IBMコンサルティングの調査機関IBM Institute for Business Value (IBV)は、シニア・エグゼクティブを対象としたサステナビリティ関連のレポート「Beyond checking the box」を公表した(*1)。サステナビリティを事業に組み込む企業は、多くの費用を費やさなくても、収益拡大や人材獲得などで同業他社よりも大きなメリットを得られる可能性が高いとの結果が明らかになった。
IBVは英調査会社オックスフォード・エコノミストと共同で、22か国、22業種の企業幹部5,000人を対象に、サステナビリティへの取り組みの進捗状況、投資、成果、組織が直面する主要課題を調査した。
同調査において、世界の経営幹部は、サステナビリティへの取り組みから大きな価値を得ることを期待していることが分かった。調査対象者の75%は、サステナビリティがより良い業績をもたらすことに同意し、72%がサステナビリティはコストセンターではなく、収益をもたらす可能性があると回答している。
しかし、サステナビリティがビジネスにもたらす利益についてはコンセンサスが得られているにものの、調査対象の半数近く(47%)がサステナビリティへの資金繰りに苦労していると回答した。サステナビリティの実行において大きな前進があったと回答したのは僅か30%であった。
今回の調査によると、サステナビリティが業績に与える影響を左右する最大の要因の1つは、企業がどの程度サステナビリティを組織全体に浸透させているかということであった。
同調査において「embedders」と認定された企業は、サステナビリティをサイロ化やコンプライアンス要件として扱うのではなく、全てのビジネスユニット、特に中核的な機能とワークフローに統合している。
そのようなサステナビリティを組み込んだ組織は、売上高成長率が16%向上し、収益性で同業他社を上回る可能性は52%高いと言う調査結果が明らかになった。サステナビリティへの取り組みによって営業費用が大幅に改善する可能性は2倍高められる。さらに、人材獲得面においても、同業他社を上回る成果を挙げられる可能性が56%高い。
Embeddersと呼ばれる企業ほど、サステナビリティへの取り組みに財務的な成果を求める傾向が強く、これらの企業の53%が、サステナビリティへの投資を正当化するためにはビジネス上の利益が不可欠であると回答した。また、サステナビリティを中核業務に組み込むことで利益を得ていることが分かった。
一方、企業がサステナビリティを組み込む上で直面する主な課題としては、データの使いやすさが障壁の上位に挙げられている。回答者の82%が、サステナビリティの成果をあげるためには質の高いデータと透明性が必要であることに同意している。
しかしながら、統合基幹業務システム(ERP)、企業資産管理、顧客情報管理(CRM)、エネルギー管理システムなどの基幹システムからサステナビリティデータを自動的に入手できると回答したのは約40%に過ぎなかった。
また、生成AIがサステナビリティのためのゲームチェンジャーになる可能性があり、エグゼクティブの64%が生成AIはサステナビリティへの取り組みにとって重要になると見ている。73%はサステナビリティのために生成AIへの投資を増やす予定だと回答した。
【参照記事】*1 IBM「What embedding sustainability looks like」

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