株式会社QUICKリサーチ本部ESG研究所は1月20日、日本に拠点を置く機関投資家を対象に実施した「ESG投資実態調査2021」の結果を公表した。対象は「『責任ある投資家』の諸原則~日本版スチュワードシップ・コード~」の受け入れ表明機関の中から抽出した機関投資家157社で、回答社数は53社、うちアセットオーナー5社、アセットマネジャー48社。期間は2021年8月23日~10月19日で、3回目の実施となる。
日本株の運用残高全体に占めるESG(環境・社会・ガバナンス)投資の割合は70%で、前回調査の68%から上昇した。さらに、個別の会社の資産残高に占めるESG投資の割合は「90%以上」との回答が22社(55%)となった。組織については「責任投資やESGリサーチなどの専門部門・部署がある」が31社(63%)で最も多く、前回調査25社(53%)から増加した。
5年後のESG投資残高について41社中9社が「増やす」と回答。ESG投資を増やす要因で、最多の回答は「経営トップによるコミットメント」だった。責任投資やESGリサーチ、エンゲージメント(対話)などの専門部門・部署を設けている会社は有効回答社数の63%となり、前回調査から10ポイント増加した。「経営陣が号令をかけて組織を整えており、ESG投資の増加傾向は変わらない」と同研究所は予想する。
投資手法別では、「ESGインテグレーション(ESG要因を投資分析および投資決定に体系的かつ明示的に組み込んだ投資)」は今回も最多になった。「サプライチェーンの対応状況も含めたESG課題に関するビジネスモデルのレジリエンス(強じん性)」など、個別企業の定性評価を中心に組み入れるという回答が増えた。
ESG投資手法で2位に入った「エンゲージメント」のテーマでは、「気候変動」が前回調査同様に1位。2位は「人権」、今回選択肢に加えた「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性尊重)」だった。急浮上したのは「生物多様性」で、回答社数は前回の3社から今回14社になった。「森林」「腐敗防止」「持続可能な漁業」が前回に比べ倍増した。
同研究所は「森林保全は二酸化炭素の吸収といった気候変動だけでなく生物多様性にもつながるテーマ。森林を切り開いて、太陽光発電施設を建設するようなケースもあり、施設の建設や操業のやり方を間違えると、従業員、地域住民の生存や人権を脅かしかねない。また、気候変動への対応策として期待される電気自動車は、バッテリーの原料であるコバルトなどの調達において腐敗リスクに注視する必要がある」と指摘。そのうえで「ESGのテーマは相互に関連し、環境課題が社会や企業統治の課題につながる可能性もあるだけに、企業も投資家も様々な分野への目配りが欠かせなくなっている」と付言している。
【参照リリース】QUICKリサーチ本部ESG研究所「【ESG投資実態調査2021】重視するテーマ、生物多様性が急浮上」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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