ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ(ナティクシスIM)株式会社は7月12日、グローバル・マーケット・ストラテジー部門責任者エスティ・ドウェク氏による7月マクロ経済・市場見通しの日本語訳を公開した。経済再開の見通しは引き続き改善しているが、米国と中国ではすでに成長はピーク入りしている可能性があり、また、債券利回りは5月にピーク入りしているとして、これがインフレ懸念後退を示唆するという見方だ。
各国で経済活動が再開し、経済指標は好調を維持している。6月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数は85万人(市場予測70万人)と、昨年8月以来で最多の伸び。また、6月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)は速報値で59.2と、2006年以来の高水準となった。米国や中国では経済成長がピーク入りした可能性を示唆する兆候も確認されているが、今後も堅調なペースで成長が続くものと思われる。実際、前月のPMI調査では、世界の主要経済諸国で若干の低下が見られている。一方、欧州の経済指標は、米国や英国に遅れているが改善を続けており、第3四半期にはピーク入りすると予想される。
アメリカでは、インフレ期待は、投資家が連邦準備制度理事会(FRB)による「一過性」のシナリオに傾いていることから、後退している。インフレの上昇傾向の大半は、サプライチェーンのボトルネックが要因で、21年下半期には徐々に改善すると予想されている。この方向性は米国の直近の雇用統計でも示されており、賃金が大幅に上昇したのは、最も賃金の低いレジャー&ホスピタリティ部門だけだった。また、パウエル議長の包括的な回復を評価するために用いられた指標は、停滞の兆しを見せている。例えば、大卒資格を持たないアメリカ人の労働参加率や、アフリカ系アメリカ人の失業率は6月に悪化した。
バイデン大統領は、一部の共和党上院議員との間で、6000億米ドル以下の超党派的な合意に達したが、承認までの道のりは依然として複雑だ。実際、民主党議員は、超党派のパッケージに同意する前に、伝統的なインフラだけでなく、自分たちの優先事項を含む大規模な調整法案を求めると述べている。債務残高に上限を定める法律の適用停止措置の期限が間近に迫っていることもあり、同社は「今後数ヶ月、激しい交渉が行われる」と見通す。
市場の見通しとしては、株式市場は、大型のグロース銘柄や米国の財政拡大継続の見通しに支えられ、引き続き最高値を更新している。一方、シクリカル銘柄へのローテーションは一旦停止したものの、今後も経済再開は続くことから、依然として上昇余地は残っていると思われる。このため、セクターではエネルギーと金融、地域では欧州と日本は依然として上昇する可能性があると見ている。
10年物米国債利回りは低下を続け、現在は3月に付けた高水準の1.77%を大きく下回る、1.3%を割った水準で推移しており、ここ数週間の、グロース銘柄のシクリカル銘柄に対するアウトパフォーマンスを支えている。また、期待インフレ率が5月にピーク入りした後に低下を続けていることも、インフレ懸念がひとまず緩和されていることを示唆している。
クレジット市場は引き続き耐性を示しており、スプレッドの拡大は株式市場のストレスを予見する傾向があるため、これは株式市場にとって好材料だ。このような背景から、国債よりも社債を選好するが、キャリーがより魅力的だという点も一因にある。クレジットの中では、ハイ・イールド債を選択的なベースで選好するが、投資適格債に対しても引き続き建設的な見方をしている。
7月の見通しについて、同社は「中期的な見通しは引き続き、ワクチン接種、財政刺激策、金融支援、非常に好調な業績など、強力な成長とファンダメンタルズに支えられている。しかし、下半期はこれらの追い風が弱まり始め、厳しい展開となる可能性がある」と引き締めた。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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