テスラ元CTOが設立したEV電池リサイクルのレッドウッド、シリーズDで1500億円調達。マイクロソフトなど出資

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電気自動車(EV)の電池リサイクル企業レッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)は8月30日、シリーズD(資金調達ラウンド)で10億ドル(約1,460億円)超の資金を調達した(*1)。マイクロソフトの気候イノベーションファンドなどが出資。米国史上最大規模の気候変動対策を含むインフレ抑制法(IRA)などが追い風となる中、同国内でバッテリーをリサイクルするクローズドループ(#1)のサプライチェーン構築を目指す。

今回の投資ラウンドは、グローバル投資運用会社のゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、ティー・ロウ・プライスなどが主導した。マイクロソフトの気候イノベーションファンド、キャタピラーのコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)であるキャタピラー・ベンチャー・キャピタルなども新たに参画した。

レッドウッドは、米タイム誌の「2022年世界で最も影響力がある企業100社」に選出されるなど、EV業界で注目のスタートアップ企業だ。同社を立ち上げたのは、テスラの共同創業者で初代最高技術責任者(CTO)を務めたジェービー・ストローベル氏。

ストローベル氏は、バッテリー開発プログラムを指揮し、主力セダン「モデル3」の開発を主導した。テスラ在職中の17年にレッドウッドを創業している。23年5月にテスラの取締役に就任しており、イーロン・マスク氏がストローベル氏の高い専門性や豊富な業務経験に信頼を置いていることが分かる。

レッドウッドは当初、使用済みバッテリーや電子機器からリチウム、グラファイト、銅、コバルトなどのクリティカルマテリアル(重要鉱物)の回収および外販に注力していたが、現在はリチウムイオン電池材料の回収、再生、リサイクル、精製、およびアノード(負極)とカソード(正極)材料の再生産に至る、クローズドループの国内サプライチェーンの構築を目指している。

レッドウッドによると、電動化によりリチウムイオン電池の需要は30年までに500%超拡大し、大きな需給ギャップが生まれる見込みだが、リチウムイオン電池の主要構成材料となるアノードとカソードは今日、米国で生産されていないという。そのような中、同社はアノードとカソード材料を製造する米国初の生産施設の建設に今回の資金を充てる計画だ。

レッドウッドでは、平均して主要電池材料の95%を回収している。

これまでに、ビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏らが支援するブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズややアマゾンのクライメート・プレッジ・ファンド、フィデリティなども出資している。

フォルクスワーゲン、トヨタ、ボルボといった世界の自動車メーカーやアマゾンなどと提携し、持続可能な輸送・エネルギー社会の形成というビジョンを共有する。パナソニックとは、テスラのギガファクトリーから排出されるバッテリー部品の廃材をリサイクルし、カソード材料を供給する契約を締結した。

米国政府も後押しする。バイデン政権は30年までに新車販売に占めるEVなど電動車の比率を50%まで高めることを目指す。EVの導入拡大などを図るべく、2022年8月にはIRAが成立した。

IRAの下、バッテリー式EV(BEV)などのクリーンビークルの購入者に対して最大7,500ドルの税額控除を受けるには、バッテリーに使う重要鉱物の一定割合を米国や米国が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国から調達し、電池部品も一定割合を北米で製造・組み立てるという要件を満たさなければならない。

自動車メーカー各社にとっては、IRAの税額控除を受けることで、価格面の競争優位性につながる。レッドウッドによると、他国から重要鉱物を運んでくる場合、工場に届くまでに5万マイル(約8キロ)以上輸送することになり、高コストで持続可能ではないという。

米国内で重要鉱物、アノードとカソードの供給拡大を図るレッドウッドに対する需要は非常に大きなものになると期待される。

8月31日には、米エネルギー省(DOE)が、EVなどに使用される電池、および他国から輸入されている電池材料や部品の国内生産を拡大するために、35億ドルの資金を提供すると発表した(*2)。

レッドウッドは、環境負荷の低減やバッテリーコストの低下に繋がるアノードとカソードの大量供給を目指す。25年までに年間100ギガワット時(GWh)、EV100万台分のバッテリー供給を可能とし、30年までに500GWh、EV500万台分のアノードとカソードを提供する計画だ。

政策面の後押しも受けつつ、バッテリーなどをリサイクルするクローズドループのサプライチェーン構築を図るレッドウッドの更なる成長が期待できそうだ。

(#1)クローズドループ…不純物を取り除くことで素材として再利用でき、無限に循環利用されるリサイクル。

【参照記事】*1 レッドウッド・マテリアルズ「Redwood Materials raises over $1 billion in Series D investment round
【参照記事】*2 米エネルギー省「Biden-Harris Administration Announces $15.5 Billion to Support a Strong and Just Transition to Electric Vehicles, Retooling Existing Plants, and Rehiring Existing Workers

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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