ブロックチェーン技術を活用して環境資産市場を変革する「Neutral」とは?

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参照:Neutral

目次

  1. Neutralとは?
  2. Neutralの仕組み
  3. Neutralの変遷と展望

Neutralとは?

「Neutral」は、環境資産取引のための次世代取引所プラットフォームです。2023年に設立され、カーボンクレジット、再生可能エネルギークレジット、カーボンフォワード契約などのトークン化された環境資産を取り扱うことを目指しています。

環境資産市場は、気候変動対策や持続可能な開発が世界的な課題となる中で、急速に成長しています。しかし、この市場には長年にわたり、流動性の低さや取引の不透明性、資産の質の保証などの課題が存在してきました。マッキンゼーの2021年のレポート「Blueprint for Scaling Voluntary Carbon Markets to Meet the Climate Challenge」によると、カーボンクレジットの異質性が高いため、特定のタイプのクレジットの取引量が少なく、信頼できる日次価格シグナルを生成できないという問題が指摘されています。

Neutralは、これらの課題に正面から取り組むことを目的として設立されました。創業者のファルーク・ガンドゥール氏は、「環境資産市場の効率性と透明性を高めることで、気候変動対策への投資を加速させることができる」と語っています。Neutralのアプローチは、単に既存の取引システムをブロックチェーン上に移行させるのではなく、環境資産の特性に合わせて最適化された新しい市場インフラを構築することにあります。

Neutralの仕組み

Neutralの根幹のプロダクトは環境資産の取引所です。

先述したように、現在の環境資産は流動性の低さ、取引の不透明性などの課題が存在します。それらをブロックチェーン上に載せることで取引の透明性を確保し、グローバルでの即時取引は実現できますが、流動性の低さを解消するまでには至りません。

そこで、ToucanやKlimaDAOなどのプロジェクトは固有のカーボンクレジットではなく、それらを統合してプールすることで、代替可能なトークンとして流動性を持たせることに成功しました。

基本的にはNeutralも同じような発想で、カーボンクレジットだけでなく、あらゆる環境資産をプールに預け入れることでトークン化し、流動性を上昇させ、取引できるプラットフォームを構築しています。

ただ、ここにもう1つ特徴があります。実はこのプールの仕組みには問題があります。全てがプールされたクレジットの場合に、質の悪いクレジットが紛れ込み、質の高いクレジットをプールに入れるインセンティブがなくなる問題です。

細かい評価ロジックはここでは説明は省きますが、例えばカーボンクレジットは森林由来の方が価値が高いとされます。ここでは便宜上、1tのCO2削減に対して、森林由来を1.5万円、それ以外を平均1万円とします。(実際の価格とは異なります、あくまでわかりやすく計算するためのものです)これらをプールに入れるということは、平均1万円のカーボンクレジットを100個預け入れると1t当たりのトークン価格も1万円のままになります。ここに1.5万円相当の森林由来のカーボンクレジットを預け入れると、預け入れた1tに対してのトークンが発行されるので、1万円相当のトークンになってしまい、損をしてしまいます。逆に、あまり評価の高くない1t当たり0.5万円のカーボンクレジットを預け入れると1万円分のトークンが返ってくるのでお得になります。ここではイメージを伝えるために簡易的な計算となりますが、固有のクレジットをプールするとこのような問題があります。

「Neutral」ではこの問題を解決するために、ユーザーはプールされた資産の流動性とやり取りしながら、基礎となる資産の特性に対する好みを表明することができます。これにより、売り手はプールに販売する際にクレジットを管理し続けることができ、買い手は価格と数量に加えて好みを表明することができます。

実際のプロダクトのイメージは以下の通りです。

①Markets

現在取り扱いのあるトークンの価格、そのトークンに紐づいているクレジットの内容、内訳を一覧で確認できます。

参照:Platform

②Bridge

Toucanなどの連携パートナーから環境資産をNeutral上にブリッジしてくることが可能です。

参照:Platform

③Pool

自身の環境資産をプールに入れる、もしくは取り出すことが可能です。

参照:Platform

④Trade

実際にトークンの取引が可能です。

参照:Platform

⑤Retire

自身が保有する環境資産の償却が可能です。

参照:Platform

尚、現在は以下の2種類の環境資産がトークンとして売買可能となっています。

参照:Assets

Neutralの変遷と展望

Neutralは2023年に誕生したスタートアップですが、現在までに多くのパートナーシップを結んでいます。ReFi分野ではToucan ProtocolやOpen Forest Protocol等と連携したり、実際のトレーディングプラットフォームも自社だけでなくDLT Financeと提携して開発、リリースしています。DLT Financeはドイツの認可であるBaFinの認可を持っているため、炭素クレジットや再生可能エネルギークレジットなどのトークン化された環境資産の初の規制対象取引プラットフォームを立ち上げることができました。また、2023年10月にはNorth Island Venturesをリードインベスターとする320万ドルの資金調達にも成功しました。この資金は、プラットフォームの機能拡張や新市場への展開に活用されています。

今後の展望としては、短期的には既存の製品やサービスの拡充と新規市場への展開を目指しています。CHARやJLTB23などの成功を基に、他の種類の環境資産についても同様のプールを開発する計画があります。例えば、森林保全プロジェクトや再生可能エネルギープロジェクトに特化したプールの開発が検討されています。また、多様な地域での展開も視野に入れているとのことです。

長期的なビジョンとしては、環境資産市場全体のエコシステムを変革することを目指しています。Neutralの共同創設者は「我々の最終目標は、環境保護や持続可能な開発への投資を、従来の金融資産と同じくらい容易にすることです」と述べており、新しい種類の環境資産の開発や、既存の資産クラスとの統合などを積極的に推進していくとのことです。
今後が非常に楽しみですね!