。また、入金された米ドルはTether社にプールされており、テザーを入金すると同価値分の米ドルの引き出しが可能だ。テザー流通量とTether社がプールする米ドルは同量・同価値であるため、テザーと米ドルは等価値となる。
法定通貨と同等の価値を維持する仮想通貨のメリットは、ユーザーにとっては送金手数料、送金スピードが銀行送金と比較して優れていることや保管もウォレットのみで可能というメリットがあると同時に、取引所にとっても法定通貨で適用される規制の対象外となることにある。こうしたメリットから、海外の仮想通貨取引所では仮想通貨をテザー建てで購入することが一般的だ。
今回起きた価格の急騰急落は、ブルームバーグが10月1日、Tether社の主要な提携先とされるNoble Bank Internationalが債務超過により身売りを検討しているとする報道に遡る。Bitfinexは10月7日、Mediumを通じてNoble Bank Internationalの債務超過が同取引所に及ぼす影響はないことを公表したが、相次ぐ債務超過の疑惑や時期を同じくしてBitfinexが新サービス開始に伴う法定通貨の入出金停止を発表したことなどを受け、市場は疑惑が後を絶たないテザーを嫌気したと考えられる。
テザーでは、実際にはテザーの価値を裏付ける米ドルが用意されておらず、担保のない状況で発行したテザーでビットコインを大量購入し価格を吊り上げているのではないかという疑惑が度々浮上している。テザーのようなステーブルコインでは、発行通貨と同等の預り金を証明することが不可欠だ。最近では、米国で州の規制当局が監視を行うステーブルコインや国内でもGMOインターネットの発行する円ペッグのステーブルコインの誕生が報じられており、群雄割拠の時代を迎えようとしている。テザーをはじめとするステーブルコインは、透明性を確立して健全な取引市場を作っていくことが求められている。
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