グリーンファイナンスに重点的に取り組む非営利団体ネイチャーファイナンス(NatureFinance)は11月6日、金融機関向けネイチャーポジティブ投資支援「ネイチャーアライン(NatureAlign)」をリリースした(*1)。
ネイチャーアラインは、生物多様性プラン(旧称:昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF))の観点から、金融機関が自然との関係性や自然への影響を評価するためのツールだ。金融機関15社超と協力して開発を進めてきた。
同ツールを活用することで、資産運用会社や銀行など民間の金融機関は、自然環境に関する基本的な位置づけを評価することができるようになる。自然環境に悪影響を与える活動からネイチャーポジティブ効果をもたらす活動へと、金融の流れを導くさらなる行動を起こす前に必要な第一歩である。運用資産残高(AUM)が2兆ドルを超える世界的な投資運用会社ピムコを含む金融機関2社によって試験運用された。
国連環境計画(UNEP)によると、毎年、自然環境に悪影響を及ぼす活動に世界全体で約7,000億ドル(世界の国内総生産(GDP)の約7%に相当)が投資されている。ネイチャーアラインは、金融機関が自然環境への影響をモニタリングする能力を高め、自然環境の保護と回復に貢献する活動やセクターに資金をシフトするようポートフォリオを見直すことができる。
既存のツールは、生物多様性や水不足など自然に関連する特定の要素を分析するものであるが、ネイチャーアラインはこれらのデータセットを独自の組み合わせで統合し、ポートフォリオレベルでの測定と行動を可能にする。
企業持続可能性報告指令(CSRD)や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のLEAP(発見、診断、評価、準備)フレームワークへのリンクを備えた、無料で利用できるアプリの1つでもある。
金融機関は、投融資に関するデータを「ウォッチリスト」に入力する。アプリは、そのデータをサードパーティの生物物理学的、空間的、および財務データを使用して分析する。注目すべきは、この分析には現在、他の類似ツールでは一般公開されていない、ETH Crowther LabのSEED Biocomplexity Indexが含まれていることだ。
結果は数秒で生成される。結果には、金融機関が投融資を行っている国や流域における自然の状態、水リスクの程度、重要な自然資本の存在、生態系の保護の程度を概説したマップや統計が含まれる。アプリは、ウォッチリスト内のセクターの自然への依存度や影響度も評価する。分析されたウォッチリスト内のセクターおよび構成要素で、これらのパラメータを超えるものは、特定の行動を促すために識別される。
ユーザーはTNFDが推奨する2つのコアセクター指標の推定値も取得できる。マテリアルテクノ・ロケーション(#1)とセンシティブ・ロケーション(#2)へのエクスポージャーである。
ネイチャーファイナンスのジュリー・マッカーシー最高経営責任者(CEO)は「金融・経済システムが2~3℃の温暖化に向かって進んでいる現状においては、アセットマネージャー、アセットオーナー、銀行などの金融機関が、ネイチャーポジティブ効果をもたらす経済活動に資金を再配分することが極めて重要である。革新的で利用しやすいツールやデータは、急速に変化する地球上でどこに、どのように、何に投資すべきかを金融機関が知る上で不可欠だ」と述べた(*1)。
ネイチャーファイナンスの業務は、自然関連のリスクをより適切に管理するために生物多様性データを構築し利用する取り組み、パーパスを実体化した自然関連市場の開発、金融イノベーションの推進に重点を置いている。
自然環境への取り組みの進展を促し、自然環境への影響をより適切に追跡するための、利用しやすく役立つツールとしてネイチャーアラインを開発した。今後は、GBFとの整合性を評価するツールや枠組みや自然関連の目標設定のための推奨事項の提供などを試みる見込みである。
(#1)マテリアル・ロケーション…事業運営的に重要な拠点。
(#2)センシティブ・ロケーション…水不足地区や野生保護区のように生態学的に大切な場所。
【参照記事】*1 NatureFinance「MEDIA ADVISORY:Launch of NatureFinance’s NatureAlign」
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