電気自動車(EV)向け磁石を開発するNiron Magneticsは11月8日、ゼネラルモーターズ(GM)やステンランティスなどから3,300万ドル(約50億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、世界初となるレアアース(希土類)が不要な永久磁石Clean Earth Magnetの商用化を目指す。
今回の投資ラウンドには、GMのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるGM ベンチャーズやステンランティスのCVCであるステンランティス・ベンチャーズ、ミネソタ大学などが参加した。この新たな資金調達により、Nironはパイロット生産設備を拡張し、Clean Earth Magnetの販売に向けた生産能力の拡大を図る。
永久磁石は、オーディオシステム、燃料ポンプ、空気循環、EVのドライブトレインなど、あらゆる自動車に不可欠な部品だ。世界中でより多くの自動車が購入され、EVの需要が急増するに伴い、レアアース材料に代わる、より安定して調達できる持続可能な材料が求められている。
今回の新たな資金調達により、Nironの窒化鉄ベースのClean Earth Magnetの商用化を推し進める。同磁石は環境的に持続可能で、世界中で製造ができ、安定した供給源から作られる。さらに、希土類磁石に代わるNironの磁石は、現在市場で利用可能な他の選択肢と比較して、温度変化の影響も受けにくいという特徴を有する。
GMベンチャーズ、ステンランティス・ベンチャーズに加え、これまでに実施されたボルボ・カーのベンチャーキャピタル部門ボルボ・カー・テックファンドからの資金調達により、現在、Nironは3つの大手自動車メーカーから支援を受けている。これは、希土類磁石に代わる実行可能な代替品でサプライチェーンを多様化するという自動車業界のニーズに応える、Clean Earth Magnet技術の可能性を示すものだ。
Nironは人員拡充と設備拡張により、パイロット生産能力を増強することで、顧客によるプロトタイプ生産を増やし、主要な市場向けの小規模な製品生産をサポートすることができる。また、Clean Earth Magnetは自動車だけでなく、民生用電子機器やオーディオ、産業用モーター、ポンプ、コンプレッサー、風力タービンなどにも利用することが可能だ。
NironのClean Earth Magnetのように豊富な資源から強力な磁石を製造することで、自動車メーカーを中心にレアアース鉱山開発と新たな生産を切り離すことができる。地政学リスクと環境リスクの低減に繋がるNironのイノベーションが普及することに今後も期待したい。
【参照記事】*1 Niron Magnetics「Niron Magnetics Secures $33M from Leading Automotive Manufacturers to Meet Growing Demand for Rare Earth-Free Magnets」
フォルトゥナ
【業務窓口】
fortuna.rep2@gmail.com
最新記事 by フォルトゥナ (全て見る)
- バイデン政権、低所得コミュニティの気候変動プロジェクトに3兆円拠出。分散型電源、レトロフィット、セロ・エミッション輸送など - 2024年4月25日
- エネルギー転換スタートアップのリソース・イノベーションズ、モルガン・スタンレー・キャピタルが買収。 - 2024年4月25日
- 炭素回収スタートアップIONクリーンエナジー、68億円調達。液体アミン型CO2回収技術の商用展開目指す - 2024年4月25日
- ルルレモン、同社初の酵素リサイクルと回収炭素を活用したポリエステル製品発表。サムサラ、ランザテックと協業 - 2024年4月25日
- 気候スタートアップWindfall Bio、シリーズAで42億円調達。メタン回収して有機肥料に変えるソリューションの提供拡大 - 2024年4月24日