シンガポール金融管理局(MAS)は8月1日、2030年までに同国初となるグリーンボンド(環境債)「グリーンSGS(インフラ)」を最大350億シンガポールドル(約3兆4,000億円)発行すると発表した(*1)。同国の地下鉄(MRT)などグリーンインフラの整備に充てる。
グリーンSGS(インフラ)は、22年6月上旬に公表した「シンガポール・グリーンボンド・フレームワーク」下において発行される。同フレームワークでは、グリーンボンド発行に伴う資金使途の詳細、適格プロジェクトの選定に向けたガバナンス構造、インパクトレポート公表へのコミットメントなどが示されている。
年限は30年もしくは50年で、最低発行額は約15億シンガポールドルとなる。市場環境に応じて年限および発行額を決定する。今回の起債は21年2月に発表した環境行動計画「シンガポール・グリーンプラン2030」をサポートするもので、調達資金は地下鉄のジュロン・リージョン・ラインやクロスアイランド・ラインの整備などに充てられる。内容に関しては①再生可能エネルギー②エネルギー効率③グリーンビルディング④クリーンな交通手段⑤サステナブルな水・廃水管理⑥汚染防止や制御、循環型経済かどうか⑦気候変動への対応⑧生物多様性の保全、天然資源と土地利用が持続可能かどうかといった点が考慮され、低炭素化の実現を図る。
グリーン国債のようなシンガポール政府有価証券(SGS)の発行に際し、初めてシンジケーション(複数の金融機関が共同して証券を販売する手法)を組む。ブックランナー(#1)行はシンガポール大手金融のDBSグループ(ティッカーシンボル:D05)やドイツ銀行(DBK)シンガポール支店など。機関投資家および個人投資家向けに販売する。
世界各国でグリーンボンドの発行が相次いでいる状況だ。サステナブルファイナンスで先行する欧州は21年10月、初となるグリーンボンドを120億ユーロ(約1兆6,000億円)発行した(*2)。26年末までに最大2,500億ユーロ発行する計画だ。英国やフランス、スペイン、香港なども発行している。
民間レベルでも多くの企業が資金調達手段としてグリーンボンドの活用を進めている。米飲料品・食品大手のペプシコ(PEP)は7月20日、グリーンボンドを12億5,000万ドル(約1,700億円)発行すると発表した(*3)。調達資金は、国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)に沿いプロジェクトへ充てる。
具体的なプロジェクト内容は、リジェネラティブ農業(環境再生農業)、オペレーションの脱炭素化と気候レジリエンス(強じん性)、サーキュラーエコノミー(循環経済)、バージンプラスチック(再生素材ではないプラスチック)廃棄の削減、ウォーターポジティブ(消費するよりも多くの水を供給すること)といったもの。アップル(AAPL)やウォルマート(WMT)なども発行済みであり、調達した資金で気候変動対策を推進する。
(#1)ブックランナー…証券の売り出しにおいて主導的役割を担う金融機関。
【参照記事】*1 シンガポール金融管理局「MAS to Launch Inaugural Singapore Sovereign Green Bond Issuance」
【参照記事】*2 欧州委員会「NextGenerationEU」
【参照記事】*3 ペプシコ「PepsiCo Issues New $1.25 Billion 10-Year Green Bond As Company Accelerates pep+ Transformation」
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