気候テックへの投資40%減もセクター全体の減少幅よりは小さなものに。太陽光、グリーン水素、CCUSは投資増 PwC調査

監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は10月17日、気候テックへの投資動向を伝えるレポート「2023年版気候テックの現状(2023 State of Climate Tech)」を公表した(*1)。気候テックへの投資は40%減とセクター全体の減少幅(50%減)より小さなものとなった。太陽光発電やグリーン水素、二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)といった排出削減効果の高い分野への投資は増加した。

同レポートでは、8,000社を超える気候テック分野の新興企業と、4,900億ドル超に相当する32,000件以上のディールを分析した。その結果、景気の先行き不透明感と地政学リスクの高まりを背景に、23年のベンチャーキャピタル(VC)とプライベートエクイティ(PE)からの気候テックへの投資は40%減少している。

しかしながら、気候テックへの投資の落ち込みは、全体平均の50%減よりも大幅に小さい。それにより、民間部門のスタートアップ投資において、気候テックは18年の7%から23年には10%以上を占めるようになった。

また、気候変動分野への投資経験が豊富な投資家(5件以上の気候テックへの投資経験者)が気候テックへの投資全体に占める割合が減少する一方、同分野への投資が初めての投資家の割合が増加した。

これらのことから、困難な市場環境下であるものの、気候テックに投資する企業は着実に増加しており、気候テック業界が全体の中でも魅力的であることが浮き彫りになった。

投資先もシフト、選別されている。最も排出量が多い産業部門の投資シェアは、13年から22年第3四半期までの間に僅か8%弱だったものが、22年第4四半期から23年第3四半期にかけて、ほぼ倍増となる14%に達した。

全体的な投資額は減少しているものの、PEやVCなどが排出削減ポテンシャルの高い技術の開発に取り組むスタートアップに投じる割合は増加している。例えば、太陽光発電への投資は24%増、グリーン水素は64%増、二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)は39%増だった。

一方、排出量削減の可能性が相対的に低い技術に投じられる資金の割合は減少しており、小型バッテリー式電気自動車(EV)への投資割合は50%減、マイクロモビリティ(電動キックボードや電動バイクなどのコンパクトな乗り物)への投資割合は38%減少した。

気候テックへの投資は減少したものの、最も排出削減効果が高い分野の企業への投資は増加した。ネットゼロの実現に向けて気候テックへの需要は高まっているが、世界経済の先行き不透明感が漂い、地政学リスクが高まる中では、今後もこの動きが継続する可能性がある。

【参照記事】*1 PwC「Climate tech investment falls 40% amid economic uncertainty: PwC 2023 State of Climate Tech

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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