自然・環境に関する企業の意思決定を支援する英Natural Capital Research (Natcap)は7月2日、シリーズA(資金調達ラウンド)で1,100万ドル(約17億7,000万円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、高品質な自然・生物多様性関連データサービスの拡充を図る。
今回の投資ラウンドは、金融情報会社リフィニティブの元最高経営責任者(CEO)であるデービッド・クレイグ氏、農林中金キャピタル、オックスフォード・サイエンス・エンタープライズなどが参加した。Natcapによると、同社は自然や生物多様性に関する情報を提供する企業として、世界で初めてシリーズAを完了した企業の1つとなる。
Natcapは英国・ロンドンを拠点とする、企業向けに自然・生物多様性関連データサービスを提供するネイチャー・テクノロジー(#1)関連のスタートアップだ。オックスフォード大学のキャシー・ウィリス教授らによって2018年に設立された。自然・生物多様性に関連するリスクと機会を測定し、ネイチャーポジティブに向けた経営戦略の策定を支援する。
欧州連合(EU)の企業持続可能性報告指令(CSRD)、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の勧告に基づき、自主的に自然関連情報を報告する企業が増加している。それに伴い、Natcapは高品質の自然データの提供を拡大することに注力している状況だ。
同社は英スーパー大手テスコの自然を重視した食品システムへの移行を支援するネイチャー・プログラムやMS&ADホールディングスとの提携など、20以上の組織をサポートしている。Natcapは日本市場への進出を図るべく、UK-APAC Tech Growth Programmeから政府支援を受けた僅か4社の英国ハイテク企業のうちの1社に選ばれた。
Natcapのセバスチャン・リープCEOは「投資家からの支援は、CSRDやTNFDの下で自然リスクや報告の必要性に取り組んでいる企業にとって、シンプルでわかりやすいソリューションという、弊社が提供するものに対する市場のニーズをさらに裏付けるものだ。サービスの規模を拡大し、より多くの組織が意思決定に自然を統合できるようにし、ネイチャーポジティブな未来への移行を加速させる」と述べた(*1)。
(#1)ネイチャー・テクノロジー…自然や生き物の持つ低環境負荷かつ高度な機能に学び、科学技術や産業(商品・サービスの開発)にそれを応用しようという試み。
【参照記事】*1 Natcap「Natcap Secures $10 Million to Bring Nature into Business Decision-Making」

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