CO2を食べる微生物で新素材作るニューライト、180億円調達。カーボンネガティブなバイオ素材の製造拡大目指す

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脱炭素テックのニューライト(Newlight)は8月3日、新たな投資ラウンドで1億2,500万ドル(約180億円)を調達したと発表した(*1)。資金調達を通じ、温室効果ガス(GHG)を取り込むバイオ素材AirCarbonの製造拡大を図る。

同投資ラウンドは、シンガポールの政府系ファンドであるテマセク傘下の脱炭素投資に特化した戦略子会社ジェンゼロ(GenZero)が主導した。米石油大手オキシデンタルの子会社オキシー・ローカーボン・ベンチャーズ(Oxy Low Carbon Ventures、OLCV)や北米の有力な特殊映画制作会社Charter Next Generation(CNG)なども加わった。

ニューライトは、GHGを取り込みポリヒドロキシ酪酸(PHB)を合成する海洋微生物を利用し、新たなバイオ素材AirCarbonを開発した。PHBを精製することで融解性と成形性を持ち、幅広い形態で利用できるところが特徴だ。

AirCarbonは空気中の酸素40%と炭素60%で構成され、プラスチックや動物革を代替するカーボンネガティブ(CO2排出量よりも吸収量が多い状態)な素材となる。高強度な素材で再利用が可能なため、サーキュラーエコノミーの形成に資する。米食品医薬品局(FDA)より食品接触材(*)としての許可も取得している。

ニューライトは現在、世界5,000ヵ所超でAirCarbonを基にした製品・素材を提供している。石油や穀物を原料とせず、空気とGHGから成る世界初のカトラリー、ホットにもコールドにも使用可能且つ自宅でコンポストできるストローを提供する。AirCarbonは眼鏡、財布、バッグなどにも利用されている。

ファッション、エンターテイメント、食品、ホテル、自動車業界などに顧客およびパートナー企業を持つ。21年8月にはスポーツ用品のナイキと提携した(*2)。ナイキは自社のシューズやアパレルなどにカーボンネガティブなバイオ素材AirCarbonを使用することで、カーボンフットプリントの大幅な削減を目指す。

ニューライトは資金調達と共に、CNGとAirCarbonを用いた脱炭素化を、OLCVとはAirCarbonの製造工場で利用する二酸化炭素を供給するためのダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)の契約を締結した。

(*)食品接触材…食品と接触する全ての素材を指す。食品接触材の材料および製品中の成分が接触する食品に移行し、人体に害を及ぼす、または味や匂い、舌触り、見た目などの特徴を損なう可能性があるため、米国では使用可能あるいは不可能な素材のリストが設けられている。

【参照記事】*1 PR Newswire「Newlight Completes US$125M In New Equity Round Led by GenZero
【参照記事】*2 PR Newswire「AirCarbon x Nike: Newlight and Nike Partner to Reduce Carbon Footprint

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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