年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月16日、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート」の集計結果を発表した。SDGs(国連の持続可能な開発目標)については「知っている」と回答した企業が96.7%と前回の8割超からさらに認知度が向上。また、「取組みを始めている」と回答した企業も44.7%(前回24%)と大きく増加した。
スチュワードシップ活動は「責任ある機関投資家の諸原則」を指し、GPIFは2016年から運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と、目的を持った建設的な対話(エンゲージメント)の実態および前回アンケート実施以降の1年間の変化の把握を目的として、上場企業向けアンケートを実施している。アンケートの対象は 東証プライム上場企業:2129社(2018年12月20日現在)で、回答社数は 604社 (回答率 28.4%)。 回答期間 2019年1月10日~2月20日。
今回の調査では、統合報告書を作成している企業やESG等に特化した説明会を開催している企業が前回からさらに増加していることが確認できた。また、「機関投資家の統合報告書の活用」について、作成企業の39.4%にあたる企業が「進んでいると感じる」と回答しており、前回の17.5%から大きく増加。ESG などに特化した説明会についても、機関投資家の関心度合いが「総じて関心が高い」と回答した企業は54.4%(前回40.6%)と増えており、機関投資家の非財務情報に対する関心や活用について企業側がポジティブな変化を感じていることがわかった。
企業のESG活動における主要テーマとしては、回答企業の71.2%(前回比+3.8%)が「コーポレート・ガバナンス」と回答しており、前回に引き続き最多。一方、前回比の増減が最も大きかったテーマは、「気候変動」の45.5%(前回比+9.2%)で、同問題への対応の重要性がこの一年間で大きく高まっている。
アンケートには、スチュワードシップ活動の運用受託機関へのヒアリングだけでは客観性に欠ける恐れがあるため、その補完として、また、運用受託機関のエンゲージメント活動が事業会社側にどのように受け止められているのかを把握することで全体のレベルアップを図る目的がある。今回の結果について、高橋則広理事長は「企業の ESG 情報を含む非財務情報の開示が一層充実し、それを活用する投資家も増える好循環が起きていることがうかがえる。今後さらに、企業と投資家双方にとって、有益で質の高い対話が行われることを期待する」とコメントを発表した。
【参考記事】GPIF「2019年5月16日「第4回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について」(PDF)

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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