米製薬大手ファイザー(ティッカーシンボル:PFE)は6月30日、2040年までにネットゼロ(温室効果ガス排出量の実質ゼロにする)を達成することにコミットすると発表した(*1)。SBT(#1)イニシアチブが公表した「ネットゼロ基準」における50年の排出実質ゼロ目標より10年前倒しする。化石燃料からの移行を加速させるほか、サプライヤーとの協働も進める。
コミットメントの一環として、40年までにスコープ1(#2)とスコープ2(#2)の温室効果ガス(GHG)排出量の総量を19年比95%削減する。スコープ3(#2)に関しては同90%の削減を目指す。20年には、30年までにスコープ1、スコープ2のGHG排出量を19年比46%削減するとともに、残余排出量に関してはカーボンクレジットを活用することで対応する方針を示していた。
薬品の製造、研究開発、オペレーションといった各プロセスにおいて化石燃料から脱却するには、パートナー企業による協力が不可欠だとしている。大胆なアクションと革新によって代替技術を開発する必要があるとファイザーはみている。また、GHG排出量の削減を加速させるべく、社用車をハイブリット車や電気自動車(EV)に切り替える計画でもある。
さらに、米保健福祉省(HHS)が主導する「ヘルスケア・セクター・クライメート・プレッジ」に署名した(*2)。同宣誓は、病院、製薬会社などに対し、GHG排出量の削減と気候変動にレジリエントな医療インフラの構築などを呼びかけたものである。
規制強化やステークホルダーからの圧力の高まりを背景に、世界各国のあらゆる業界で脱炭素化に向けた動きが加速している。大量のGHGを排出する石油・ガス業界では、米石油大手のエクソンモービル(XOM)が、石油・天然ガス事業から排出される温暖化ガス(GHG)を50年までにネットゼロにすると発表した(*3)。脱炭素が難しいといわれる海運業界では、APモラー・マースク(MAERSKB)が40年までにサプライチェーン上のネットゼロにコミットする(*4)。
(#1)SBT…SBT(Science Based Targets):パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた企業の温室効果ガス排出削減目標。国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による気候変動に関する共同イニシアチブ「SBTイニシアチブ」が目標を認定する。
(#2)スコープ1…事業者みずからによるGHGの直接排出。
スコープ2…他社から供給された電気や熱などを使用して発生する間接排出。
スコープ3…事業者の活動に関連する取引先の排出。
【参照記事】*1 ファイザー「Pfizer Announces Commitment to Accelerate Climate Action and Achieve Net-Zero Standard by 2040」
【参照記事】*2 米大統領府(ホワイトハウス)「FACT SHEET: Health Sector Leaders Join Biden Administration’s Pledge to Reduce Greenhouse Gas Emissions 50% by 2030」
【関連記事】*3 米エクソンモービル 2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロに
【関連記事】*4 コンテナ船大手のAPモラー・マースク「2040年迄にサプライチェーン上のネットゼロ目指す」従来目標を10年前倒し
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